SLENDER IV.com / 書き下ろし官能小説
映像より近いところ
恋人と映像を見つめる、嫉妬の夜
仕事で撮られた映像を恋人と見始めた美月。画面の中の表情をめぐる、思いがけない嫉妬の先で……。
この物語は作品から着想を得た独立したフィクションです。出演者本人の心情や実際の出来事、レビュー対象の固有場面を示すものではありません。
この小説は、作者自身のアイデアと構想をもとに、AIの支援を受けながら文章化・推敲しています。
WRITTEN FOR SLENDER IV.com
「見てみたい」
直人がそう言ったのは、夕食のあとのことだった。
ソファの端でスマートフォンを眺めていた美月は、画面から目を上げた。
「何を?」
「美月が撮影してるところ」
言ってから、直人は少しだけ気まずそうに笑った。美月がグラビアの撮影を仕事にしていることは、付き合い始める前から知っていた。それでも、発売された映像を二人で見ることはなかった。
美月にとって撮影は仕事だった。カメラの前で笑い、求められた角度へ身体を向け、普段ならしない表情を作る。撮影が終われば衣装を戻し、スタッフへ挨拶をして帰る。
仕事の自分と、部屋で直人と過ごす自分は別だった。
「いいけど、面白くないと思うよ」
「面白いかどうかは、見てから決める」
「じゃあ、途中で変な顔しないでね」
「変な顔って?」
美月は答えず、棚から一枚を選んだ。
最初のうちは、本当にただの鑑賞会だった。
画面の中で美月が笑うたびに、本人が横から説明を入れる。
「ここ、風が強くて。髪が何回も口に入った」
「これは?」
「同じ動き、五回くらいやった。カメラの位置が決まらなくて」
直人は、撮影の裏話を面白がっていた。画面に映る完成された場面より、美月が語る失敗の方に笑った。
けれど、映像が後半へ進むにつれて、彼の返事が少なくなった。
美月はそのことに気づいていたが、しばらく何も言わなかった。画面の中の自分は、序盤より大胆な目をしていた。音楽に合わせて身体を動かし、カメラへ向けて、撮影用の笑みを浮かべている。
隣で、直人が小さく息を吐いた。
「このとき」
「うん?」
「ちょっと、本当にちょっと感じてない?」
美月は彼の顔を見た。
冗談を言っているようには見えなかった。
「そんなわけないじゃん」
「でも、最初と顔が違う」
「どれだけ人がいると思ってるの。カメラの横に監督がいて、その後ろに照明さんがいて、少し離れたところにメイクさんもいるんだよ」
「人数の話じゃなくて」
「仕事だよ」
美月は笑った。直人も一緒に笑うと思ったのに、彼は画面を見たままだった。
それが、少し面白かった。
普段の直人は、美月の仕事に口を出さない。撮影日を聞いても、何を着たのかまでは尋ねない。帰りが遅くなれば迎えに来るが、現場の男性スタッフについて探ることもなかった。
その直人が、画面の中の表情一つで拗ねている。
「もしかして、嫉妬してる?」
「してない」
「早かったね、答えるの」
「してないって」
美月が一時停止を押した。
部屋が急に静かになった。画面には、笑顔を作る美月の顔が止まっていた。
少しいたずらな顔で美月が直人の顔を見る。
「じゃあ、続き見よう」
リモコンへ伸ばした手を、直人が軽くつかんだ。
「やっぱり、ちょっと待って」
美月は笑いをこらえた。
「してるじゃん」
「少しだけ」
「何に?」
「画面の中の美月に」
その答えは、美月が想像していたものと少し違った。
スタッフでも、カメラマンでもない。画面の中で、自分の知らない表情をしている美月に嫉妬しているという。いまいち理解できなかった。
「同じ私だよ」
「分かってる。でも、俺の知らない顔をしてる」
「仕事の顔」
「本当に?」
美月は、もう一度、止まった画面を見た。
撮影の日のことは覚えている。長い時間をかけて同じ動きを繰り返し、最初はうまく作れなかった表情が、途中から自然に出せるようになった。現場の空気に慣れ、カメラの位置を気にせず動けるようになった。カメラがどこを映しているのかは理解できた。
全く何も感じなかったと言えば、嘘になるかもしれない。
けれど、それは直人が心配しているような意味ではなかった。
「本当に何にもないよ」
美月はそう言って、直人の肩へ頭を預けた。
「でも、ちょっと慣れてきてはいる」
「そこは認めるんだ」
「だって、最初よりうまくできたから」
「やっぱりその気になってる」
「演技としてね」
直人は納得していない顔をした。
美月は、その横顔を見ているうちに、胸の奥が少し温かくなるのを感じた。
嫉妬されることが嬉しい、という言い方はしたくなかった。直人をわざと不安にさせたいわけでもない。
ただ、画面の中の自分を見て、こんなふうに気持ちを乱してくれることが、思っていたより嬉しかった。
「ねえ」
美月は、直人の頬へ指を当てた。
「画面の私と、今ここにいる私、どっちが好き?」
「それ、聞く必要ある?」
「ある。今日は特に」
直人が何かを言う前に、美月は彼の手を取った。画面の中では、撮影用の笑顔が止まったままだった。
「こっちは、指示がなくても触れられるよ」
直人は一瞬だけ驚き、それから、ようやくいつもの顔で笑った。それでも指先は少し戸惑うように止まり、美月の手首の内側を確かめるだけだった。
美月はわざと彼の手を自分の胸の上へ導いた。薄手の部屋着の上からでも、熱が伝わってくる。直人が息を詰めるのを見て、美月は悪戯っぽく目を細めた。
「どう? 画面の私より、柔らかい?」
「……ずるいな」
「ずるいのはどっち? さっきからずっと、あっちの私ばっかり見てたじゃん」
美月はソファに深く座り直し、膝を少し開いて彼の手を腿の内側へ滑らせた。直人の指が躊躇って止まるたび、美月は自分から腰をずらして触れさせる。撮影のときのように脚を揃えたり、わざとカメラ目線で顎を上げたりして見せると、直人の喉が鳴った。
「今の、仕事っぽかった?」
「……ちょっと」
「じゃあ、これは?」
美月は部屋着の裾をたくし上げ、下着の縁へ彼の指を案内した。布の下はすでに熱く湿っていて、直人が触れた瞬間、美月は深く息を漏らした。ふざけていたはずなのに、画面の中で指示に従い腰を揺らしていた自分を思い出すと、身体の奥が勝手に疼いた。
直人はまだ戸惑いながらも、嫉妬と興奮が混ざった目で彼女を見ていた。美月はその視線を楽しむように、ゆっくりと下着をずらして、自分の指で割れ目をなぞった。
「現場じゃ、こんなことしないよ。監督に怒られる」
「するなよ」
「しないって」
直人が美月の手をつかみ、自らの手で美月に触れた。最初は遠慮がちに陰核を探り、濡れた入口をゆっくりとなぞる。美月は彼の肩に額を預けたまま腰を動かし、指が沈むたびに甘い声を漏らした。一本、二本と増える感触を味わいながら、美月は撮影の照明ではなく、この部屋の薄暗い明かりの中でだけ許される顔をした。
直人はまず唇で鎖骨を、それから胸の先端を丁寧に含んだ。美月は彼の髪を撫で、わざと撮影のときの微笑みを作っては、「これ、仕事の顔?」と囁いた。最初の二回、直人は真面目に首を振った。三回目にはもう答えず、代わりに指を深く入れて内側を探った。
美月は少し笑い、すぐに笑い声が甘い吐息に変わった。直人の親指が陰核を円を描くように擦り、中の指がゆっくりと出し入れされる。焦らされるように広げられ、ぬるぬると音が立つたび、美月は撮影では絶対に出せない声を漏らした。
「ねえ……。もっと、もう少し、こうして」
直人は頷き、彼女をソファに寝かせてから、下着を完全に外した。脚を開かされた美月は、画面の自分がカメラへ向けていた大胆な目を思い出して、自分から腰を持ち上げた。直人はそこへ口を寄せ、舌で丁寧に舐め上げた。熱い息と、ゆっくりと入口を這う舌先。美月は指をソファの生地に食い込ませ、膝を震わせた。
陰唇を吸っては離し、陰核を舌先で弾き、指を三本までゆっくりと受け入れさせた。美月の中はすでに十分に緩み、内太ももまで光っていた。直人が顔を上げると、美月は潤んだ目で彼のズボンに手を伸ばし、硬くなったものを掌で包んだ。
「こんなになってる。画面の私のせい?」
「……今の美月のせいだ」
美月は彼をソファに座らせ、自分から跨った。先端を割れ目に当て、ぬるぬると滑らせてから、ゆっくりと沈み込む。急がず、途中で止まって息を整え、また少しずつ受け入れる。直人の手が腰を支えるのも、押し込むのではなく待つ動きだった。根元まで収まったとき、二人とも長く息を吐いた。
美月は動かずに、中で脈打つ感触だけを味わった。それから円を描くように腰を揺らし、撮影のときよりずっと遅いリズムで上下した。直人は下から突き上げず、彼女の動きに合わせて深く埋めたまま待つ。結合部から溢れる音が部屋に小さく響く。
「これ……仕事っぽい?」
美月がまた聞くと、直人は答えずに彼女の唇を塞いだ。舌が絡み、腰の動きが自然に速くなる。ふざけていたつもりが、カメラの前で身体をくねらせていた記憶と今の熱が重なり、重なっていた。直人が低く唸り、美月の胸を掌で覆って親指で先端を転がす。
体位を変え、美月はうつ伏せに近い形でソファの背に手をついた。直人が後ろからゆっくり入り直し、奥まで届くたびに美月の背が反った。激しくはせず、引き抜くときも入れるときも長く、ぬるりと内側を撫でるような抽送。美月は顔を横に向け、止まった画面の自分をちらりと見て、声を裏返らせた。
「あっちの私……見てたでしょ。今は、こっち見て」
直人は彼女の顎を優しく向け直し、目を合わせたまま腰を深く沈めた。嫉妬が残っていた目が、次第にただ熱いものに変わっていく。美月はそれを見て、わざと脚を大きく開き、撮影での動きを見せつけるように腰を預けた。直人の動きが、確実に強くなった。
何度も同じ角度で奥を擦られる美月の声は、途切れ途切れになっていく。追い打ちをかけるように直人の手が陰核をゆっくり撫で、中と外から同時に責められる。絶頂は、何度も小さく盛り上がっては引いた。美月がそのたびに締めるたび、直人も息を荒くした。
「まだ……!もう少し、このまま」
直人は頷き、速度を落とす代わりに一回ごとの押し込みを深くした。美月は膝が笑い、肘をついて耐えた。汗で貼りついた髪を直人が耳の後ろへやり、首筋に唇を落とす。その優しさと、中を埋める熱が同時にきて、美月は長い吐息とともにさらに大きく達した。内側が痙攣するように絡みつき、直人はそこで初めて腰を止めて、彼女が落ち着くまで待った。
美月がまだ震えているうちに、直人は彼女を仰向けに戻し、脚を腕で抱えて再びゆっくりと出入りを始めた。敏感になった内側を丁寧に擦られ、美月が涙の出そうな声を出す。直人ももう限界が近い。埋め込む深さが増していた。
「美月……俺の知ってる美月」
その言葉で、美月はもう一度奥まで締めつけた。直人は低く呻いて彼女の中で放った。脈打つ感触を、美月は脚を絡めて受け止めた。
しばらく、二人は繋がったまま息だけを整えた。画面の中の笑顔は、まだ止まったままだった。美月はそれを見て小さく笑い、直人の背を撫でた。
「カメラはなし、照明もなし、指示もない」
直人が確かめるようにもう一度唇を落とすたび、美月はもう「仕事っぽかった?」とは聞かなかった。小さな棘は、いつの間にか互いを近くへ引き寄せる熱に変わっていた。
翌朝、テーブルの上には、昨夜止めたDVDが残っていた。
美月はコーヒーを入れながら、ソファで眠そうにしている直人を見た。
「昨日、あんなに嫉妬すると思わなかった」
「もう言わないで」
「画面の私に負けそうだった?」
「負けてない」
「何を基準に?」
直人は答えず、マグカップで顔を隠した。
美月は、その耳が少し赤くなっているのを見つけた。
「また一緒に見る?」
「しばらくいい」
「じゃあ、次の作品が出たら」
「それもしばらくいい」
美月は笑って、止まった画面へ目をやった。
あのとき本当に何もなかったのかと聞かれれば、答えは一つではなかった。仕事だから作った顔もある。現場に慣れて自然に動けた瞬間もある。その境目は、美月自身にもきれいには分けられない。
けれど、もう説明する必要はなかった。
画面の中の自分より近いところで、直人はまだ少し拗ねている。
美月はその隣に座り、彼の肩へ頭を乗せた。
「安心した?」
「何が?」
「今の私は、仕事の顔じゃないってこと」
直人は、マグカップを置いてから、美月の額へ短く口づけた。
「それは、最初から分かってる」
美月は返事の代わりに、もう一度笑った。
今度の笑顔を、直人は疑わなかった。