04 / FICTION

SLENDER IV.com / 書き下ろし官能小説

コートの外で

書き下ろし官能小説

レビュー対象とは別の人物・設定で書かれた、出演者本人とは無関係の書き下ろし成人フィクションです。

創作であること

この物語は作品から着想を得た独立したフィクションです。出演者本人の心情や実際の出来事、レビュー対象の固有場面を示すものではありません。

この小説は、作者自身のアイデアと構想をもとに、AIの支援を受けながら文章化・推敲しています。

WRITTEN FOR SLENDER IV.com

凪がラケットを置いたのは、夜の九時を過ぎてからだった。

「終わり」

高地が言った。ベースラインの向こうで、凪は露骨に眉を寄せた。

「あと一本」

「駄目」

「一本くらいいいでしょ」

「よくない」

高地は時計を見る。「予定より二十二分オーバー。右肩も落ちてる。これ以上やったら、明日の質が下がる」

「私、代表なんだけど」

「だから止めてんの」

「普通、もうちょっと選手の自主性を尊重しない?」

「自主性と無茶は別」

即答だった。凪はラケットを肩に載せたまま、高地を睨んだ。三年前から、ずっとこうだ。ほかのスタッフなら、あと一本と言えば通る。マネージャーも、スポンサー担当も、最終的には凪の機嫌を見る。けれど高地だけは違った。必要なら、平然と止める。凪が怒っても、睨んでも、明日の取材で機嫌が悪くなろうが知ったことではない、という顔をする。

「ストレッチ十分」

「え、やるの?」

「やる」

「命令?」

「仕事」

「ほんと可愛くない」

「知ってる」

その返事が、また腹立たしい。凪は舌打ちしながらマットへ座った。それでも従う。高地が正しいことを、誰より凪自身が分かっているからだ。

代表に選ばれてから、凪の生活は以前にも増して細かく管理されるようになった。食事、練習、治療、取材、移動、睡眠。何もない時間ですら、「休養」という予定として管理表へ組み込まれる。だが凪はそれを窮屈だとは思わなかった。勝つためなら必要なことはする。むしろ、身体も生活も一点へ向かって研ぎ澄まされていく感覚は好きだった。

問題は、その外だった。

スポンサーは、選手の競技成績だけに金を出しているわけではない。イメージにも金を出している。広告、テレビ、イベント、SNS。凪がどこで何をして、誰と会い、どんな写真を撮られるか。それらすべてが商品価値に直結する。だからマネジメント会社と主要スポンサーは、選手が外で余計な問題を起こさないよう、かなり前から特殊な保養施設と契約していた。

表向きは、トップ選手や芸能関係者向けの会員制リカバリー施設だ。スパ、治療、食事、睡眠、カウンセリング。完全個室。守秘義務。そこまでは、普通の高級保養所と変わらない。違うのは、利用者が望めば、身体的な欲求まで含めた「休養」を手配できることだった。選手が街で誰かを拾うより安全。交際相手と揉めるより安全。写真を撮られる危険もない。スポンサーにとって重要なのは、選手が清廉潔白であることではない。問題が表へ出ないことだった。

凪は、その現実を嫌ってはいなかった。むしろ合理的だと思っていた。施設に男たちが常駐しているわけではない。利用者が希望を出す。年齢、雰囲気、会話をしたいのかしたくないのか、積極的な相手がいいのか、こちらの言葉を優先する相手がいいのか。施設側が登録者の中から条件に近い人物を手配する。事前の身元確認と健康確認。もちろん撮影や録音禁止。個人的な連絡先の交換も禁止。合意した範囲から外れれば、その場で終了。それが仕組みだった。

最初の頃、凪はかなり気に入っていた。何より、説明がいらない。普通なら隠したくなるような欲まで、そこでは注文として扱われる。凪が好きだったのは、相手を動かすことだった。「そこに座って」「こっち見て」「今は喋らないで」。少し離れた位置に立たせて、凪が許可するまで近づかせないこともあった。姿勢を変えさせる。目をそらさないよう言う。何か特別なことをさせたいわけではない。凪が欲しかったのは、自分の言葉で、相手の行動が変わる瞬間だった。自分を見て、次の言葉を待つ。その瞬間。胸の奥から、ぞくりと熱が走る。コートと少し似ていた。自分のリズムへ引きずり込みたくなる。相手の判断より、自分の意思が勝つ。それが好きだった。

けれど、施設の男たちは、やがて興味の湧かない相手になった。全部、凪の望み通り。最初から。凪を満足させるために選ばれた男なのだから、当然だった。

ある夜、凪は一人の男をソファへ座らせた。自慰行為をするように言った。男は穏やかに、「はい」と答えた。その瞬間、凪は急に冷めた。何も勝ち取っていない。この男は、最初から従うと決めてここへ来ている。それを自分の力で動かしたような顔をしている自分が、急につまらなくなった。「もういい」。凪が言うと、男は少し驚いた。「何か気に入らなかった?」「違う」「じゃあ」「あなたは何も悪くない」。本当に悪くなかった。悪いのは、完璧すぎる仕組みだった。拒まれない。傷つかない。失敗しない。そして、死ぬほど退屈だった。

ストレッチを終え、高地の車へ乗り込む。今夜も行き先は、その保養施設だった。治療と宿泊だけなら、高地が送ることも珍しくない。助手席で凪は窓の外を眺めた。高地は前だけを見ている。

「ねえ」

「何」

「私の言うこと、そんなに聞きたくない?」

「内容による」

「普通、担当選手にはもう少し愛想よくしない?」

「必要?」

「必要」

「じゃあ善処する」

役所みたいな返事。凪は鼻で笑った。

「笑って」

「は?」

「今」

「運転中だ」

「赤信号でいい」

「なんで」

「私が見たいから」

高地が呆れたように息を吐く。その瞬間、凪の胸の奥が小さく動いた。施設の男なら、理由なんて聞かない。笑ってと言えば笑う。高地は違う。「なんで」と聞く。そこに、妙な期待が生まれた。

車が赤信号で止まる。高地が一度だけ凪を見る。「これで満足?」。ほんの少し口元を上げた。それだけだった。凪は一瞬、返事を忘れた。

ぞく、とした。

大したことではない。ただ、笑っただけ。けれど、高地は普段なら凪の機嫌を取る男ではない。その男が、凪が言ったから、今だけ行動を変えた。

「……まあまあ」

凪は窓の外を見る。高地に顔を見られたくなかった。胸の奥が妙に熱い。

それから十分ほどで、施設が近づく。見慣れた道。見慣れたホテルのような建物。凪は窓越しにそれを見ながら、過去の夜を思い出していた。ソファに座る男。言われるまま脱ぐ男。凪の指示があるまで動かず、こちらを見る男。——座って。従う。——まだ。止まる。——こっち来て。近づく。その記憶の中の男の顔が、なぜか途中から高地に変わった。

凪は眉を寄せた。何を考えているんだ。高地なら、「座って」と言ったら、「何で?」と聞くだろうか。「黙って」と言えば、「嫌」くらい言うかもしれない。それでも、最後には自分の言葉で座らせることができたら。想像した瞬間、背中をぞくりと何かが走った。

施設が近づくほど、過去にやらせたことが一つずつ高地へ重なっていく。目の前に立たせる。見るよう言う。触れさせる。動かない高地を、最後には自分から動かす。喉が乾いた。

凪は自分の太ももを掴む。

ただ送ってもらっているだけなのに、高地の横顔がやけに気になる。ハンドルを握る手。前だけを見る目。練習中と変わらない、毅然とした顔。施設の男たちとは何もかも違う。従うことを仕事にしていない。凪に嫌われないことを最優先にもしていない。必要なら止める。必要なら断る。だから、この男が自分の言葉で動いたら、さっき信号で笑った程度では済まない。

従わせたい。

どこまでなら凪の言葉を聞くのか。どこで拒むのか。そして、拒んだところから、さらに一歩、凪の方へ来させることができるのか。

考えれば考えるほど、施設へ向かっているはずなのに、今夜手配されている誰かのことはどうでもよくなっていった。条件だけで選んだ男。その相手にはもう、何も感じない。隣には、今、凪が一番言うことを聞かせたい男がいる。その事実に気づいた瞬間、もう無理だった。

車が施設の前へ着く。高地がエンジンを切った。

「着いた」

凪はシートベルトを外さない。

「高地」

「何」

「上がって」

高地の手が止まった。ほんの一瞬。凪は、その変化を見逃さなかった。胸の奥が跳ねる。

「凪」

声が少し低くなる。

「何」

「意味分かって言ってる?」

凪は笑った。「コーチならなんとでも言い訳できる」

高地は黙る。その沈黙だけで、また熱くなる。施設ではありえない。相手は、すでに了承してから来る。凪が望むことを受け入れるために、部屋へ入る。高地は違う。今、考えている。断ることもできる。凪の言葉を拒むこともできる。だからこそ、従わせたい。はっきりと思った。

「いいから来て」

凪は言った。「明日の仕事には持ち込まない。契約にも関係ない。私が気に入らなければ終わり」

高地が凪を見る。「気に入ったら?」

その返事に、凪の背中をまた、ぞくりと何かが走った。

「上がって」

今度は命令に近い口調だった。高地はしばらく凪を見た。

「一つ条件」

「そっちが条件つけるの?」

「つける」

「何」

「明日からは今まで通り」

「当たり前」

「練習止めろって言う時は止める」

「……それも?」

「それも」

「私が嫌だって言っても?」

「選手として必要なら」

凪は数秒、高地を睨んだ。それから、笑った。

「いい」

「本当に?」

「むしろ、その方がいい」

部屋へ入る。高地はドアのそばで止まった。凪はバッグを置き、振り返る。施設側には連絡を入れ、今夜の手配をキャンセルした。規則上、問題はない。

「そこ立ってないで、座って」

高地がソファを見る。すぐには動かない。

「高地」

「何」

「座って」

少し強く言った。数秒。高地はソファへ腰を下ろした。たったそれだけなのに、胸の奥からまた、ぞく、と熱が走った。施設の男たちにも、何度も同じことを言った。でも、一度もこんなふうには感じなかった。高地には、凪に従う義務はない。普段なら、むしろ凪を止める側だ。その男が、凪の言葉で、今、座った。

「何」

高地が言う。「嬉しそうだけど」

見抜かれた。凪は隠さなかった。「嬉しい」

「何が」

「私の言うこと聞いたから」

高地の眉が少し動く。「普段から聞かせてるだろ」

「違う」

凪は彼の前へ歩く。「みんな、素直に聞くの」

「同じじゃない?」

「全然違う」

即答した。「代表だから。スポンサーがいるから。施設なら契約だから。言えば聞く。最初から」

凪は高地を見下ろした。「つまらないの」

「じゃあ何がいいんだよ」

「あなたみたいなの」

高地の表情が、ほんの少し変わる。「俺?」

「そう」

凪は笑った。「言うこと聞かなそうだから」

「当然、納得しなければ聞かない」

「そこがいい」

その言葉を口にした瞬間、凪の中で、ずっと曖昧だった欲望の形が、ようやくはっきりした。従わない男を、思い通りにしたいのだ。

「私ね」

凪は少し身を屈め、高地と目線を合わせた。「従順な人に興味ないみたい」

「じゃあ?」

「従わない人を、従わせるのが好き」

高地が黙った。その沈黙すら、気持ちいい。

「嫌な女でしょ」

「ちょっとな」

「そこは否定」

「嘘つけない」

凪は思わず笑った。やっぱり、この男を。

凪は高地のネクタイへ手を伸ばす。指先で、結び目に触れる。

「外して」

高地は動かない。凪を見る。施設の男なら、もう外している。だからこそ、この数秒がたまらない。

「外して」

高地はゆっくりネクタイを緩めた。凪は、その動きを目で追った。喉の奥が乾く。自分の一言で、この男を動かした。もっと、そう思った。

「ジャケットも」

高地が脱ぐ。「そこ置いて」。置く。凪は無意識に唇を噛んだ。

「シャツ」

短く言った。高地の指が、一拍遅れて動く。一番上のボタンに触れる。外す。次。また次。ゆっくりと、胸元が開いていく。白いシャツの下に、引き締まった胸と腹が見える。練習中に何度も見てきた体だ。なのに、今は違う。自分が言ったから、ここまで脱いだ体だ。シャツが完全に開くと、高地はそれを脱いだ。腕から抜き、ジャケットの隣へ置く。上半身が露出する。凪はそれを見て、喉の奥が熱くなるのを感じた。

なぜ今この男は従っているのか。私に性的な魅力を感じている以外に、何があるのか。そう思うとたまらなくなった。

「見てて」

高地の視線は、凪の顔から外れない。凪は自分のウェアの裾に手をかけた。まずは、その上から、自分の腹のあたりをゆっくりと撫でた。指先で、薄い布地の感触を確かめるように。高地の視線が、わずかに下がるのが分かった。凪はそれを意識しながら、手をさらに上へ滑らせる。スポーツブラをつけたウェアの上から、胸の膨らみを包む。指で軽く圧をかけ、円を描くように動かす。布越しでも、先端が少し硬くなっているのが自分で分かった。

しばらく、それを続けた。高地は黙って見ている。動かない。視線だけが、凪の手の動きを追っている。そのことが、徐々に熱を帯びさせていく。凪はウェアの裾引き上げた。腹が露わになる。さらに上げて、スポーツブラの下まで。そこで一度止め、ブラの上から再び胸を触った。今度は直接、布の上から乳首を摘まむ。ゆっくりと、感触を確かめるように。熱が、指先から下腹部へ落ちていくのが分かった。

「……ん」

小さく息が漏れる。高地の喉が、わずかに動いた。凪はそれを見て、ブラに手をかけた。外す。肩から紐をずらし、ゆっくりと。胸が空気に触れる。高地の目が、そこに落ちる。凪は隠さず、自分の手で胸を支え、指先で乳首を直接弄った。摘まみ、軽く転がす。感度が上がっているのが、自分でもはっきり分かった。

もう一方の手を、スパッツの中へ滑らせる。指先が、すでに熱を帯びた布地に触れる。湿っている。自分でも、少し驚いた。

スパッツをずらす。杢グレーのパンティが露わになる。中央が、明らかに色を変えていた。凪はそれを隠さず、高地に向けた。指で布地を少し横へずらし、中の熱を見せる。

「見て」

高地の視線が、そこに固定される。逃げない。逸らさない。凪が許すまで、そこに置かれている。その視線を受けたまま、凪は自分の指を動かした。ゆっくりと、内側を撫でる。湿り気が、指に絡む。声は出さない。ただ、呼吸だけが少し乱れる。高地の目が、それを追う。胸の奥が熱を帯びた。

そして、気づいた。高地の股間が、膨らんでいる。シャツを脱いだだけの上半身。座ったまま、動かない。なのに、あそこだけが正直に反応している。凪はそれを見て、息を止めた。ついさっきまで、そんな関係とは無縁だった男が、今、明らかに硬くなっている。

「……触りたい」

小さく言った。高地の目が、凪の顔へ戻る。

「動かないで」

命令した。高地の体が、わずかに強張る。でも、動かない。

凪はソファの前に膝をついた。高地の脚の間に入り、ベルトに手をかける。外す。ジッパーを下ろす。下着の上から、熱を確かめる。硬い。熱い。布地の上からでも、はっきりと分かった。下着をずらす。熱いものが、すぐに出てきた。凪は一度、それを手で包んだ。高地の腹に、力が入るのが分かった。でも、声は出ない。顔も、ほとんど動かない。凪はそれを見て、満足した。

「腰を上げて」

ズボンを下ろし、下着もおろす。

唇を寄せる。熱さが、すぐに舌に伝わってくる。浅く含み、ゆっくりと動かす。高地の太ももが、わずかに緊張する。それでも、彼は動かない。声も出さない。表情も、ほとんど崩さない。ただ、腹の筋肉が波打つように収縮し、息だけが少し荒くなっている。

凪はそれを楽しみながら、深く含んだ。舌で裏筋をなぞり、先端を軽く吸う。高地の手が、ソファの端を掴むのが見えた。指が白くなっている。それでも、顔は俯かない。声も殺している。体だけが、正直に反応している。

「感じてるの、分かるよ」

口を離して、小さく言った。高地は何も答えなかった。ただ、凪を見ている。その目が、普段の冷静さを少しだけ失っているのが分かった。それが、たまらなかった。

もう一度、口を付ける。今度は、ゆっくりと、深く。高地の腰が、わずかに動きたそうになるのを、凪は手で押さえた。

「動かない」

短く言った。高地の動きが、止まる。腹の力だけが、強く残っている。凪はそれを感じながら、自分の満足するまで動かした。唾液が糸を引き、熱が掌に残る。高地のものが、さらに硬くなっているのが分かった。それでも、彼は声を出さない。顔も、ほとんど崩さない。ただ、体の反応だけが、すべてを語っていた。

十分ほどして、凪は口を離した。唇の端を、指で拭う。高地は息を整えようとしているが、完全には隠せていない。

「今度は、あなたが」

凪は立ち上がり、スパッツとパンティを完全に脱いだ。自分の体を、隠さずに見せる。高地の視線が、そこに落ちる。

「触って」

高地の手が、一拍遅れて動いた。太ももに触れる。熱い。指が、ゆっくりと内側へ滑る。すでに十分に湿っているところへ、指先が到達する。凪の腰が、わずかに反応した。

「入れて」

言う。高地の指が、中へ入ってくる。一本。ゆっくりと動かす。凪は彼の肩に手を置き、その動きを受け止めた。

「もう一本」

従う。二本になる。曲がる角度が変わり、熱が鋭くなる。凪の息が、乱れた。それでも、彼の顔を見ていられる。高地は下から凪を見上げ、指を動かし続けている。表情はまだ崩していない。でも、目の奥が、明らかに熱を帯びている。

「口、も」

短く言った。高地の動きが、一瞬止まる。それから、彼はソファから滑り落ちるようにして、膝をついた。凪の脚の間に顔を寄せる。熱い息が、先に触れる。舌が、ゆっくりと這う。

「ん……」

声が、漏れた。高地の舌は、上手くない。丁寧でもない。ただ、凪が求めた場所を、求められた通りに動かしているだけだ。それが、却って奥を熱くした。

指と舌が重なる。凪は彼の髪に手を入れ、軽く掴んだ。離さない。動かさない。ただ、そこにいるように、固定する。高地は拒まない。言われた通りに、動き続ける。

熱が高くなっていく。足の先まで、力が入る。凪は彼の頭を押さえ、自分から腰を寄せた。奥で、何かが集まり始める。

「……そのまま」

声が掠れた。高地の動きが、わずかに速くなる。合わせてきている。言葉ではなく、体で。凪は目を閉じ、その感覚に身を預けた。自分の言葉でここまでさせた。拒む力を持った男を、命令に従わせた。この男は、魅力を感じていないのなら断ったはずだ。その事実が、快感の芯を熱くしていた。

波が、一気に来た。逃げる場所はなかった。凪は高地の髪を掴んだまま、腰を震わせた。声が、喉の奥で潰れる。内壁が、彼の指をきつく締め付けた。高地は、凪が落ち着くまで、動かなかった。

しばらくして、凪は彼の頭から手を離した。息が、まだ少し乱れている。高地は膝をついたまま、下から彼女を見ている。顔は汗ばみ、唇も少し濡れていた。それでも、まだ完全には崩れていない。

凪はそれを見て、満足した。

「……もういい」

短く言った。高地はゆっくりと立ち上がる。何も言わない。ただ、凪を見ている。

凪は自分のウェアを拾い、ゆっくりと着直した。スパッツを上げ、ブラを着け、シャツを着る。高地も、黙ってシャツを手に取る。着るかどうかは、聞いてこない。凪が何も言わないので、彼はただ持ったまま立っている。

「着ていい」

言った。高地がシャツを羽織る。ボタンを留めていく手が、まだ少しだけ硬い。

部屋の空気が、徐々に元へ戻っていく。なのに、凪の中は違った。満たされていた。施設では得られなかった種類の、静かな熱が、体の芯に残っている。

明日の練習では、また高地が止めてくるだろう。「予定よりオーバーだ」「肩が落ちてる」「これ以上は駄目だ」。いつも通りに。凪はそれを聞いて、また睨むだろう。それでも従う。

でも、今夜のことは、二人の間に残る。明日からは今まで通り。それは約束した。それでも、今夜、この男を自分の言葉で動かしたという事実は、消えない。この続きは取っておこう。

凪はバッグを手に取った。

「帰る」

高地がドアの方を見る。

「送る」

「いい」

「送る」

即答だった。凪は少しだけ彼を見て、それから小さく息を吐いた。

「……分かった」

廊下へ出る。エレベーターの前で並ぶ。高地は前を見ている。凪も、前を見ている。

次の大会。コートに立ったとき、この熱は残っているだろうか。残っていればいい、と凪は思った。勝つための熱として、使えればいい。

エレベーターが着く。扉が開く。二人とも、黙ったまま乗り込んだ。