04 / FICTION

SLENDER IV.com / 書き下ろし官能小説

映像より近いところ

恋人と映像を見つめる、嫉妬の夜

仕事で撮られた映像を恋人と見始めた美月。画面の中の表情をめぐる、思いがけない嫉妬の先で……。

創作であること

この物語は作品から着想を得た独立したフィクションです。出演者本人の心情や実際の出来事、レビュー対象の固有場面を示すものではありません。

この小説は、作者自身のアイデアと構想をもとに、AIの支援を受けながら文章化・推敲しています。

WRITTEN FOR SLENDER IV.com

「見てみたい」

直人がそう言ったのは、夕食のあとのことだった。

ソファの端でスマートフォンを眺めていた美月は、画面から目を上げた。

「何を?」

「美月が撮影してるところ」

言ってから、直人は少しだけ気まずそうに笑った。美月がグラビアの撮影を仕事にしていることは、付き合い始める前から知っていた。それでも、発売された映像を二人で見ることはなかった。

美月にとって撮影は仕事だった。カメラの前で笑い、求められた角度へ身体を向け、普段ならしない表情を作る。撮影が終われば衣装を戻し、スタッフへ挨拶をして帰る。

仕事の自分と、部屋で直人と過ごす自分は別だった。

「いいけど、面白くないと思うよ」

「面白いかどうかは、見てから決める」

「じゃあ、途中で変な顔しないでね」

「変な顔って?」

美月は答えず、棚から一枚を選んだ。

最初のうちは、本当にただの鑑賞会だった。

画面の中で美月が笑うたびに、本人が横から説明を入れる。

「ここ、風が強くて。髪が何回も口に入った」

「これは?」

「同じ動き、五回くらいやった。カメラの位置が決まらなくて」

直人は、撮影の裏話を面白がっていた。画面に映る完成された場面より、美月が語る失敗の方に笑った。

けれど、映像が後半へ進むにつれて、彼の返事が少なくなった。

美月はそのことに気づいていたが、しばらく何も言わなかった。画面の中の自分は、序盤より大胆な目をしていた。音楽に合わせて身体を動かし、カメラへ向けて、撮影用の笑みを浮かべている。

隣で、直人が小さく息を吐いた。

「このとき」

「うん?」

「ちょっと、本当にちょっと感じてない?」

美月は彼の顔を見た。

冗談を言っているようには見えなかった。

「そんなわけないじゃん」

「でも、最初と顔が違う」

「どれだけ人がいると思ってるの。カメラの横に監督がいて、その後ろに照明さんがいて、少し離れたところにメイクさんもいるんだよ」

「人数の話じゃなくて」

「仕事だよ」

美月は笑った。直人も一緒に笑うと思ったのに、彼は画面を見たままだった。

それが、少し面白かった。

普段の直人は、美月の仕事に口を出さない。撮影日を聞いても、何を着たのかまでは尋ねない。帰りが遅くなれば迎えに来るが、現場の男性スタッフについて探ることもなかった。

その直人が、画面の中の表情一つで拗ねている。

「もしかして、嫉妬してる?」

「してない」

「早かったね、答えるの」

「してないって」

美月が一時停止を押した。

部屋が急に静かになった。画面には、笑顔を作る美月の顔が止まっていた。

少しいたずらな顔で美月が直人の顔を見る。

「じゃあ、続き見よう」

リモコンへ伸ばした手を、直人が軽くつかんだ。

「やっぱり、ちょっと待って」

美月は笑いをこらえた。

「してるじゃん」

「少しだけ」

「何に?」

「画面の中の美月に」

その答えは、美月が想像していたものと少し違った。

スタッフでも、カメラマンでもない。画面の中で、自分の知らない表情をしている美月に嫉妬しているという。いまいち理解できなかった。

「同じ私だよ」

「分かってる。でも、俺の知らない顔をしてる」

「仕事の顔」

「本当に?」

美月は、もう一度、止まった画面を見た。

撮影の日のことは覚えている。長い時間をかけて同じ動きを繰り返し、最初はうまく作れなかった表情が、途中から自然に出せるようになった。現場の空気に慣れ、カメラの位置を気にせず動けるようになった。カメラがどこを映しているのかは理解できた。

全く何も感じなかったと言えば、嘘になるかもしれない。

けれど、それは直人が心配しているような意味ではなかった。

「本当に何にもないよ」

美月はそう言って、直人の肩へ頭を預けた。

「でも、ちょっと慣れてきてはいる」

「そこは認めるんだ」

「だって、最初よりうまくできたから」

「やっぱりその気になってる」

「演技としてね」

直人は納得していない顔をした。

美月は、その横顔を見ているうちに、胸の奥が少し温かくなるのを感じた。

嫉妬されることが嬉しい、という言い方はしたくなかった。直人をわざと不安にさせたいわけでもない。

ただ、画面の中の自分を見て、こんなふうに気持ちを乱してくれることが、思っていたより嬉しかった。

「ねえ」

美月は、直人の頬へ指を当てた。

「画面の私と、今ここにいる私、どっちが好き?」

「それ、聞く必要ある?」

「ある。今日は特に」

直人が何かを言う前に、美月は彼の手を取った。画面の中では、撮影用の笑顔が止まったままだった。

「こっちは、指示がなくても触れられるよ」

直人は一瞬だけ驚き、それから、ようやくいつもの顔で笑った。それでも指先は少し戸惑うように止まり、美月の手首の内側を確かめるだけだった。

美月はわざと彼の手を自分の胸の上へ導いた。薄手の部屋着の上からでも、熱が伝わってくる。直人が息を詰めるのを見て、美月は悪戯っぽく目を細めた。

「どう? 画面の私より、柔らかい?」

「……ずるいな」

「ずるいのはどっち? さっきからずっと、あっちの私ばっかり見てたじゃん」

美月はソファに深く座り直し、膝を少し開いて彼の手を腿の内側へ滑らせた。直人の指が躊躇って止まるたび、美月は自分から腰をずらして触れさせる。撮影のときのように脚を揃えたり、わざとカメラ目線で顎を上げたりして見せると、直人の喉が鳴った。

「今の、仕事っぽかった?」

「……ちょっと」

「じゃあ、これは?」

美月は部屋着の裾をたくし上げ、下着の縁へ彼の指を案内した。布の下はすでに熱く湿っていて、直人が触れた瞬間、美月は深く息を漏らした。ふざけていたはずなのに、画面の中で指示に従い腰を揺らしていた自分を思い出すと、身体の奥が勝手に疼いた。

直人はまだ戸惑いながらも、嫉妬と興奮が混ざった目で彼女を見ていた。美月はその視線を楽しむように、ゆっくりと下着をずらして、自分の指で割れ目をなぞった。

「現場じゃ、こんなことしないよ。監督に怒られる」

「するなよ」

「しないって」

直人が美月の手をつかみ、自らの手で美月に触れた。最初は遠慮がちに陰核を探り、濡れた入口をゆっくりとなぞる。美月は彼の肩に額を預けたまま腰を動かし、指が沈むたびに甘い声を漏らした。一本、二本と増える感触を味わいながら、美月は撮影の照明ではなく、この部屋の薄暗い明かりの中でだけ許される顔をした。

直人はまず唇で鎖骨を、それから胸の先端を丁寧に含んだ。美月は彼の髪を撫で、わざと撮影のときの微笑みを作っては、「これ、仕事の顔?」と囁いた。最初の二回、直人は真面目に首を振った。三回目にはもう答えず、代わりに指を深く入れて内側を探った。

美月は少し笑い、すぐに笑い声が甘い吐息に変わった。直人の親指が陰核を円を描くように擦り、中の指がゆっくりと出し入れされる。焦らされるように広げられ、ぬるぬると音が立つたび、美月は撮影では絶対に出せない声を漏らした。

「ねえ……。もっと、もう少し、こうして」

直人は頷き、彼女をソファに寝かせてから、下着を完全に外した。脚を開かされた美月は、画面の自分がカメラへ向けていた大胆な目を思い出して、自分から腰を持ち上げた。直人はそこへ口を寄せ、舌で丁寧に舐め上げた。熱い息と、ゆっくりと入口を這う舌先。美月は指をソファの生地に食い込ませ、膝を震わせた。

陰唇を吸っては離し、陰核を舌先で弾き、指を三本までゆっくりと受け入れさせた。美月の中はすでに十分に緩み、内太ももまで光っていた。直人が顔を上げると、美月は潤んだ目で彼のズボンに手を伸ばし、硬くなったものを掌で包んだ。

「こんなになってる。画面の私のせい?」

「……今の美月のせいだ」

美月は彼をソファに座らせ、自分から跨った。先端を割れ目に当て、ぬるぬると滑らせてから、ゆっくりと沈み込む。急がず、途中で止まって息を整え、また少しずつ受け入れる。直人の手が腰を支えるのも、押し込むのではなく待つ動きだった。根元まで収まったとき、二人とも長く息を吐いた。

美月は動かずに、中で脈打つ感触だけを味わった。それから円を描くように腰を揺らし、撮影のときよりずっと遅いリズムで上下した。直人は下から突き上げず、彼女の動きに合わせて深く埋めたまま待つ。結合部から溢れる音が部屋に小さく響く。

「これ……仕事っぽい?」

美月がまた聞くと、直人は答えずに彼女の唇を塞いだ。舌が絡み、腰の動きが自然に速くなる。ふざけていたつもりが、カメラの前で身体をくねらせていた記憶と今の熱が重なり、重なっていた。直人が低く唸り、美月の胸を掌で覆って親指で先端を転がす。

体位を変え、美月はうつ伏せに近い形でソファの背に手をついた。直人が後ろからゆっくり入り直し、奥まで届くたびに美月の背が反った。激しくはせず、引き抜くときも入れるときも長く、ぬるりと内側を撫でるような抽送。美月は顔を横に向け、止まった画面の自分をちらりと見て、声を裏返らせた。

「あっちの私……見てたでしょ。今は、こっち見て」

直人は彼女の顎を優しく向け直し、目を合わせたまま腰を深く沈めた。嫉妬が残っていた目が、次第にただ熱いものに変わっていく。美月はそれを見て、わざと脚を大きく開き、撮影での動きを見せつけるように腰を預けた。直人の動きが、確実に強くなった。

何度も同じ角度で奥を擦られる美月の声は、途切れ途切れになっていく。追い打ちをかけるように直人の手が陰核をゆっくり撫で、中と外から同時に責められる。絶頂は、何度も小さく盛り上がっては引いた。美月がそのたびに締めるたび、直人も息を荒くした。

「まだ……!もう少し、このまま」

直人は頷き、速度を落とす代わりに一回ごとの押し込みを深くした。美月は膝が笑い、肘をついて耐えた。汗で貼りついた髪を直人が耳の後ろへやり、首筋に唇を落とす。その優しさと、中を埋める熱が同時にきて、美月は長い吐息とともにさらに大きく達した。内側が痙攣するように絡みつき、直人はそこで初めて腰を止めて、彼女が落ち着くまで待った。

美月がまだ震えているうちに、直人は彼女を仰向けに戻し、脚を腕で抱えて再びゆっくりと出入りを始めた。敏感になった内側を丁寧に擦られ、美月が涙の出そうな声を出す。直人ももう限界が近い。埋め込む深さが増していた。

「美月……俺の知ってる美月」

その言葉で、美月はもう一度奥まで締めつけた。直人は低く呻いて彼女の中で放った。脈打つ感触を、美月は脚を絡めて受け止めた。

しばらく、二人は繋がったまま息だけを整えた。画面の中の笑顔は、まだ止まったままだった。美月はそれを見て小さく笑い、直人の背を撫でた。

「カメラはなし、照明もなし、指示もない」

直人が確かめるようにもう一度唇を落とすたび、美月はもう「仕事っぽかった?」とは聞かなかった。小さな棘は、いつの間にか互いを近くへ引き寄せる熱に変わっていた。

翌朝、テーブルの上には、昨夜止めたDVDが残っていた。

美月はコーヒーを入れながら、ソファで眠そうにしている直人を見た。

「昨日、あんなに嫉妬すると思わなかった」

「もう言わないで」

「画面の私に負けそうだった?」

「負けてない」

「何を基準に?」

直人は答えず、マグカップで顔を隠した。

美月は、その耳が少し赤くなっているのを見つけた。

「また一緒に見る?」

「しばらくいい」

「じゃあ、次の作品が出たら」

「それもしばらくいい」

美月は笑って、止まった画面へ目をやった。

あのとき本当に何もなかったのかと聞かれれば、答えは一つではなかった。仕事だから作った顔もある。現場に慣れて自然に動けた瞬間もある。その境目は、美月自身にもきれいには分けられない。

けれど、もう説明する必要はなかった。

画面の中の自分より近いところで、直人はまだ少し拗ねている。

美月はその隣に座り、彼の肩へ頭を乗せた。

「安心した?」

「何が?」

「今の私は、仕事の顔じゃないってこと」

直人は、マグカップを置いてから、美月の額へ短く口づけた。

「それは、最初から分かってる」

美月は返事の代わりに、もう一度笑った。

今度の笑顔を、直人は疑わなかった。