04 / FICTION

SLENDER IV.com / 書き下ろし官能小説

言葉の手前

作品から着想を得た、書き下ろし官能小説です。

レビュー対象とは別の人物・設定で書かれた、出演者本人とは無関係の書き下ろし成人フィクションです。

創作であること

この物語は作品から着想を得た独立したフィクションです。出演者本人の心情や実際の出来事、レビュー対象の固有場面を示すものではありません。

この小説は、作者自身のアイデアと構想をもとに、AIの支援を受けながら文章化・推敲しています。

WRITTEN FOR SLENDER IV.com

優斗なら、何を見せても平気だと思った。

好きではないから。

少なくとも、その夜の私はそう思っていた。

紬は、自分から好きになった男としか付き合ったことがなかった。

高校のときも、大学のときも、社会人になってからもそうだった。

いいなと思われて始まる恋より、自分の方が先に夢中になる恋が好きだった。

振り向いてほしい。

もっと好きになってほしい。

その人の特別になりたい。

恋をすると、紬はよく笑った。相手の好きな店を覚え、好きな映画を見て、連絡の頻度まで自然に合わせた。

周りから見れば、素直で感じのいい恋人だったと思う。

そして男たちはみんな、紬を似たような言葉で褒めた。

大人しい。

素直。

女の子らしい。

清楚。

紬も笑っていた。

そう見えているなら、それでよかった。

ひとつだけ、誰にも言わなかったことがある。

好きな人と二人きりになるほど、紬は自分を出せなくなった。

本当はもっと求められたかった。

少しくらい困らされてもいいと思っていた。

自分が次に何を望むのか、自分より先に気づかれてみたかった。

優しくされるのが嫌なのではない。

でも、何もかも自分に確認されて、自分が望んだ分だけが返ってくる時間には、いつもどこか物足りなさが残った。

そのたびに紬は言った。

「うん。大丈夫」

「これでいいよ」

そして相手が安心すると、自分も安心したふりをした。

自分から好きになった人に、

本当の私はこんな女なんだ。

と思われることの方が怖かった。

だから仕方がない。

そう思っていた。

拓海とは二年付き合った。

結婚すると思っていた。

正確には、紬の方だけがそう思っていた。

別れ話をされたのは、大学時代の映画研究会の上映会がある三日前だった。

好きな人ができた。

拓海はそう言った。

相手は同じ会社の女性だった。

紬は最初、何を言われているのか理解できなかった。

問い詰めた。

泣いた。

怒った。

どうして、と何度も聞いた。

二年間のどこが悪かったのか聞いた。

直すからと言った。

拓海は困った顔をしていた。

その顔を見ているうちに、紬はとうとう自分でも言いたくなかったことまで言った。

「私、何でもしてきたじゃん」

言った瞬間、自分で惨めになった。

何でもしてきた。

確かにそうだった。

でも、何でもしたのは拓海に頼まれたからではない。

嫌われたくなかったからだ。

最後まで、紬は自分から好きになった男に選んでもらうことばかり考えていた。

それでも拓海は去った。

三日後、紬は上映会に行った。

一人で部屋にいたくなかった。

上映された映画の内容は、ほとんど頭に入らなかった。

皆が笑えば笑った。

感想を求められれば、それらしいことを言った。

自分でも驚くほど普通にできた。

上映会が終わり、皆が駅へ向かう。

その輪の中に優斗がいた。

紬は、その背中を見ていた。

大学を卒業してから、優斗には三度告白されている。

全部断った。

嫌いではない。

むしろ一緒にいるのは楽だった。

ただ、恋愛の相手として見たことがなかった。

一度目のときも。

二度目のときも。

三度目のときも。

紬には別に好きな男がいた。

そして優斗は、そのことを全部知っている。

「優斗」

呼ぶと、彼が振り返った。

「何?」

「飲みたい」

優斗は少し驚いた。

「今から?」

「うん」

「みんな呼ぶ?」

「二人で」

優斗の表情が変わった。

ほんの少しだけ警戒したのが分かった。

それを見て、紬は思った。

逃げないでよ。

今日は。

二軒目の小さな店で、紬は最初の一杯を半分飲んだところで言った。

「振られた」

優斗の手が止まった。

「拓海に?」

「うん」

「……そっか」

その一言が、やけに優しかった。

それだけで紬の顔が崩れた。

「最悪」

笑おうとした。

失敗した。

「私、結婚すると思ってたんだよ」

涙が落ちた。

「あっちは思ってなかったみたい」

優斗は何も言わなかった。

「好きな人できたんだって」

声が震えた。

「二年だよ」

優斗が黙ってティッシュを差し出した。

その仕草まで腹が立った。

「何か言ってよ」

「何言えばいいか分かんない」

「ざまあみろって思わないの?」

「思わないよ」

「だって優斗、ずっと私のこと好きだったじゃん」

店の空気が一瞬止まったように感じた。

優斗は視線を下げた。

「それは関係ないだろ」

「関係あるよ」

「ない」

「ある」

紬は酒を飲んだ。

「私がこんなことになって、ちょっとくらい嬉しいでしょ」

「紬」

「何」

「今日はもう帰った方がいい」

その言葉で、何かが切れた。

「なんで?」

「かなり酔ってる」

「だから?」

「俺じゃなくて、友達呼んだ方がいい」

「嫌」

「じゃあ送る」

「嫌」

「紬」

「逃げるの?」

優斗が眉を寄せた。

「逃げるとかじゃなくて」

「好きなんでしょ」

優斗が黙った。

紬は泣きながら笑った。

自分でも最低だと思った。

でも止める気になれなかった。

「三回も言ったじゃん」

「今その話する?」

「今だからするの」

「明日後悔するぞ」

「するかもね」

「だったら」

「いいじゃん」

紬は乱暴に涙を拭った。

「今日くらい」

優斗がじっと紬を見る。

紬はその目から逃げなかった。

「今日ならいいよ」

優斗の表情から、今度こそ完全に笑みが消えた。

「そういう言い方するな」

「なんで」

「俺が喜ぶと思ってる?」

「思ってる」

「紬」

「だって好きなんでしょ」

最低。

分かっている。

優斗が自分を好きなのを利用している。

傷ついていることまで武器にしている。

明日になればなかったことにしたくなるかもしれない。

それでも今は、一人で惨めな女として帰るくらいなら、もっと惨めになってしまいたかった。

「忘れさせてよ」

紬は言った。

優斗は長いこと黙っていた。

「俺が嫌だって言ったら?」

その質問だけは、紬にも答えられなかった。

少しだけ視線を落とした。

「……そのときは帰る」

優斗は息を吐いた。

「本当に?」

「うん」

紬は頷いた。

しばらくして。

優斗が言った。

「じゃあ、俺も今日は帰したくない」

その瞬間、紬は妙に安心した。

今日の行為が切ないのは、自分だけではない。

それが分かったからだった。

優斗の部屋に入ってからも、紬は泣いていた。

泣きながら拓海の悪口を言った。

途中でまた庇った。

「でも本当はいい人だったの」

と言った直後に、

「でも最低」

と言った。

優斗は呆れたように笑った。

「どっちなんだよ」

「知らないよ」

「俺もわからんよ」

「優しくしてよ」

「十分優しくしてるだろ」

その言い方がおかしくて、紬は笑った。

泣きながら笑った。

優斗の前では、綺麗な失恋を演じる必要がなかった。

泣いてもいい。

喚いてもいい。

矛盾したことを言ってもいい。

どうせこの人は、自分が面倒な女だということくらい知っている。

そして今さら嫌われることも、少なくとも次の好きな男ができるまではないだろう。

その考えに気づいた瞬間、紬は自分のずるさに少しだけ寒気がした。

それでも優斗のそばから離れなかった。

やがて距離が近くなったとき、優斗は一度止まった。

紬は苛立った。

「何」

「いや」

「また考えてる」

「考えるだろ、普通」

「今日は考えないでよ」

「無理」

「じゃあ私が決める」

紬は自分から近づいた。

普段の自分なら絶対にしないほど、迷わなかった。

どう思われてもいい。

その言葉が、今まで閉じていた扉をひとつ開けた。

優斗が驚いている。

それを見るのが、少し楽しかった。

そこで初めて紬は気づいた。

自暴自棄になっているから大胆なのではない。

たぶん、この大胆さはずっと自分の中にあった。

出す相手がいなかっただけだ。

紬は自分から優斗の唇を奪った。優斗の手が腰に置かれた瞬間、紬はそれを自分の手でさらに下へずらした。

「触って」

優斗が黙ったまま従う。その沈黙が、いまの紬には都合がよかった。

好きな人の前では言えなかった言葉が、ここではそのまま出せる。その事実だけで、股間が熱く熟れる。

紬は優斗のベルトを外した。膝をつく。これも普段なら絶対に自分からしない姿勢だった。今はそれが、興奮の材料になった。

そそり勃ったそれを口に含んだ。熱と硬さを舌で確かめる。優斗の息が乱れる。紬はそれを聞きながら、ゆっくり奥まで咥えた。

喉の奥まで入れたとき、自分の中で何かが解けていく。自分が先に欲しがっている。

「気持ちいい?」

口にしたことがない言葉。優斗が小さく頷く。もう一度咥え、音を立てて舐める。優斗の太ももに力が入り、少し震えた。

「まだだめだよ」

紬は離れて、唇の端を拭った。

「じゃあ次、私のを舐めて」

命令する声が、自分でも意外なほど安定していた。

優斗が驚きを隠さないままその言葉を受け入れるのを見て、紬はさらに熱くなった。

この人は、自分を出しても逃げない。

紬は仰向けになり、自ら脚を開いた。優斗が顔を近づける。舌が触れた瞬間、紬は喉の奥で声を殺した。

好きな人にはされそうになると断っていた行為。本当は強引に続けてもらいたかった行為。

隠していたその部分を、いまは自分から差し出す。指で開いて、より深く押しつける。

「そこ。……もうちょっと上」

優斗が従う。紬は腰を浮かせた。自分で動きを指示している。それがよかった。求められているのではなく、自分が求めている。その逆転が、身体の芯を熱くした。

十分に濡れたところで、紬は優斗を押し倒した。跨がる。自分の手で導き、ゆっくり受け入れる。奥まで埋まっていく感覚を、息を止めて味わう。

完全に優斗のものを受け入れた紬は、自分から動きだす。

「どの動きが気持ちいい?」

優斗が答える前に、紬は腰を前後に動かした。浅く。深く。円を描くように。優斗の顔が歪むたびに、紬は同じ動きを繰り返した。

「言って」

「……奥まで入れて、ゆっくり動くとき」

「そうなんだ。…んっ…」

紬はその動きをした。同時に自らも快感を受け入れる。ただし、すぐに優斗が終わらないように、腰の動きを止め、浅くだけ擦った。

優斗の手が紬の腰を掴む。紬はそれを外した。

「まだ。いかないで」

焦らすのが、こんなに気持ちいいとは思わなかった。相手を困らせる。待たせる。好きな人には絶対できなかったことを、いまは楽しんでいる。下腹部が熱い。秘部が、挿入されたまま脈打っている。

紬は一度腰を上げて外した。再び口に含んだ。今度はより深く、より丁寧に。同時に、自分の指を秘部へ入れた。

フェラをしながら、自分でも弄る。一度ビデオで見た、いやらしい動き。

舌と指が別々のリズムを持つ。固いものが喉の奥に当たるたび、指で自分の内側を掻く。我慢できなかった。優斗の肉棒が限界まで膨らんでいるのはわかった。それでも口は離せなかった。

優斗の腰が跳ねた。熱いものが口の中に広がる。紬は全部受け止めた。飲み込んだあと、唇を離して息を整える。下はまだ指が入ったままだった。

紬は、いまだに指を動かしながら優斗を見つめる。優斗が申し訳なさそうな顔をする。

「だめだって言ったのに。でもいいよ」

再び口をつけ、柔らかくなったものを舌で起こす。同時に、体を返して69の形にした。優斗の舌が再び秘部に触れる。自分は口で、相手は舌で。互いの熱が混ざる。もう一度、完全に硬くなるまで紬は離さなかった。

「後ろから入れて」

四つん這いになる。優斗が後ろから沈めてくる。奥まで一気に埋まった。紬はシーツを掴んだ。叫ぶような喘ぎ声に変わる。

「ねえ、どれくらい気持ちいい?他の女よりどこがいい?」

優斗が黙る。紬は後ろへ腰を押しつけた。

「言って」

「……締まる。中が熱い。綺麗だ」

「もっと」

「声が興奮する。……もっと出して」

その言葉で、紬の内側が強く締まった。嫌われないように整えてきた自分ではなく、いま出している自分を、男が欲しいと言っている。それがたまらない。

「もっと激しくして」

優斗の動きが速くなる。紬はさらにせがんだ。

「強く突いて」

優斗が体勢を変える。紬が仰向けになる。深く、強く、何度も突かれる。紬は脚を絡めた。もう取り繕う言葉は出なかった。

「気持ちいい……いきそう……おかしくなりそう」

クリを自分の指で探り、優斗の手をそこに重ねた。

「触って。そこ、触って」

指が当たった瞬間、視界が白くなった。絶叫に近い声が出た。身体が反り、内側が痙攣する。止められない。優斗の背中に爪が食い込む。

優斗はその様子を見て、動きを乱し、深く埋めたまま果てた。熱が内側に広がる。紬はそれを感じながら、まだ小さく腰を動かしていた。

しばらくして、紬は優斗の胸元に額を預けていた。

泣いてはいなかった。

拓海のことも考えていなかった。

そのことに気づいて、自分で驚いた。

「ねえ」

「何」

「私さ」

言いかけて、笑った。

優斗が待っている。

紬は少し考えた。

「たぶん、前から知ってた」

「何を?」

「自分が、こういうの好きなの」

優斗は何も言わなかった。

「でも言えなかった」

「元彼達には?」

「誰にも」

「なんで」

紬は即答した。

「嫌われたくなかったから」

言葉にすると、あまりにも単純だった。

「好きな人ほど言えないんだよ。変な女だと思われたくないし」

「俺はいいんだ」

「……うん」

優斗が苦笑した。

「ひどいな」

「ひどいよ」

否定しなかった。

「優斗なら、最悪嫌われてもいいと思った」

「それ聞かされる俺の気持ち分かる?」

「分かんない」

「わ、怖」

「さっき私もそう思った」

二人とも笑った。

少しして紬が言った。

「でも途中から違った」

「何が?」

紬は答えるまで少し時間がかかった。

「嫌われてもいいから言えるんじゃなくて」

優斗を見る。

「優斗ならこれを受け入れてくれるって思った」

優斗は黙った。

紬はその沈黙が恥ずかしくなって、顔を逸らした。

「わたし淫乱?」

「わからない」

「でも、またしたい」

「うん」

「好きになったとかではないよ」

「それ必要?」

「大事だから」

自分でも残酷だと思う。

でも今は、綺麗に取り繕いたくなかった。

ただ初めて、優斗を失うことが嫌だと思った。

恋人という関係は儚すぎる。

少し軽蔑させたくらいの方が、この関係が続くかもしれない。

そして優斗もそれ以上何も求めなかった。

それがありがたかった。

翌朝、紬は早く目を覚ました。

優斗はまだ眠っていた。

昨日の服を着て、鏡の前で髪を直す。

酒はすっかり抜けていた。

だからこそ、昨夜やったことも言ったことも、全部はっきり覚えている。

「……やば」

小さく声が出た。

自分から優斗を誘った。

自分を好きなのを知っていて利用した。

最低だと思う。

少なくとも、立派ではない。

なのに。

後悔しているかと聞かれたら、それも違った。

部屋を出る前、眠っている優斗を見た。

「ごめん」

聞こえない声で言った。

それから少し考えて。

「でも、よろしくね」

と付け足した。