04 / FICTION

SLENDER IV.com / 書き下ろし官能小説

ご馳走様

書き下ろし官能小説

レビュー対象とは別の人物・設定で書かれた、出演者本人とは無関係の書き下ろし成人フィクションです。

創作であること

この物語は作品から着想を得た独立したフィクションです。出演者本人の心情や実際の出来事、レビュー対象の固有場面を示すものではありません。

この小説は、作者自身のアイデアと構想をもとに、AIの支援を受けながら文章化・推敲しています。

WRITTEN FOR SLENDER IV.com

「ないない」

少し離れた席から声が聞こえた。声の主は本社から来ている人だった。名前は知っている。けれど役職までは知らない。店長がやけに丁寧に話していたから、たぶんそれなりに偉い人なのだろう。四十前後。スーツを脱いでシャツ一枚になっていても、妙に会社員らしく見えない。

「絶対モテるじゃないですか」

向かいに座っている先輩が笑う。

「いや、本当にないって」

「社員とか、店舗の子とかも?」

「ないない。そんな危ないことしないよ」

私はグラスを口元へ運びながら、そのやり取りを横目で見ていた。

嘘。

この人は絶対にある。根拠はない。でも分かる。年齢の割に男の色気が強すぎる。それに、さっきから先輩を見る目。話を聞いているふりをしながら、ときどき顔ではないところまで視線が落ちる。露骨ではない。むしろ、慣れているからこそ露骨にしない。

いける女か。いけない女か。そういう目だった。

確かに先輩は綺麗だ。髪が長くて、笑い方が柔らかい。いかにも男が好きそうな女。

だから余計に気に入らなかった。

私には来ない。そのことが。

「ねえ」

突然、先輩が私を見た。

「年上大丈夫って言ってたよね?」

話を振られた。本社の男もこちらを見る。初めて、まともに目が合った。

「まあ。年上の方が好きですけど」

「ほら」

先輩が笑う。男も笑った。

「何歳くらいまで?」

「人によります」

私はそこで少し間を置いた。

「でも、奥さんいらっしゃいますよね?」

男の表情がほんの一瞬止まった。

当たり。

先輩が「あー、それはアウト」と笑う。男は困ったように左手を持ち上げた。指輪がある。

「そう。だからないって言ってるの」

私は笑った。

「ですよね」

もちろん本心ではない。むしろ、いてくれた方がいい。その方が燃える。

私は、人のものにしか興味がない。

誰にも言ったことはない。友達にも、付き合った男にも。普通に告白されて、普通に付き合える男には、ほとんど興味が湧かない。誰かが大事にしているもの。触ってはいけないもの。それが、自分の方を向く瞬間が好きだった。

だから今、この男が先輩ばかり見ていることが気に入らない。

私は可愛い。これは自負ではなく、たぶん事実だ。店でもよく言われる。スタイルにも気を使っている。今日だって偶然を装って選んだ服ではない。胸元を露出しているわけではないのに、形だけは分かるTシャツ。長いのに、歩けば脚の線が出る柔らかいスカート。

見ようと思わなければ普通。でも一度気になれば、たぶん何度も見たくなる。そういう服が好きだった。

なのにこの男は、まだ私を見ない。

だったら。

見せればいい。

十分後、私は席を移った。偶然を装った。空いた皿をまとめるため。先輩に飲み物を渡すため。誰かの質問に答えるため。そのたび少しずつ、男との距離を縮めた。

最初に変化があったのは、私がテーブルの向こうにある取り皿を取ったときだった。視線を感じた。ほんの一瞬。顔を上げれば、男は別のところを見ていた。

やっぱり。

口元が緩みそうになる。私は何も知らない顔で席に戻った。

それからは簡単だった。

脚を組み替える。髪を耳にかける。話を聞くために少し身を寄せる。全部、誰でもする仕草。ただし相手が見ていると分かってやるのと、そうでないのとでは意味が違う。

男の視線が増えていく。

一回。二回。三回。

私は数えていた。先輩の話を聞きながら。

「何笑ってるの?」

先輩が言った。

「え?」

「さっきから楽しそう」

「酔ってるだけです」

嘘。

楽しいのは、男がもう先輩ではなく私を見ているからだ。

宴会も終盤になった。店内はうるさく、席もかなり崩れていた。隣のテーブルではすでに二次会の話が始まっている。

私は男の隣にいた。周囲は酔ってざわついている。誰も、こちらの足元までは見ていない。

私はグラスを置き、ゆっくりと脚を組み替えた。その動きに合わせて、ロングスカートの裾を、自分の太ももまで静かに引き上げた。布が腿の内側に沿って上がる感触。男の視線が、すぐに落ちるのが分かった。

顔は上げない。私は先輩の空いたグラスを整えながら、わざとらしくもない速さで、さらに数センチだけ上げた。白い肌が、この角度からなら彼にだけ見える。

男の喉が、小さく動いた。

私は何も言わず、グラスを口元へ運んだ。視線だけを、さりげなく彼に向ける。男は一瞬、目を逸らした。それから、また戻してきた。

私は少し身を乗り出すようにして、取り皿を手前に引き寄せた。そのとき、男の手がテーブルの下で動いた。私の太ももに、指先が触れる。熱い。酒で温まった掌ではない。もっと意図的な温度だった。

私は脚を引かなかった。むしろ、わずかに彼の方へ開いた。指が腿の内側を、ゆっくりと撫でる。布の下を、探るように進んでくる。

それ以上は、させない。

私は静かに脚を閉じ、彼の手を太ももで軽く挟んだ。男の指が止まった。私は彼を見て、小さく首を横に振った。周囲に聞こえない声で、唇だけを動かす。

「そこまでは、駄目です」

男の目が、一瞬だけ鋭くなった。それから、ゆっくりと手を引く。私はスカートを元に戻し、何事もなかったようにグラスを傾けた。

十分ほどして、男がトイレへ立つふりをして席を外した。私も少し遅れて立ち上がった。廊下の角で、彼が待っていた。

「さっきの……」

「何もしてませんよ」

私は笑った。そして、周囲に人がいないことを確認してから、一歩だけ近づいた。彼のシャツの裾に、指先を滑らせる。ベルトの上。熱を確かめるように、掌を軽く押し当てた。

硬い。

はっきりと分かった。私は指を少し動かして、その硬さを確かめたまま、彼の顔を見た。耳まで赤くなっている。目は逸らせない。呼吸だけが、少し荒い。

「酒のせいじゃないですよね」

男は何も言わなかった。私は満足して手を引き、何事もなかったように宴会場へ戻った。

そこからは、私が何もしなくても男の方が意識していた。

目が合う。すぐ逸れる。しばらくするとまた見る。

面白い。

私はそのたびに、少しだけ笑った。何も約束していない。なのに二人だけが、さっきの廊下の続きを知っている。

周りには店長もいる。社員もいる。先輩もいる。男は本社の人間。私は店舗のアルバイト。

こんな場所で余計なことが知られたら、困るのはどう考えても向こうだ。

だから楽しかった。

触れられない。でも見たい。近づきたい。

その葛藤が、男の顔に出始めていた。

私はスマートフォンを取り出した。メモを開く。数字を打つ。自分の番号。

そして男がトイレへ立った少し後に、私も席を立った。

廊下ですれ違う。声はかけない。ただスマートフォンの画面を一瞬だけ見せた。

男が立ち止まった。

私は歩き続けた。

数秒後、ポケットの中でスマートフォンが震えた。

知らない番号から、一度だけ着信。

登録した。

解散したのは十一時を過ぎていた。

店長たちは駅の方へ歩いていった。私は先輩と途中まで一緒だった。

「送ろうか?」

「大丈夫です」

「本当に?」

「近いので」

嘘だった。

先輩と別れてから、スマートフォンを見る。

メッセージが一つ。

『どこ?』

私はホテルの名前だけ送った。それから少し考えて、

『来るなら一人で』

と付け足した。

返事はなかった。

でも十五分後、ホテルのロビーに、あの男が入ってきた。もうネクタイを外していた。

私を見るなり言った。

「本当に来るとは思わなかった」

「私も」

「嘘だろ」

私は笑った。

「バレました?」

男は私をしばらく見ていた。

「怖い子だな」

「よく言われます」

「絶対言われてないよね」

その通りだった。

私を知っている人は、たぶん誰一人そんなことを言わない。真面目。大人しい。感じがいい。清楚。だいたいその辺りだ。

私はエレベーターのボタンを押した。

扉が開く。

男はまだ少し迷っていた。

私は先に乗った。

「来ないんですか?」

「……君さ」

「はい」

「明日になって、変なこと言わない?」

私は笑った。

「それ心配するくらいなら、帰った方がいいですよ」

男は数秒黙った。

そして乗った。

扉が閉じた。

部屋に入ると、私はまず男をベッドの端に座らせた。自分は少し離れた位置に立ち、ゆっくりとスカートの裾に手をかける。

「見たいですか?」

男が私を見上げる。答えは、目に出ていた。

「はい、とおっしゃってください」

「……見たい」

私はスカートを、太ももまで静かにたくし上げた。パンティが見える位置まで。男の視線が、すぐに落ちる。

「触りたいですか?」

「触りたい」

「じゃあ、触ってください。ただし、私がいいと言うところまでです」

男の手が、私の太ももに触れた。熱い。宴会のときより、はっきりと意図がこもっている。指が内側を撫で、パンティの縁まで来る。

「そこは、まだです」

私は彼の手を軽く押さえた。男の呼吸が乱れるのが分かった。

「もう、我慢できないんじゃないですか」

聞くと、男は小さく息を吐いた。

「……してる」

私は彼の前に膝をつき、ベルトに手をかけた。外して、ジッパーを下ろす。下着の上から硬さを確かめる。もう、十分に熱を持っていた。

「脱がせますよ」

下着をずらし、熱いものを露出させる。男の腹に力が入る。私はそれを手で包み、ゆっくりと上下させた。

「感じてますか?」

「感じてる」

「声は出さないでください。私の方が、恥ずかしいですから」

男が唇を噛む。私は彼のものをゆっくりと舐め、先端を含んだ。唾液が絡み、熱が舌に伝わる。男の太ももが緊張する。それでも、声は出さない。私の指示通り。

数分立ったところで、私は口を離し、自分のパンティをずらした。すでに湿っている。男の前に立ち、脚を少し開いて見せる。

「舐めてください」

男が前に出て、顔を寄せる。熱い息が先に触れる。舌が、ゆっくりと這った。上手くない。でも、私の言葉に従っているという事実が、奥を熱くする。

「もう少し、上……はい、そこです」

指示を出しながら、私は彼の髪に手を置いた。離さない。動かさない。ただ、そこにいるように固定する。男は言われた通りに動く。指も加えてくる。熱が、じわじわと高くなっていく。

「もう、いいです」

私は彼を押し、ベッドに仰向けにさせた。自分から跨り、コンドームを彼の手に渡す。

「付けてください」

男が付ける。私はそれを確認してから、ゆっくりと沈み込んだ。熱いものが、中へ入ってくる。息が止まった。

腰を動かす。自分のペースで。上下に、確かめるように。男の手が私の腰に回る。

「動いていいですよ。ただし、私が止めたら止まってください」

男が腰を動かし始める。深く、ゆっくりと。私はそれを受け止めながら、自分の胸に手を当てた。

「ん……」

声が、少し漏れる。男の動きが、わずかに速くなる。

「止めて」

すぐに止めた。私は彼から外れ、隣に座って自分の指を中へ滑らせた。彼の目の前で、ゆっくりと動かす。湿った音が、静かな部屋に小さく響く。

「見ててください」

男の視線が、私の指に釘付けになる。私はそれを意識しながら、自分の快感を積み上げていく。予定とは違い、意思に反して腰が動く。我慢できずに息が乱れる。

私も興奮していた。

「あ……っ」

声を殺せずに、絶頂した。指が、内側で痙攣する感触を覚える。男はそれを、黙って見ていた。

「触らないでください」

男が自分のものを触ろうとした手を、私は止めた。

「ダメです」

私は再び彼のものを口に含んだ。熱い。脈打っている。舌で裏をなぞり、深く含んでは離す。男の腹が波打つ。声は出さないが、息だけが荒い。

「もう一度」

跨り、沈める。今度は最初から深く。腰を動かす速度を上げる。男の手が私の腰を掴む。力が強い。

「我慢できないんですか?」

聞くと、男は苦しそうに息を吐いた。

「……できない」

「奥さんは、こんなことしないですよね」

言った瞬間、男の動きが乱れた。私はそれを見て、さらに腰を沈めた。奥で、熱がぶつかる。

「んっ……あっ……」

自分の声が、漏れてしまう。隠していたいが、止められない。男の動きも、速くなっている。お互い、もう余裕がない。

「あっ…あっ…一緒に!」

言うと、男が大きく腰を突き上げた。私も同時に、奥で何かを手放した。視界が白く沈む。内壁が、彼のものをきつく締め付ける。男が低く呻く。私は彼の脈動が完全に収束るまで、腰を動かし、絞り続けた。薄い膜越しに熱が伝わって、やがて満足感へと変わった。

しばらく、二人とも動けなかった。二人へ与えられた快楽はそれだけの強さがあった。

やがて男が上体を起こし、私の唇に自分の唇を重ねた。深く、長いキスだった。舌が絡み、熱が混ざる。私はそれを受け入れた。拒絶しなかった。ただ、十分だと判断したところで、静かに顔を離した。

男が私を見る。まだ、何か言いたそうだった。

私は彼の上から降り、床に落ちていた服を拾った。下着を上げ、スカートを直し、Tシャツの裾を整える。鏡の前で髪を軽く撫でる。化粧は、ほとんど崩れていなかった。

「帰るの?」

「はい」

「もう?」

「朝までいる理由あります?」

少し意地悪だったかもしれない。

男は苦笑した。

「本当にすごいな、君」

「何がですか?」

「見た目と中身が違いすぎる」

私はバッグを肩にかけ、ドアに向かう。男が後ろから名前を呼んだ。

振り返る。

「また連絡してもいい?」

少し考えるふりをした。本当は、もう答えは決まっていた。

「この美味しさを保っていられる限りは」

男が呆れた顔をした。

私は笑顔を作った。

そして最後に、軽く頭を下げた。店で客を見送るときとほとんど同じ顔で。

「ご馳走様でした」

扉を閉めた。

廊下を歩きながら、少しだけ笑った。

結局、先輩より先にこちらを向かせた。

それだけで、今日は十分だった。