SLENDER IV.com / 書き下ろし官能小説
彼氏を愛しているのに浮気をやめられない私は、とうとう一線まで越えてしまった
作品から着想を得た、書き下ろし官能小説です。
作品の余韻から生まれた、出演者本人とは無関係の独立した物語です。
この物語は作品から着想を得た独立したフィクションです。出演者本人の心情や実際の出来事、レビュー対象の固有場面を示すものではありません。
この小説は、作者自身のアイデアと構想をもとに、AIの支援を受けながら文章化・推敲しています。
WRITTEN FOR SLENDER IV.com
真帆には、自分でも説明できない癖があった。
二十八歳。
五年付き合っている直樹のことは、今でも好きだった。 好きという言葉では足りないと思うくらい、大切だった。
帰宅すれば直樹の隣に座りたかったし、休日を一緒に過ごしたかった。仕事で嫌なことがあれば最初に話したいのも直樹だった。
別れたいと思ったことなど、一度もない。
それなのに。
真帆は、ときどき別の男と関係を持った。 しかも困ったことに、誘われて仕方なく、ではない。 明らかに自分からきっかけを作ってしまう。
そのたびに思う。 もうやめよう。 次はしない。
こんなことを続けていいわけがない。 説明できる理由があるわけでもなかった。
寂しいわけではない。 直樹に不満があるわけでもない。
刺激が欲しい、という言葉だけでも少し違う。 ただ、条件が揃ってしまうと駄目だった。
好みの男。 相手も自分を意識している。 二人になれる。
そして、直樹には知られない。
そこまで揃ってしまうと、やめなければと思っている自分が、驚くほど簡単に負ける。
意思だけではどうしようもなかった。 だから真帆には、一つだけルールがあった。
直樹につながる男とは絶対にしない。 どれだけ好みでも最初から除外する。
せめて、直樹を傷つける場所には持ち込まない。 絶対に知られなければ傷つかない。
ひどく身勝手な理屈だということも、真帆は分かっていた。それでも、その線だけは守ってきた。
*
その夜、直樹と真帆が参加していたのは、都内のホテルで開かれた業界団体の周年レセプションだった。
業界の会社をはじめ、その関連企業、関係者の家族まで招待できる、少し雑多な立食パーティーだった。
真帆は直樹のパートナーとして来ていた。
一時間ほど経ったころだった。
「慎吾?」
直樹が突然、少し離れた場所へ手を上げた。 振り返った男も驚いた顔をした。
「直樹?」
二人は笑いながら握手をした。 四年ほど前まで同じ会社で働いていたらしい。
当時は仕事帰りに何度も飲んだ仲だったが、慎吾が転職してからはほとんど連絡を取っていないという。
「彼女?」
慎吾が真帆を見る。
「真帆。もう長いよ」
直樹がそう紹介した。
慎吾は真帆を見て、一瞬だけ黙った。 ほんの一瞬。
「……すごい綺麗な彼女だな」
笑っている。 言葉も普通だった。
けれど真帆には分かった。 この男は、自分を直樹の彼女としてだけ見ていない。
「羨ましいなあ。直樹、いい彼女見つけたじゃん」
直樹は笑った。 真帆も笑った。 慎吾も笑っている。 ただ、その目だけが違った。
まずい男。
真帆はすぐにそう判断した。
ただ。
直樹と知り合い。 それだけで対象外だ。
*
しばらく三人で話していたところで、直樹が仕事関係者に呼ばれた。
「ちょっと行ってくるね」
「うん」
すぐ戻ると思っていた。 ところが十分経っても戻ってこない。
最初は、真帆も会場を眺めながら直樹を探していた。 早く帰ってこないかな。
慎吾と二人で話すのが嫌なわけではなく、むしろ話しやすい。だから困った。
「直樹とは長いんだ?」
「五年」
「へえ」
慎吾がグラスを傾ける。
「じゃあ俺、完全に入る隙ないかな」
真帆は笑わなかった。
「そういうこと、知り合いの彼女に言う?」
「冗談だよ」
そう言って笑う。 でも目は笑っていない。
嫌な男。
そう思った。
そして、嫌だと思っているはずなのに、自分の身体が妙に落ち着かなくなっていることが、もっと嫌だった。
*
後ろから人が近づいてきた。
真帆は気づかなかった。
「あ、危ないよ」
慎吾に身体を引かれた。 ただそれだけだった。 誰かとぶつからないための、ごく自然な動き。
「ごめん」
真帆は少し離れた。 離れたはずだった。
なのに、そのあと慎吾が近い位置で話していても、もう一度離れようとはしなかった。
肩が触れる。 グラスを持つ指が触れる。 それを避けない自分に、真帆自身が気づいていた。
慎吾も気づいている。 たぶん。
いや。絶対に。
早く帰ってきて。 そう思ったところで、直樹が戻ってきた。
真帆はほっとした。
三人の距離が元に戻る。 直樹の隣に立つ。 それだけで、さっきまでのことが全部消えたような気がした。
ところが、一度入ったスイッチだけは戻らなかった。
慎吾を見る。慎吾も見る。
すぐ逸らす。また見る。
直樹は何も気づかない。
パーティーが終わりに近づいたころ、直樹が今度は昔からの取引先に捕まった。二軒目へ行こうと誘われたらしい。
「断れない相手?」
真帆が聞いた。
「ちょっとだけ顔出したい。悪い」
直樹が申し訳なさそうに手を合わせる。
「真帆、先帰ってて」
そこへ慎吾が口を挟んだ。
「じゃあ俺、タクシー乗り場まで送るよ」
一瞬。
真帆は直樹を見る。
直樹は何の疑いもなく笑った。
「悪い、慎吾。頼むわ」
その言葉を聞いた瞬間、真帆の胸の奥で、何かが落ちた。
*
ホテルのロビーを出て、慎吾と二人になる。
「直樹、全然分かってないなぁ」
慎吾が言った。
「何が?」
「真帆ちゃんのこと」
「何よ」
慎吾が笑う。
「結構やってるでしょ」
真帆の足が止まった。
「……何の話?」
「分かるよ、なんとなく」
「なにも知らないくせに」
「さっきも避けなかったし」
真帆は慎吾を睨んだ。 図星だった。 だから腹が立った。
「絶対、直樹には言わないでよ」
否定するべきだった。 それなのに。
慎吾の表情が変わった。
「認めるんだ」
「認めてない」
「今の言い方で?」
「うるさい」
慎吾が真帆の手を取った。 真帆は振りほどかなかった。
「じゃあさ」
慎吾が真帆を見る。
「今夜、俺とどう?」
胸の奥が、一気に熱くなった。 真帆は何も答えなかった。
断ればいい。 それだけだった。
なのに自分のための理由を作った。
「……断ったら、あの人に言うでしょ」
慎吾が少し笑った。
「かもね」
数秒、黙った。
「……じゃあ」
慎吾を見る。
「確かめてみて」
ホテルの前を出て、タクシー乗り場へ歩く。 夜風が意外と冷たい。 レセプションの熱と、さっきまでの照明が、一気に遠ざかった。
慎吾が半歩前を歩く。真帆はその横にいる。まだ何もしていない。なのに、もう戻れない場所へ向かっている感覚だけが、靴音よりも先にある。
「絶対に、直樹には言わないで」
真帆が先に言った。
「分かってるって」
「本当に」
「言わないよ」
それだけでは足りなくて、真帆はもう一度言った。
「これは、今夜だけの話」
「そうしよう」
「二人だけの話」
慎吾が横目で見る。
「念押しが多いな」
「当たり前でしょ」
そう言いながら、真帆は自分の声が少し弾んでいることに気づいた。
タクシーが停まる。
後部座席に並ぶ。ドアが閉まった瞬間、外の音が薄くなる。 運転手の前に、透明な仕切りがあるだけ。
慎吾が行き先を告げる。 真帆は窓の外を見た。 街灯が流れる。直樹の顔が、一瞬浮かぶ。二軒目で笑っているはずの顔。
『先帰ってて』
あの言葉のあとに、今の自分がいる。
「後悔してる?」
慎吾が低く聞く。
「……してない」
「嘘つくなよ」
「してない」
真帆は手袋を外すように、バッグを膝の上で握った。
「ただ、ばれたら終わる」
「ばれない」
「絶対に」
「うん」
慎吾の手が、真帆の手の甲に重なる。
熱い。
真帆は振りほどかなかった。 指が絡むでもなく、ただ乗っている。 その接触だけで、身体の奥が反応した。
嫌な男だと思ったはずなのに、触れられている今、はっきりしている。
信号で車が停まる。
慎吾の指が、手から手首へ滑る。 コートの袖の内側、皮膚に直接触れる。 真帆は息を吸った。拒む言葉は出なかった。
「直樹、今ごろ飲んでるよな」
慎吾が言う。
「言わないで」
「言ってない。想像してるだけ」
真帆は慎吾を見た。目は笑っていない。 さっき会場にいたときと同じ目だ。
「電話、いま来たらどうする」
「出ない」
「出なきゃ不自然でしょ」
「じゃあ出る。送ってもらってるって言えばいい」
それも嘘ではなかった。 その事実が、かえって罪悪感を重くした。
慎吾の手が、コートの隙間から太ももの上へ落ちる。 スカートの上から、ゆっくり撫でる。
真帆は膝を閉じなかった。
途中から、慎吾の手に自分の手を重ねた。 そのまま乗せて、動かさない。 許している、と分かる形だった。
慎吾が小さく息を吐く。
「自分から来るんだ」
「うるさい」
声が少し掠れた。
ホテルに着く。 ロビーを歩き、エレベーターに乗る。
鏡に映る自分を、真帆は見なかった。
部屋の前でカードキーが光る。 ドアが開く。
入った瞬間、慎吾が一度だけ立ち止まった。
「本当にいいのか」
真帆はバッグを置いた。 振り返る。
「ここまで来てから聞くの?」
「聞くよ」
「今さら」
「今さらでも聞く」
真帆は一歩近づいた。 自分からだった。
「帰らない」
「そう」
「帰ったら、あなたが何を言うか分からないでしょ」
慎吾が笑う。
「それ、理由にしてるな」
「理由なんて、最初からない」
そう言って、真帆は慎吾のシャツの前を掴んだ。 距離が消える。
キスは、丁寧ではなかった。 歯が当たるくらい深く、すぐに舌が入ってきた。
真帆は受けた。 受けただけじゃ足りなくて、自分からも噛みついた。
背中に手が回る。 コートが落ちる。 部屋の空気が肌に触れる前に、慎吾の手が先にきた。
「直樹の知り合いなのに、こんな顔するんだ」
耳元で言われる。 真帆の腰が、小さく震えた。
「言わないで」
「言わないよ」
ブラウスのボタンが外れる。 一つ、また一つ。 ブラの上から胸を掴まれる。 指が乳首を探す。
真帆は息を止めた。
止まらない。 もう、止まらない。
「濡れてる?」
「分からない」
「嘘」
スカートの中へ手が入る。 下着の上から押される。 自分でも分かるくらい熱い。
いつもより、明らかに違う。 そのことに気づいた瞬間、顔が熱くなった。
「こんなに」
慎吾が言う。
「知り合いだから、余計なのか」
「違う」
「違うのか」
指が布の内側へ滑る。 ぴちゃと音がした。 真帆は唇を噛んだ。
「……知らない」
「知らないのに、こんなに」
「黙って」
「嫌だ」
キスをされながら、下着を下ろされる。
立ったまま、脚の間を撫でられる。
指が入る。 浅い。 なのに、奥まで響いた。
真帆は慎吾の肩に爪を立てた。
「んっ……」
「声、出るんだ」
「出さない」
次の瞬間、また出た。
自分の声が、部屋に残る。
慎吾は急がない。 胸を舐め、首筋を吸い、指だけをゆっくり動かす。 真帆は耐えきれなくて、自分から腰を動かした。
「もっと」
言葉が出た。 出てしまった。
「何が」
「…足りない」
慎吾が目を細める。
「自分で言えるんだ」
「うるさい」
「言ってみろよ」
真帆は慎吾のベルトに手をかけた。 外す。
熱いものが掌に当たる。 握った。
「入れて」 その一言で、線は完全に消えた。
ベッドに倒される。
真帆は脚を開いた。
自分からだった。
先が当たる。 入ってくる。 奥まで、一度で埋まる。
「あっ……」
声が割れた。
直樹の顔が、一瞬だけ視界の端にいた。 すぐに、突き上げる熱で消えた。
「だめ…」
「だめなの」
「……違う、いい」
慎吾が腰を動かす。 ゆっくりなのに、当たる場所が正確だった。
真帆はシーツを掴み、すぐに慎吾の背中へ手を回した。
爪が沈む。
「直樹には、絶対言わないで」
「言わない」
「二人だけの……秘密」
その言葉を口にした瞬間、中がきゅっと締まった。
慎吾が低く息を吐く。
「今の、気持ちよかったんだろ」
否定できなかった。
真帆は下から腰を動かした。
貪るように、自分から擦りつける。
恥ずかしい。 はしたない。
分かっているのに、止められない。
慎吾の唇を求めてキスをし、離れるたびにまた食いつく。
自分の指が、無意識に乳首へいっていた。
摘む。
乱暴に奥を突かれる。
「んっ、そこ……感じる」
「直樹の彼女が、こんなことしてる」
「言わないで」
「見てるだけだよ」
見てる、という言葉が、また下腹を熱くした。
真帆は目を閉じなかった。
閉じると、余計に今の自分が分かってしまう。
開いたまま、慎吾を見た。
「もっと、動かして」
「自分でも動けよ」
真帆は動いた。
腰を浮かせ、落とす。
水音が立つ。
自分の声が、だんだん形を失う。
「いく……いく…ぅ」
「いいよ」
「言わないで、直樹には……っ」
絶頂がきた。 腰が反り、中が何度も締まる。
その言葉を言いながらイったことが、自分でも分かった。
拒絶じゃなかった。
秘密そのものが、快感になっていた。
慎吾は抜かなかった。 余韻の中で、また動き始める。
真帆は泣きそうな声を出して、それでも脚を絡めた。
「まだ」
「まだしたいの?」
「……うん」
自分の指が、クリトリスへいく。
はしたないと思いながら、擦る。
「だめ、だめ…また……いく」
二度目は、前より汚かった。 声が裏返り、爪が背中に残る。
慎吾が深く押し込んで、低く呻いた。
熱が広がる。
真帆はそれを受けたまま、小さく震えていた。
動きが止まる。 天井が見える。 何かが頬を伝う。 呼吸だけが、部屋に残った。
真帆はすぐに身体を起こさなかった。
起こせなかった、というより、起こすと現実が来るのが分かっていた。
慎吾は隣で仰向けになっている。
恋愛の話はしない。 次の約束もしない。
残っているのは、汗と、熱と、言ってはいけない共有だけだった。
真帆は腕で顔を覆った。 性欲は、満たされていた。 なのに、胸の奥が空っぽではなかった。
今まで唯一守ってきた線を、自分の口と、自分の腰で、越えてしまった。
直樹につながる男とはしない。 そのルールは、もう使えなかった。
しばらくして、真帆は立ち上がった。 シャワーを浴びる。 鏡の中の自分が、パーティーにいたときと同じ顔をしていない。 それでも、化粧を直した。 慎吾は送りはしなかった。 真帆も求めなかった。 別々に、夜の中へ戻る。
翌朝。 枕元のスマートフォンを見る。 直樹からメッセージが来ていた。 『昨日ごめん。ちゃんと帰れた?』 真帆はしばらく画面を見た。 そして文字を打った。 『うん。大丈夫だったよ』 一度止める。 それから続けた。 『慎吾さんがタクシー乗り場まで送ってくれた』 嘘ではなかった。 そこまでなら、本当だった。 送信した。 数秒後。 『そっか。慎吾いてよかった』 真帆は目を閉じた。
次から、また元のルールに戻ればいい。
そう思った。 けれど。 たった一つだけのルールだった。
直樹につながる男だけは絶対に選ばない。 そこだけは自分を信用できた。
その線を。 昨夜、自分から越えた。 直樹に知られるかもしれないという距離の近さまで含めて、今までとは違う高揚を覚えてしまった。 今まで守っていた最後の線は、もうなかった。