04 / FICTION

SLENDER IV.com / 書き下ろし官能小説

彼氏を愛しているのに浮気をやめられない私は、とうとう一線まで越えてしまった

作品から着想を得た、書き下ろし官能小説です。

作品の余韻から生まれた、出演者本人とは無関係の独立した物語です。

創作であること

この物語は作品から着想を得た独立したフィクションです。出演者本人の心情や実際の出来事、レビュー対象の固有場面を示すものではありません。

この小説は、作者自身のアイデアと構想をもとに、AIの支援を受けながら文章化・推敲しています。

WRITTEN FOR SLENDER IV.com

真帆には、自分でも説明できない癖があった。

二十八歳。

五年付き合っている直樹のことは、今でも好きだった。 好きという言葉では足りないと思うくらい、大切だった。

帰宅すれば直樹の隣に座りたかったし、休日を一緒に過ごしたかった。仕事で嫌なことがあれば最初に話したいのも直樹だった。

別れたいと思ったことなど、一度もない。

それなのに。

真帆は、ときどき別の男と関係を持った。 しかも困ったことに、誘われて仕方なく、ではない。 明らかに自分からきっかけを作ってしまう。

そのたびに思う。 もうやめよう。 次はしない。

こんなことを続けていいわけがない。 説明できる理由があるわけでもなかった。

寂しいわけではない。 直樹に不満があるわけでもない。

刺激が欲しい、という言葉だけでも少し違う。 ただ、条件が揃ってしまうと駄目だった。

好みの男。 相手も自分を意識している。 二人になれる。

そして、直樹には知られない。

そこまで揃ってしまうと、やめなければと思っている自分が、驚くほど簡単に負ける。

意思だけではどうしようもなかった。 だから真帆には、一つだけルールがあった。

直樹につながる男とは絶対にしない。 どれだけ好みでも最初から除外する。

せめて、直樹を傷つける場所には持ち込まない。 絶対に知られなければ傷つかない。

ひどく身勝手な理屈だということも、真帆は分かっていた。それでも、その線だけは守ってきた。

その夜、直樹と真帆が参加していたのは、都内のホテルで開かれた業界団体の周年レセプションだった。

業界の会社をはじめ、その関連企業、関係者の家族まで招待できる、少し雑多な立食パーティーだった。

真帆は直樹のパートナーとして来ていた。

一時間ほど経ったころだった。

「慎吾?」

直樹が突然、少し離れた場所へ手を上げた。 振り返った男も驚いた顔をした。

「直樹?」

二人は笑いながら握手をした。 四年ほど前まで同じ会社で働いていたらしい。

当時は仕事帰りに何度も飲んだ仲だったが、慎吾が転職してからはほとんど連絡を取っていないという。

「彼女?」

慎吾が真帆を見る。

「真帆。もう長いよ」

直樹がそう紹介した。

慎吾は真帆を見て、一瞬だけ黙った。 ほんの一瞬。

「……すごい綺麗な彼女だな」

笑っている。 言葉も普通だった。

けれど真帆には分かった。 この男は、自分を直樹の彼女としてだけ見ていない。

「羨ましいなあ。直樹、いい彼女見つけたじゃん」

直樹は笑った。 真帆も笑った。 慎吾も笑っている。 ただ、その目だけが違った。

まずい男。

真帆はすぐにそう判断した。

ただ。

直樹と知り合い。 それだけで対象外だ。

しばらく三人で話していたところで、直樹が仕事関係者に呼ばれた。

「ちょっと行ってくるね」

「うん」

すぐ戻ると思っていた。 ところが十分経っても戻ってこない。

最初は、真帆も会場を眺めながら直樹を探していた。 早く帰ってこないかな。

慎吾と二人で話すのが嫌なわけではなく、むしろ話しやすい。だから困った。

「直樹とは長いんだ?」

「五年」

「へえ」

慎吾がグラスを傾ける。

「じゃあ俺、完全に入る隙ないかな」

真帆は笑わなかった。

「そういうこと、知り合いの彼女に言う?」

「冗談だよ」

そう言って笑う。 でも目は笑っていない。

嫌な男。

そう思った。

そして、嫌だと思っているはずなのに、自分の身体が妙に落ち着かなくなっていることが、もっと嫌だった。

後ろから人が近づいてきた。

真帆は気づかなかった。

「あ、危ないよ」

慎吾に身体を引かれた。 ただそれだけだった。 誰かとぶつからないための、ごく自然な動き。

「ごめん」

真帆は少し離れた。 離れたはずだった。

なのに、そのあと慎吾が近い位置で話していても、もう一度離れようとはしなかった。

肩が触れる。 グラスを持つ指が触れる。 それを避けない自分に、真帆自身が気づいていた。

慎吾も気づいている。 たぶん。

いや。絶対に。

早く帰ってきて。 そう思ったところで、直樹が戻ってきた。

真帆はほっとした。

三人の距離が元に戻る。 直樹の隣に立つ。 それだけで、さっきまでのことが全部消えたような気がした。

ところが、一度入ったスイッチだけは戻らなかった。

慎吾を見る。慎吾も見る。

すぐ逸らす。また見る。

直樹は何も気づかない。

パーティーが終わりに近づいたころ、直樹が今度は昔からの取引先に捕まった。二軒目へ行こうと誘われたらしい。

「断れない相手?」

真帆が聞いた。

「ちょっとだけ顔出したい。悪い」

直樹が申し訳なさそうに手を合わせる。

「真帆、先帰ってて」

そこへ慎吾が口を挟んだ。

「じゃあ俺、タクシー乗り場まで送るよ」

一瞬。

真帆は直樹を見る。

直樹は何の疑いもなく笑った。

「悪い、慎吾。頼むわ」

その言葉を聞いた瞬間、真帆の胸の奥で、何かが落ちた。

ホテルのロビーを出て、慎吾と二人になる。

「直樹、全然分かってないなぁ」

慎吾が言った。

「何が?」

「真帆ちゃんのこと」

「何よ」

慎吾が笑う。

「結構やってるでしょ」

真帆の足が止まった。

「……何の話?」

「分かるよ、なんとなく」

「なにも知らないくせに」

「さっきも避けなかったし」

真帆は慎吾を睨んだ。 図星だった。 だから腹が立った。

「絶対、直樹には言わないでよ」

否定するべきだった。 それなのに。

慎吾の表情が変わった。

「認めるんだ」

「認めてない」

「今の言い方で?」

「うるさい」

慎吾が真帆の手を取った。 真帆は振りほどかなかった。

「じゃあさ」

慎吾が真帆を見る。

「今夜、俺とどう?」

胸の奥が、一気に熱くなった。 真帆は何も答えなかった。

断ればいい。 それだけだった。

なのに自分のための理由を作った。

「……断ったら、あの人に言うでしょ」

慎吾が少し笑った。

「かもね」

数秒、黙った。

「……じゃあ」

慎吾を見る。

「確かめてみて」

ホテルの前を出て、タクシー乗り場へ歩く。 夜風が意外と冷たい。 レセプションの熱と、さっきまでの照明が、一気に遠ざかった。

慎吾が半歩前を歩く。真帆はその横にいる。まだ何もしていない。なのに、もう戻れない場所へ向かっている感覚だけが、靴音よりも先にある。

「絶対に、直樹には言わないで」

真帆が先に言った。

「分かってるって」

「本当に」

「言わないよ」

それだけでは足りなくて、真帆はもう一度言った。

「これは、今夜だけの話」

「そうしよう」

「二人だけの話」

慎吾が横目で見る。

「念押しが多いな」

「当たり前でしょ」

そう言いながら、真帆は自分の声が少し弾んでいることに気づいた。

タクシーが停まる。

後部座席に並ぶ。ドアが閉まった瞬間、外の音が薄くなる。 運転手の前に、透明な仕切りがあるだけ。

慎吾が行き先を告げる。 真帆は窓の外を見た。 街灯が流れる。直樹の顔が、一瞬浮かぶ。二軒目で笑っているはずの顔。

『先帰ってて』

あの言葉のあとに、今の自分がいる。

「後悔してる?」

慎吾が低く聞く。

「……してない」

「嘘つくなよ」

「してない」

真帆は手袋を外すように、バッグを膝の上で握った。

「ただ、ばれたら終わる」

「ばれない」

「絶対に」

「うん」

慎吾の手が、真帆の手の甲に重なる。

熱い。

真帆は振りほどかなかった。 指が絡むでもなく、ただ乗っている。 その接触だけで、身体の奥が反応した。

嫌な男だと思ったはずなのに、触れられている今、はっきりしている。

信号で車が停まる。

慎吾の指が、手から手首へ滑る。 コートの袖の内側、皮膚に直接触れる。 真帆は息を吸った。拒む言葉は出なかった。

「直樹、今ごろ飲んでるよな」

慎吾が言う。

「言わないで」

「言ってない。想像してるだけ」

真帆は慎吾を見た。目は笑っていない。 さっき会場にいたときと同じ目だ。

「電話、いま来たらどうする」

「出ない」

「出なきゃ不自然でしょ」

「じゃあ出る。送ってもらってるって言えばいい」

それも嘘ではなかった。 その事実が、かえって罪悪感を重くした。

慎吾の手が、コートの隙間から太ももの上へ落ちる。 スカートの上から、ゆっくり撫でる。

真帆は膝を閉じなかった。

途中から、慎吾の手に自分の手を重ねた。 そのまま乗せて、動かさない。 許している、と分かる形だった。

慎吾が小さく息を吐く。

「自分から来るんだ」

「うるさい」

声が少し掠れた。

ホテルに着く。 ロビーを歩き、エレベーターに乗る。

鏡に映る自分を、真帆は見なかった。

部屋の前でカードキーが光る。 ドアが開く。

入った瞬間、慎吾が一度だけ立ち止まった。

「本当にいいのか」

真帆はバッグを置いた。 振り返る。

「ここまで来てから聞くの?」

「聞くよ」

「今さら」

「今さらでも聞く」

真帆は一歩近づいた。 自分からだった。

「帰らない」

「そう」

「帰ったら、あなたが何を言うか分からないでしょ」

慎吾が笑う。

「それ、理由にしてるな」

「理由なんて、最初からない」

そう言って、真帆は慎吾のシャツの前を掴んだ。 距離が消える。

キスは、丁寧ではなかった。 歯が当たるくらい深く、すぐに舌が入ってきた。

真帆は受けた。 受けただけじゃ足りなくて、自分からも噛みついた。

背中に手が回る。 コートが落ちる。 部屋の空気が肌に触れる前に、慎吾の手が先にきた。

「直樹の知り合いなのに、こんな顔するんだ」

耳元で言われる。 真帆の腰が、小さく震えた。

「言わないで」

「言わないよ」

ブラウスのボタンが外れる。 一つ、また一つ。 ブラの上から胸を掴まれる。 指が乳首を探す。

真帆は息を止めた。

止まらない。 もう、止まらない。

「濡れてる?」

「分からない」

「嘘」

スカートの中へ手が入る。 下着の上から押される。 自分でも分かるくらい熱い。

いつもより、明らかに違う。 そのことに気づいた瞬間、顔が熱くなった。

「こんなに」

慎吾が言う。

「知り合いだから、余計なのか」

「違う」

「違うのか」

指が布の内側へ滑る。 ぴちゃと音がした。 真帆は唇を噛んだ。

「……知らない」

「知らないのに、こんなに」

「黙って」

「嫌だ」

キスをされながら、下着を下ろされる。

立ったまま、脚の間を撫でられる。

指が入る。 浅い。 なのに、奥まで響いた。

真帆は慎吾の肩に爪を立てた。

「んっ……」

「声、出るんだ」

「出さない」

次の瞬間、また出た。

自分の声が、部屋に残る。

慎吾は急がない。 胸を舐め、首筋を吸い、指だけをゆっくり動かす。 真帆は耐えきれなくて、自分から腰を動かした。

「もっと」

言葉が出た。 出てしまった。

「何が」

「…足りない」

慎吾が目を細める。

「自分で言えるんだ」

「うるさい」

「言ってみろよ」

真帆は慎吾のベルトに手をかけた。 外す。

熱いものが掌に当たる。 握った。

「入れて」 その一言で、線は完全に消えた。

ベッドに倒される。

真帆は脚を開いた。

自分からだった。

先が当たる。 入ってくる。 奥まで、一度で埋まる。

「あっ……」

声が割れた。

直樹の顔が、一瞬だけ視界の端にいた。 すぐに、突き上げる熱で消えた。

「だめ…」

「だめなの」

「……違う、いい」

慎吾が腰を動かす。 ゆっくりなのに、当たる場所が正確だった。

真帆はシーツを掴み、すぐに慎吾の背中へ手を回した。

爪が沈む。

「直樹には、絶対言わないで」

「言わない」

「二人だけの……秘密」

その言葉を口にした瞬間、中がきゅっと締まった。

慎吾が低く息を吐く。

「今の、気持ちよかったんだろ」

否定できなかった。

真帆は下から腰を動かした。

貪るように、自分から擦りつける。

恥ずかしい。 はしたない。

分かっているのに、止められない。

慎吾の唇を求めてキスをし、離れるたびにまた食いつく。

自分の指が、無意識に乳首へいっていた。

摘む。

乱暴に奥を突かれる。

「んっ、そこ……感じる」

「直樹の彼女が、こんなことしてる」

「言わないで」

「見てるだけだよ」

見てる、という言葉が、また下腹を熱くした。

真帆は目を閉じなかった。

閉じると、余計に今の自分が分かってしまう。

開いたまま、慎吾を見た。

「もっと、動かして」

「自分でも動けよ」

真帆は動いた。

腰を浮かせ、落とす。

水音が立つ。

自分の声が、だんだん形を失う。

「いく……いく…ぅ」

「いいよ」

「言わないで、直樹には……っ」

絶頂がきた。 腰が反り、中が何度も締まる。

その言葉を言いながらイったことが、自分でも分かった。

拒絶じゃなかった。

秘密そのものが、快感になっていた。

慎吾は抜かなかった。 余韻の中で、また動き始める。

真帆は泣きそうな声を出して、それでも脚を絡めた。

「まだ」

「まだしたいの?」

「……うん」

自分の指が、クリトリスへいく。

はしたないと思いながら、擦る。

「だめ、だめ…また……いく」

二度目は、前より汚かった。 声が裏返り、爪が背中に残る。

慎吾が深く押し込んで、低く呻いた。

熱が広がる。

真帆はそれを受けたまま、小さく震えていた。

動きが止まる。 天井が見える。 何かが頬を伝う。 呼吸だけが、部屋に残った。

真帆はすぐに身体を起こさなかった。

起こせなかった、というより、起こすと現実が来るのが分かっていた。

慎吾は隣で仰向けになっている。

恋愛の話はしない。 次の約束もしない。

残っているのは、汗と、熱と、言ってはいけない共有だけだった。

真帆は腕で顔を覆った。 性欲は、満たされていた。 なのに、胸の奥が空っぽではなかった。

今まで唯一守ってきた線を、自分の口と、自分の腰で、越えてしまった。

直樹につながる男とはしない。 そのルールは、もう使えなかった。

しばらくして、真帆は立ち上がった。 シャワーを浴びる。 鏡の中の自分が、パーティーにいたときと同じ顔をしていない。 それでも、化粧を直した。 慎吾は送りはしなかった。 真帆も求めなかった。 別々に、夜の中へ戻る。

翌朝。 枕元のスマートフォンを見る。 直樹からメッセージが来ていた。 『昨日ごめん。ちゃんと帰れた?』 真帆はしばらく画面を見た。 そして文字を打った。 『うん。大丈夫だったよ』 一度止める。 それから続けた。 『慎吾さんがタクシー乗り場まで送ってくれた』 嘘ではなかった。 そこまでなら、本当だった。 送信した。 数秒後。 『そっか。慎吾いてよかった』 真帆は目を閉じた。

次から、また元のルールに戻ればいい。

そう思った。 けれど。 たった一つだけのルールだった。

直樹につながる男だけは絶対に選ばない。 そこだけは自分を信用できた。

その線を。 昨夜、自分から越えた。 直樹に知られるかもしれないという距離の近さまで含めて、今までとは違う高揚を覚えてしまった。 今まで守っていた最後の線は、もうなかった。