04 / FICTION

SLENDER IV.com / 書き下ろし官能小説

新しい世界

作品から着想を得た、書き下ろし官能小説です。

レビュー対象とは別の人物・設定で書かれた、出演者本人とは無関係の書き下ろし成人フィクションです。

創作であること

この物語は作品から着想を得た独立したフィクションです。出演者本人の心情や実際の出来事、レビュー対象の固有場面を示すものではありません。

この小説は、作者自身のアイデアと構想をもとに、AIの支援を受けながら文章化・推敲しています。

WRITTEN FOR SLENDER IV.com

私は、たいていの男からSだと思われる。

否定したことはない。否定する理由もなかった。話し方に隙がなく、男の前でも物怖じしない。おっとりしているのに、どこか切れ味がある。これまで付き合った男たちは、ほぼ例外なくそう言った。「責めるほうが似合う」「上になってるときの顔がいい」。私はそれを演じることが上手かった。相手が期待する役を引き受けると、相手は喜ぶ。相手が喜ぶのを見ていると、私自身も満足できた。

最近のお気に入りは、男を椅子かベッドに座らせ、自分には触れさせない遊びだった。

「そこで見てなさい」 「自分で触ってなさい」 「近くに来て。太ももだけ」 「何がしたいか、言いなさい」

許可を細かく与え、取り上げる。我慢を積み上げて、限界の手前で止める。最後に「来なさい」と言うと、男は抑えていたものを一気にぶつけてくる。私はそれを、自分のS性だと思っていた。命令している時間が好きなのだと。

だが本当に好きだったのは、そこではなかったと、気付かされてしまった。

その夜、私は一人でいつものバーにいた。カウンターの端で、グラスを傾けていると、隣に三十代前半くらいの男が座った。静かな人だった。私が少し挑発しても、表情を変えなかった。

「よく、一人で来るの」 「ときどき」 「誰かを探すつもり?」 「決めてない」

ここはそういうバーだ。なぜそうなったのかは分からないが、男女が出会う場所として利用される。もちろん、普通の客もいるが。

これまでの男なら、このあたりでもう「Sっぽいね」と言った。面白がって、すぐに役割を決めた。この男は、そう言わなかった。年齢の割に落ち着きすぎている。崩してみたくなった。いつもの遊びで、この男がどうなるのか。それを確かめたくなった。

「ホテル、行く?」

男は短く頷いた。タクシーの中でも多くは話さなかった。ホテルの前で、男が一度だけ確認した。

「エスカレートしてしまっても、本当に止めたいときの言葉を一つ決めておこう」

大げさだと思った。その言葉を使う場面など来ない。そう思いながらも、「赤」と答えた。男は「わかった」とだけ言った。説明はそれ以上なかった。

部屋に入ると、備え付けの自動販売機で目隠しとおもちゃの手錠を買った。普段から男を喜ばせるために使うもので、大抵は後で男に払わせる。今夜も同じだった。準備が終わると、すぐにいつもの役を始めた。

「座って。私がいいと言うまで、動かない」

男は素直に従った。椅子に座り、両手を膝の上に置いた。私は男の目の前で服を脱いだ。ブラを外し、自分の胸に触れた。指先で乳首をつまみ、少し声を漏らした。濡れている下着を見せ、指を滑らせて、透明な糸を男に見せた。

「見てなさい。触っちゃだめ」

男は見ていた。呼吸は少し深くなったが、乱れ方は予想より小さかった。

「あなたも脱いで。全部」

男は無言で従った。勃起はしていた。近づいて、太ももの内側だけ触ることを許した。男の指が熱かった。乗ってきたように感じたところで、私は離れた。

「まだ」

いつもなら、この頃には男の呼吸が乱れ、許可を求め始める。この男は何も頼まなかった。むしろ観察しているように見えた。崩そうとして、普段以上に挑発を強めた。自分の身体を男の顔のすぐ近くまで寄せ、匂いを嗅がせ、舌先だけ唇に触れさせて、すぐに引いた。自分の指を入れ、音を立てた。

演技をしているうちに、昂ってしまった。まるで視姦でもされている気分になり、気に入らなかった。

「もういい。こっちへ来なさい」

男は立ち上がった。

しかし、予想していたようには動かなかった。私の手首を押さえ、そばに置いてあった目隠しと手錠へ目を向けた。

男はゆっくりとそのグッズを手に取った。

「それはまだ使わない」

「君が今までしてきたこと、全部わかってる」

「は?」

見せつける。触れさせない。限界まで我慢させる。最後に自分から許可を出す。そのすべては、男を支配するためではない、と男は言った。

「俺が我慢できなくなるところを見たいんだろ」

「違う」

「違わない。君は命令を守らせたいんじゃない。最後に自分を乱暴に扱わせたいんだ」

そして、最も聞きたくなかったことを口にした。

「君、本当はMだね」

笑って否定しようとした。私はこれまで何人もの男を翻弄してきた。どんな男が何をすれば喜ぶかも知っている。今夜だって、自分が主導してここまで連れてきた。

だが男は、私のそばから離れた。

「違うなら、そのまま続ければいい」

男は再び椅子へ戻った。私は自由になった。なのに、続きを始められなかった。男に指摘されたことで、いつもの命令がすべて演技に思えてしまった。目隠しと手錠には、男はもう触れなかった。

この男が望むことだから、と自分に言い訳した。そして無言で目隠しを男へ差し出した。

男はすぐには受け取らなかった。

「どうして欲しい?」

「好きにすればいい」

「また相手のせいにするのか」

その一言が、一番深く刺さった。私はこれまで、相手を喜ばせるためにSを演じてきたと思っていた。だが本当は、相手を理由にしなければ、自分の欲望を認められなかっただけではないか。

もう一度、目隠しを差し出した。

「あなたの好きなように使って」

目隠しがかかる瞬間、まぶたの裏に残っていた黄色い電灯がすっと消える。世界が音だけになった。空調の低い唸り、カーペットを踏む位置。

プラスチック製の手錠が片方の手首に巻かれる。カチリ、という小さい音が、闇の中では大きすぎた。もう片方を繋がれたとき、両手が顔の前までしか動かせないことに気づく。胸も、お腹も、脚のあいだも、自分の掌で隠せない。今まで私は、触らせる範囲も、見せる角度も、離れるタイミングも全部自分で決めていた。その地図が、消えた。

「赤と言えば止める。鍵は、ここにある」

低い声が、耳の斜め前でした。枕元らしい。届く場所に置かれた音がした。逃げ道はある。あるのに、自分では外せない。その不均衡が、先に身体を熱くした。

最初に触れたのは指ではなかった。熱だけだった。額の近くに、吐息が停まる。触れられる、と思って身をこわばらせたところで、熱は消えた。次は太ももの外側。指の腹がゆっくり降りて、膝の裏で止まる。くすぐったい、というより、次が読めなくて息が浅くなる。

「どこを、してほしい」

「……好きにして」

動きが止まった。指が、まるで最初からそこにいなかったみたいに離れる。

「相手に委ねるのか」

闇の中で、その言葉だけが残った。見えないせいで、否定も笑いも使えなかった。顔を逸らしても、彼にはわかっている。

「胸を……」

沈黙のあと、掌が乗った。予想より大きかった。ゆっくり重みだけをかけて、乳首を避ける。避けられるほうが、欲しくなる。身体が勝手に、足りないほうへ反った。

「直接」

「自分の言葉で言え」

「……乳首を。強く」

突然に指が先を捉えた。左右で強さが違い、弱いほうを待っているうちに、強いほうに声が漏れた。自分の声が、いつもより幼く聞こえた。

舌が着いたのは、そのあとだった。温かくて、狭い。胸の先端を含んだまま、吸うのではなく、裏側をゆっくり舐める。脚を閉じようとすると、膝のあいだに彼の身体が入っていた。閉じられない。

「ん……や…待って」

止まった。本当に止まった。熱も、舌も、いきなり消える。残るのは唾の冷たい跡だけだった。

「待ってるよ」

答えに詰まった。確かに待って、とは言った。だが存在が消えた瞬間、身体が不満で震えている。

「続けて……舐めて。下も」

下着を横にずらされる感覚が、目で追えないぶんだけ大きかった。指が入り口を確認するように滑る。もう濡れているのはわかっていたのに、音がした瞬間、耳まで熱くなった。どこを見られているかは見えていないのに、それ以上に恥ずかしい。目隠しは視線を消すのではなく、視線の在処を全身にばら撒くものだった。

一本、入ってきた。浅い。内側を探るように曲がって、すぐ抜ける。また入る。奥へは行かない。行きたい場所の手前で、何度も同じ場所を擦った。腰が、自分で追い始める。鎖が短く鳴った。

「もっと」

「もっと、何を」

「指……入れて。深く」

二本になったとき、息が止まった。彼の指は、私が知っている場所を外し、知らない場所をゆっくり押し開いた。膣の内側が、音を立てて追いつく。太ももが勝手に開いた。開いた自分に気づいて、隠そうとして、また鎖が鳴る。

「はあっ……そこ、だめ」

「だめ、なら止める」

「やめないで。そこ、そこ……擦って」

指の腹が、核を直接ではなく、横から押した。弱い。弱いのに、見えないせいでそれしか世界にない。脚の付け根が吊り上がり、声が裏返った。いきそう、というより、いき方の主導権まで持っていかれそうだった。

その手前で、また止まった。

指が抜け、胸から顔が離れ、熱だけが中途半端に残る。暗闇の中で、自分の脈だけが腿の内側を叩いていた。もっとしてほしかった。初めて、その文が「彼を喜ばせるため」ではなく、そのまま欲しい言葉として浮かんだ。

「お願い…」

声が、先に出た。

「中が、変なの。触って。口でも。……いってしまう前に、入れてほしくて」

男は何も言わなかった。膝を割られ、腰を少しだけ浮かせる。舌が、開いた場所に落ちた。熱くて、恥ずかしい音が直接鼓膜に来る。舐め方が丁寧なのに、緩急が意地悪だった。ゆっくり全体を撫でたあと、急に先端だけを小さく吸う。吸い終わると、また遠くのほうを舐めて、核を放置する。放置されているあいだに、中が勝手に縮む。縮むたびに、まだ何も入っていない空洞だけが意識された。

「あっ、だめ、そこばかり……ん、待って、来る、来ちゃう」

腰が震える。自ら迎えにいく。

…また、止まった。

「命令か。お願いか」

「お願い。……止めないで。気持ちいい。見えないの、だめ。わかんなくて、もっと…」

初めて言う言葉だった。見えないのがだめ、なのに、見えないからこそ身体だけが正直だった。Sの役で男を待たせていたとき、私が見ていたのはこの顔だったのかもしれない。自制が薄くなって、欲しいものが先に出てしまう顔。それを男にやらせていたつもりで、本当は自分がやりたかった。

最も高まったところで、男は突然、いなくなった。

「どうして?」

言った瞬間に股が開かれる。男の体が割り込み、濡れた入口に肉棒が当てられた。指とも、下とも違う感覚。本能が覚えているあの形。

そして、入り口に押し当てたまま待つ。その待つ時間で中が欲しがって開く。腰が自分から前に出た。

「入れて。……お願い、全部」

入ってきた感覚は、やはり指とは別物だった。ゆっくりなのに、奥のほうから押し広げられて、息が喉で詰まる。自分の身体が彼を飲み込んでいくのがわかった。鎖の範囲でしか抱えられず、背中を指で掻くことも、距離を調整することもできない。調整できないぶん、全部が直に来た。

奥まで入ったところで、また止まった。脈だけが、中で重なって打つ。

「動いて」

「どう動いてほしい」

「……強く。逃げるところ、なくして」

最初の一突きで、声が飛んだ。次は浅く、その次は深く。緩急がつくたびに、いきそうな場所を外され、外された反動で中が絡みつく。自分が絡みついている。男が乱暴だからではない。止まる機会は、さっきから何度も与えられている。そのたび私は、続きを選んでいる。選んでいるのに、選んだ先で壊れていく。

「だめ、そこ、当たる……あっ、好き、そこ好き」

言葉がこぼれた。好き、と自分で言ってしまった。相手が喜ぶから、ではなかった。中が熱くて、逃げられなくて、逃げられないことを自分が頼んだせいだった。

腰の速度が上がる。脚は彼の腰に絡めた。顔を埋めようとしても、埋めきれない。見えない。相手だけが見えている。どんな顔をしているのか。どれだけ声を出しているのかさえ意識できなかった。

「いっていい?……いく…見てて…あぁっ…あっ」

最後の言い訳が、そこで消えた。彼を喜ばせているだけなら、こんな言い方はしない。いきそうな自分を、伝えてしまった。声にならない声で、身体が締まる。締まるたびに彼の熱を確かめて、まだ欲しくて、まだ中にいてほしくて、名前でも役でもない言葉だけが出た。

「……好き、これ。欲しかったの、こっち」

頂点は、刺激が一番強い瞬間だけではなかった。相手のせいにできない場所で、自分の身体が正直に答えた瞬間だった。

終わった後の余韻はなかった。男は恋人のように抱きしめ続けたり、次を約束したりしなかった。私も、彼に恋をしたわけではなかった。

男が服を着ながら、軽く尋ねた。

「どうだった?」

答えられなかった。自分が本当にMなのか、この男にだけそうなったのか、今夜の状況に興奮しただけなのか。それはまだわからなかった。

手首の薄い跡は、朝には消えるだろう。消えそうになかったのは、次はもっと試してみたい、という考えのほうだった。