SLENDER IV.com / 書き下ろし官能小説
フレームの向こう側
新人モデルが、自分の表情を選ぶ日
準備してきた笑顔では残せないものを、自分の意思で選び直した彼女は……。
この物語は作品から着想を得た独立したフィクションです。出演者本人の心情や実際の出来事、レビュー対象の固有場面を示すものではありません。
この小説は、作者自身のアイデアと構想をもとに、AIの支援を受けながら文章化・推敲しています。
WRITTEN FOR SLENDER IV.com
撮影スタジオの白い扉を押す前、澪は三度、肩を回した。
鏡の前で練習した笑顔は、もう顔に馴染んでいるはずだった。口角を上げる角度。少し伏せてから見上げる目線。細い腰がきれいに見える立ち方。二十四歳になってからの半年、彼女は仕事の合間にそればかりを研究してきた。
売れたい、と思っていた。
誰かに見つけてもらうのを待つだけではなく、次の仕事の名前を聞いたときに、スタッフが迷わず自分を思い浮かべるようになりたかった。そのためなら厳しい現場にも耐えるつもりだった。難しい要求にも戸惑わないよう、人気の写真集を何冊もめくり、撮影の裏側を語る記事も読んだ。
扉の向こうにあったのは、思ったより小さなスタジオだった。
窓際に布を垂らし、椅子が一脚と、古い棚がある。カメラマンの榊は柔らかく会釈し、衣装担当の女性は温かいお茶を差し出した。
「緊張していますか」
榊に聞かれ、澪は練習した笑顔を見せた。
「大丈夫です。何でも言ってください」
けれど、誰も難しいことは言わなかった。
最初の衣装を着て、窓の近くに立つ。榊は光の位置を確かめてから、「少し右を向いてください」「今度は手を下ろしましょう」と静かな声で指示した。シャッター音は穏やかで、スタッフも必要以上に近づかない。
一着目が終わり、二着目になった。椅子に座る。立つ。窓の外を見る。少し笑う。
撮影は拍子抜けするほど淡々としていた。
休憩のとき、澪は紙コップの水を飲みながら、壁に掛かった時計を見た。予定の半分も過ぎていないのに、心のなかには妙な焦りが広がっていた。
これで、本当に何か残るのだろうか。
誰かに無理を言われるのが怖かったわけではない。むしろ、その怖さを越えるために準備してきた。けれど実際には、榊は丁寧で、現場は平穏だった。覚悟してきたものを使う場所がない。
「疲れました?」
衣装担当の女性が声をかけた。
「いえ」
澪はすぐに答えたが、笑顔は作れなかった。
次の撮影が始まっても、気持ちは戻らなかった。指示どおりに動くたび、画面のなかの自分が少しずつ薄くなっていく気がする。間違えてはいない。けれど、誰が写っていても同じような写真になってしまうのではないか。
榊がカメラを下ろした。
「じゃあ、次は棚の前で」
澪は一歩踏み出しかけて、止まった。
「あの」
三人の視線が集まる。
喉の奥が乾いた。けれど、今言わなければ、また笑顔の練習だけが上手な人に戻ってしまう。
「窓際で、もう少し撮れませんか。もっと……際どく。私から、限界までやってみたいです」
榊は首をかしげ、一瞬だけ目を細めた。
「今の衣装で?」
「はい。椅子はいらないです。カメラを近くしてもらって……私から動いて、見せたいものを全部見せます」
言葉にしてみると、意外なほど静かだった。自分で決めた瞬間、胸の奥が熱く疼いた。まだいける。もっと先まで、自分の身体で勝負できる——その確信が、恐怖より先に広がった。
榊は少し黙ってから、カメラを持ち直した。
「いいですよ。やってみましょう」
澪は窓の前に立った。今度は、次の指示を待たなかった。肩を少し引き、髪を耳へかけ、光が頬に触れる位置を探す。自分の身体がどう見えるかではなく、自分が何を見せたいかを初めて考えた。指先でブラウスのボタンに触れ、ひとつ、またひとつと外していく。白い肌が露わになるたび、空気が肌にまとわりつき、乳首が硬く尖るのが自分でもわかった。まだいける、と心の中で繰り返す。榊のレンズが近づく。シャッター音が、自分の吐息に重なる。
最初はぎこちなかった。
手の置き場所がわからず、目線も定まらない。けれど榊は急かさなかった。澪はスカートの裾をゆっくりとたくし上げ、太腿の内側を光に晒した。下着はそのままだ。白い布地が薄く張り、すでに湿り始めた秘部の形をわずかに浮かび上がらせている。
指がパンティの上に置かれる。
カメラの死角になるよう、体をわずかに斜めにした。布越しに熱が指に伝わる。ゆっくりと円を描くように動かす。恥ずかしいのに、もっと見てほしいという欲が、隠しながらの接触をかえって熱くした。乳首を摘まみ、軽く捻り上げると、甘い声が喉から漏れた。
「そのままで」
榊の声に、澪は笑った。練習した笑顔とは少し違った。売れたいという焦りも、失敗したくないという羞恥も、まだ消えてはいない。それでも、自分がここにいる理由を他人の指示だけで決めたくない、という気持ちが、その笑顔の下にあった。
腰が小さく震えた。布越しの感触だけで、身体はすでに熱く疼いていた。
「……もう、少しだけ」
澪は自分で言った。
けれど榊は静かにカメラを下ろした。
「今日は、ここまでにしましょうか」
澪は頷いた。荷物へ向かい、バッグの持ち手に指をかけた。指はまだ自分の蜜で少し湿っていた。
それでも、足は動かなかった。
「もう少しだけ、撮ってもらえませんか」
榊は驚いたように顔を上げたが、すぐに三脚を脇へ寄せた。
「いいですよ」
澪は窓の前に戻った。
売れたいから、と心の中で繰り返す。仕事だから。写真集に載せるためだから。そう言い訳しながら、指が下着の縁にかかった。布をずらす。すでに濡れた秘部が光に晒される。
カメラが近づく。シャッター音が、自分の吐息に重なる。
何も考えられなくなっていた。
脚を開き、指で割れ目を割る。熱い入口に触れる。ぬるりと沈みかける感触に、腰が小さく跳ねた。
「売れるために……必要なんです」
誰に言うでもなく、澪は呟いた。
指が奥へ沈んでいく。熱い壁が絡みつき、くちゅ、という水音がスタジオに響く。もう一本を加え、激しく出し入れする。カメラが、その動きを正確に捉えている。恥ずかしいのに、もっと見てほしいという欲が、はっきりと勝っていた。
腰が勝手に動く。指を貪るように締めつけ、深く、激しく、自分で動かしてしまう。潮が指の間から溢れ、床に滴り落ちる音さえした。視界が白く霞む。カメラをまっすぐ見たまま、声を抑えきれず喘ぎ、身体を弓なりに反らせて達した。
絶頂の余韻のなかで、澪はぼんやりとカメラを見つめた。
榊は何も言わず、ただ静かにシャッターを切り続けていた。
予定の終了時刻を過ぎて、榊が時計を見た。
「今日は、ここまでにしましょうか」
澪は頷いた。
荷物へ向かい、バッグの持ち手に指をかけた。指はまだ自分の蜜で濡れていた。
それでも、足は動かなかった。
シャッターが止まったとき、スタジオには夕方の光だけが残っていた。
数週間後、澪は届いたデータをひとりで見返した。
最初の写真はどれも整っていた。研究した通りの角度で、失敗はない。けれど一番長く見つめたのは、最後に撮られた一枚だった。
髪は少し乱れ、笑っているのか、決意しているのか、自分でもわからない顔をしていた。指で自らを開いた姿、快感に歪んだ表情、まだ余韻で震える身体。そこに写っている人は、誰かに魅力を作ってもらうのを待っていなかった。
澪は画面を閉じ、次の仕事の連絡に返信した。
まだ売れるかどうかはわからない。
それでも次の撮影では、最初から自分で勝負するつもりだった。