04 / FICTION

SLENDER IV.com / 書き下ろし官能小説

声、出していいんだ

作品から着想を得た、書き下ろし官能小説です。

レビュー対象とは別の人物・設定で書かれた、出演者本人とは無関係の書き下ろし成人フィクションです。

創作であること

この物語は作品から着想を得た独立したフィクションです。出演者本人の心情や実際の出来事、レビュー対象の固有場面を示すものではありません。

この小説は、作者自身のアイデアと構想をもとに、AIの支援を受けながら文章化・推敲しています。

WRITTEN FOR SLENDER IV.com

私、立花莉央、二十三歳。

高校の頃は、廊下で先生に追いかけられて、駅前で朝までしゃべって、スカート丈より将来のほうが短そう、とよく言われた。

でも今はちゃんと働いている。家賃も払うし、遅刻したら店長に謝るし、ゴミの日だってだいたい守る。

だから、もう大人だ。

髪がまだ明るくて、爪が長くて、敬語が三分くらいしか続かないのは、まあ誤差だと思う。

ただ、高校の頃からずっと守っているルールが二つある。

男に誘われて断るのは、ビビって逃げたみたいでダサい。

それから、SEXのとき男の前でかわいい声を出すのは、感じさせられたって認めるみたいで負け。

私は、その二つをどちらも「男に媚びない女のやり方」だと思っていた。

だから、誘われれば行った。

さすがに生理的に無理な男は別として、特に好きじゃなくても、暇なら行く。断って、向こうに「怖くなったんだ」と思われるほうがムカつくからだ。

その代わり、している最中は声を出さない。

本当は、普通に気持ちいいときもある。

いや、かなり気持ちいいときもある。

でも顔は変えない。せいぜい少し息が乱れるくらいで、絶対に男を喜ばせるような声は出さない。

一度もイったことがないのは、そのせいなのかもしれない。AVとかも良く観るけれど、半分くらい演技だと思っていた。

実際にそんなことになるわけがない。

少なくとも、私にはない。

そう信じていた金曜の夜、私は京介とホテルにいた。

京介とは、友達の飲み会で知り合ってから、これまでに何度か寝ている。

彼氏ではない。

私も京介を好きではないし、京介も私に付き合おうとは言わない。その辺がちょうどよかった。

ベッドの脇で、京介が小さなボトルを取り出した。

「これ、使ったことある?」

透明な液体が入っていた。

「ない」

「じゃあ、やめとく?」

その言い方をされた瞬間、断るという選択肢がなくなった。

正確には、私が自分でなくした。

「は? 別に。使えば?」

京介はもう一度、私の顔を見た。

「本当に?」

「しつこ」

京介がボトルを傾ける。

透明な液体が掌に落ちる音なんてしないはずなのに、その瞬間だけは、やけに大きく聞こえた気がした。

京介の掌に落ちた液体は、思ったよりとろりとしていた。

鎖骨のくぼみにそれが触れた瞬間、思わず肩がすくんだ。冷たい、というより、ぬるくて、滑って、今までの体液ともローションとも違う。皮膚の上を這う感覚が、妙にくっきりしていた。

「冷たいんだけど」

「すぐ温まる」

京介は別に急がない。鎖骨から胸の上、脇の下、腕の内側へと、掌を滑らせていく。大事なところには、まだ触れない。わざと避けているのが分かって、腹が立った。

「そんな丁寧に塗んなよ。時間かかる」

「せっかち」

「うるさい」

口ではそう言った。内心では、ちょっと待って、と思っていた。肌の上を何かがゆっくり動くたびに、神経が起き上がってくる感じがする。今までだってキスも愛撫もしてきた。変わらないはずだった。なのに、掌の熱と液体のぬめりが重なるたび、身体は反応していた。

乳首に近づく指を、視線で追ってしまう。まだ触れていない。触れていないのに、そこだけ空気が薄い。

「そんな変わんないじゃん」

自分で言って、自分で嘘だと分かった。

京介は返事をせず、腹、腰、内腿の外側へと液体を広げた。腿の内側に掌が滑り込んできたとき、膝が勝手に閉じかけた。閉じた先で、京介の手首を挟んでしまう。ダサい。すぐ開いた。

「足、力入ってる」

「入ってない」

入ってた。

内腿を往復する掌は、大事なところのすぐ手前で必ず止まる。近づいて、外れる。また近づいて、外れる。息が浅くなる。浅くなっていることに気づいた瞬間、わざと長く吐いた。ばれないように。

乳首に指が触れた。

軽く、摘むでもなく、液の膜越しに輪郭をなぞるだけ。それでも背中が弓なりになった。小さく、喉の奥で音が鳴った。

「ん……」

違う。今のは違う。声じゃない。急だったから。空気が変な方向に出ただけ。

「今の、なに」

「なにでもない。喉」

京介は笑わなかった。ただ、同じ場所をもう一度、ゆっくりなぞった。今度は液が温まっていて、指の腹の感覚が直接くる。胸の先端が自分の意思と無関係に硬くなっているのが分かって、顔が熱い。熱いのは照明のせいだと思いたかった。

「全然、普通」

普通じゃなかった。内腿のいちばん柔らかいところを、親指が撫でる。鼠径部の際で止まって、また逃げる。逃げられるたびに、逃げられた場所がうるさい。感じている、という事実を知られるのが嫌だった。感じていないわけでは、とっくにない。

四つん這いにされたとき、髪が頬に張りついた。後ろから胸を両手で覆われる。液で滑る掌が、重みを乗せて揉む。逃げ場がない。前に倒れそうになって、肘をついた。

「ちょっと待っ……」

待って、ではない。形にならない言葉が、途中で潰れた。クリトリスに指が乗った瞬間、腰が跳ねた。跳ねた先で、自分の濡れている場所に自分の太ももが当たる。ぬるぬるしていた。ローションだけじゃない。分かってしまうのが、いちばん嫌だった。

「濡れてる」

「ローションだろ」

「こっちも」

指が、いきなり二本入ってきた。

「やっ——」

声が、短く、确实に出た。歯を噛んでも間に合わない。内壁が勝手に締まる。締まったことを、指の形ではっきり知られる。屈辱と、それ以上の熱が、同時にきた。

我慢する。声を殺す。顔を変えない。そう思って力を入れれば入れるほど、力を入れた場所に意識が集まって、集まれば集まるほど、指の動きがはっきりする。奥を擦られる。根元で広げられる。外ではクリトリスを、内では自分の熱を、同時に触られている。

「違う…の……」

「今の、なに」

「事故」

事故が、連続していた。

仰向けに戻されたとき、天井が近く見えた。京介が身を屈めて、乳首を含んだ。舌の熱が、液の膜を溶かしていく。下では二本の指が、曲がって、内側の一点を繰り返した。呼吸が追いつかない。追いつかせないように、自分が呼吸を浅くしている。浅くしたせいで、かえって音が出る。

「んっっ…あっ……」

喉が、勝手に開いた。

京介の動きが、そこで止まった。指が抜ける寸前まで浅くなって、乳首から口が離れる。熱だけが残る。残された熱が、かえって痛い。

「あれ。これ、好きなの」

「……は?」

「なんか、中もめっちゃ濡れてない?」

聞こえている。全部聞こえている。否定しなきゃ、と思った。いつもの台詞は、喉まで出ていた。どっちでも。別に。やめとく? って言われたら、そうだな、で済ませる。それが私だった。

「じゃあ、やめる?」

やめる、のあとが、妙に静かだった。指が完全に抜ける。胸の上の熱も引く。ぬるぬるした腿の内側だけが、空虚に冷えていく。

もっと続けたいというのが、自分で分かった。分かった瞬間、逃げたくなった。逃げたら、今までの自分が全部嘘になる。嘘にしたくないのに、嘘のまま終わるほうが、もっと無理だった。

「……止めんなって」

言った。自分が言った。耳が、遅れてそれを拾う。

「まだいいから」

顔が、耳まで熱い。撤回しようとした。できなかった。言葉の形を変えても、中身は同じだった。

「続けて」

京介は、少しだけ私の顔を見た。勝ち誇らない。教えない。ただ、戻ってきた。

乳首とクリトリスと、中。三箇所が、同時に動き出したとき、考える場所がなくなった。表面上の私は、まだ「普通」を探していた。内心は、もう短くしか動けない。

いや。 そこ。 今の、だめ。 だめ、じゃなくて。

「もっと」

自分の声だった。甘くない。作っていない。喉の奥から、そのまま出てきた。

「そこ……っ」

京介の肩に、長い爪が引っかかる。引き寄せた。自分が、引き寄せた。腰が、指に向かって動く。監視していた自分が、どこかに置いてきてしまった。変な顔をしていないか、声が出ていないか。その二つを数える余裕が、熱で溶けていた。代わりに、身体のどこが欲しいかが、やけにはっきりした。

自分から、腿を開いた。自分から、京介の手首を押さえて、深くさせた。自分から、耳の横で息を吐いた。負け、ではなかった。欲しいものを、欲しいと言っているだけだった。

「ぁ……っ、あっ、待っ——ないで」

矛盾した言葉が、そのまま通る。京介は待たなかった。指の腹が内側を掻き、親指が外側を潰し、舌が胸の先端を捉える。知らなかった場所が、連続して鳴る。これ以上はまずい、と一度思った。まずい、の中身が、初めての形をしていた。

「これ……んっ…んっ…んっ…」

声が、裏返った。怖かった。京介の動きが、一瞬、確認するように緩む。その緩みが、耐えられなかった。

「止めない…で」

選び直した。逃げないほうを。

白くなった。

思考が、途中で落ちる。落ちた先で、身体だけが縮んで、開いて、何かが外側へ溢れた。声を出しているのかどうか、分からない。自分が今、どの顔をしているのかも、分からない。分かるのは、腰の奥が、これまで一度も許さなかった場所まで、一気に持っていかれたということだけだった。

その最中に、京介が入ってきた。液と、自分のものとが混ざった熱が、奥まで来る。指とは違う、太さと重さ。イっている途中の身体が、挿入の刺激を拒否する暇もなく、次の波に吞まれた。激しいピストン。ベッドが短く鳴る。私の声が、それに重なる。重なっているのが自分だと、遅れて知る。

「あっ…あん、あっ、あっ、あっ…はっ…」

また、きていた。頭の芯が、白い。京介の背中に腕を回して、自分から食いしばるようにした。負けに見えてもいい。今は、これが欲しかった。

しばらく、天井が遠かった。

自分の呼吸がうるさい。

いや、それより前の自分の声のほうが、たぶん百倍うるさかった。

思い出した瞬間、顔が熱くなった。

消したい。

ホテルの防犯カメラから壁の染みまで、全部まとめて記憶を消したい。

「大丈夫?」

隣で京介が聞いた。

いつもの私なら、即答していた。

別に。 普通。 大したことない。

そのどれかで済ませて、何もなかった顔をしたはずだ。

「大丈夫」

そこまでは、いつもと同じだった。

でも、その後に言葉が続いた。

「……てか、今日、めっちゃよかった」

口にした瞬間、また顔が熱くなった。

けれど、もう取り消さなかった。

京介は変に笑ったり、勝ち誇った顔をしたりしなかった。

「そりゃよかった」

それだけ言って、水を飲んだ。

なんだ。

言ったところで、世界は別に終わらないらしい。

ま、色々大人になったな。