SLENDER IV.com / 書き下ろし官能小説
ご馳走様
書き下ろし官能小説
レビュー対象とは別の人物・設定で書かれた、出演者本人とは無関係の書き下ろし成人フィクションです。
この物語は作品から着想を得た独立したフィクションです。出演者本人の心情や実際の出来事、レビュー対象の固有場面を示すものではありません。
この小説は、作者自身のアイデアと構想をもとに、AIの支援を受けながら文章化・推敲しています。
WRITTEN FOR SLENDER IV.com
「ないない」
少し離れた席から声が聞こえた。声の主は本社から来ている人だった。名前は知っている。けれど役職までは知らない。店長がやけに丁寧に話していたから、たぶんそれなりに偉い人なのだろう。四十前後。スーツを脱いでシャツ一枚になっていても、妙に会社員らしく見えない。
「絶対モテるじゃないですか」
向かいに座っている先輩が笑う。
「いや、本当にないって」
「社員とか、店舗の子とかも?」
「ないない。そんな危ないことしないよ」
私はグラスを口元へ運びながら、そのやり取りを横目で見ていた。
嘘。
この人は絶対にある。根拠はない。でも分かる。年齢の割に男の色気が強すぎる。それに、さっきから先輩を見る目。話を聞いているふりをしながら、ときどき顔ではないところまで視線が落ちる。露骨ではない。むしろ、慣れているからこそ露骨にしない。
いける女か。いけない女か。そういう目だった。
確かに先輩は綺麗だ。髪が長くて、笑い方が柔らかい。いかにも男が好きそうな女。
だから余計に気に入らなかった。
私には来ない。そのことが。
「ねえ」
突然、先輩が私を見た。
「年上大丈夫って言ってたよね?」
話を振られた。本社の男もこちらを見る。初めて、まともに目が合った。
「まあ。年上の方が好きですけど」
「ほら」
先輩が笑う。男も笑った。
「何歳くらいまで?」
「人によります」
私はそこで少し間を置いた。
「でも、奥さんいらっしゃいますよね?」
男の表情がほんの一瞬止まった。
当たり。
先輩が「あー、それはアウト」と笑う。男は困ったように左手を持ち上げた。指輪がある。
「そう。だからないって言ってるの」
私は笑った。
「ですよね」
もちろん本心ではない。むしろ、いてくれた方がいい。その方が燃える。
私は、人のものにしか興味がない。
誰にも言ったことはない。友達にも、付き合った男にも。普通に告白されて、普通に付き合える男には、ほとんど興味が湧かない。誰かが大事にしているもの。触ってはいけないもの。それが、自分の方を向く瞬間が好きだった。
だから今、この男が先輩ばかり見ていることが気に入らない。
私は可愛い。これは自負ではなく、たぶん事実だ。店でもよく言われる。スタイルにも気を使っている。今日だって偶然を装って選んだ服ではない。胸元を露出しているわけではないのに、形だけは分かるTシャツ。長いのに、歩けば脚の線が出る柔らかいスカート。
見ようと思わなければ普通。でも一度気になれば、たぶん何度も見たくなる。そういう服が好きだった。
なのにこの男は、まだ私を見ない。
だったら。
見せればいい。
*
十分後、私は席を移った。偶然を装った。空いた皿をまとめるため。先輩に飲み物を渡すため。誰かの質問に答えるため。そのたび少しずつ、男との距離を縮めた。
最初に変化があったのは、私がテーブルの向こうにある取り皿を取ったときだった。視線を感じた。ほんの一瞬。顔を上げれば、男は別のところを見ていた。
やっぱり。
口元が緩みそうになる。私は何も知らない顔で席に戻った。
それからは簡単だった。
脚を組み替える。髪を耳にかける。話を聞くために少し身を寄せる。全部、誰でもする仕草。ただし相手が見ていると分かってやるのと、そうでないのとでは意味が違う。
男の視線が増えていく。
一回。二回。三回。
私は数えていた。先輩の話を聞きながら。
「何笑ってるの?」
先輩が言った。
「え?」
「さっきから楽しそう」
「酔ってるだけです」
嘘。
楽しいのは、男がもう先輩ではなく私を見ているからだ。
*
宴会も終盤になった。店内はうるさく、席もかなり崩れていた。隣のテーブルではすでに二次会の話が始まっている。
私は男の隣にいた。周囲は酔ってざわついている。誰も、こちらの足元までは見ていない。
私はグラスを置き、ゆっくりと脚を組み替えた。その動きに合わせて、ロングスカートの裾を、自分の太ももまで静かに引き上げた。布が腿の内側に沿って上がる感触。男の視線が、すぐに落ちるのが分かった。
顔は上げない。私は先輩の空いたグラスを整えながら、わざとらしくもない速さで、さらに数センチだけ上げた。白い肌が、この角度からなら彼にだけ見える。
男の喉が、小さく動いた。
私は何も言わず、グラスを口元へ運んだ。視線だけを、さりげなく彼に向ける。男は一瞬、目を逸らした。それから、また戻してきた。
私は少し身を乗り出すようにして、取り皿を手前に引き寄せた。そのとき、男の手がテーブルの下で動いた。私の太ももに、指先が触れる。熱い。酒で温まった掌ではない。もっと意図的な温度だった。
私は脚を引かなかった。むしろ、わずかに彼の方へ開いた。指が腿の内側を、ゆっくりと撫でる。布の下を、探るように進んでくる。
それ以上は、させない。
私は静かに脚を閉じ、彼の手を太ももで軽く挟んだ。男の指が止まった。私は彼を見て、小さく首を横に振った。周囲に聞こえない声で、唇だけを動かす。
「そこまでは、駄目です」
男の目が、一瞬だけ鋭くなった。それから、ゆっくりと手を引く。私はスカートを元に戻し、何事もなかったようにグラスを傾けた。
十分ほどして、男がトイレへ立つふりをして席を外した。私も少し遅れて立ち上がった。廊下の角で、彼が待っていた。
「さっきの……」
「何もしてませんよ」
私は笑った。そして、周囲に人がいないことを確認してから、一歩だけ近づいた。彼のシャツの裾に、指先を滑らせる。ベルトの上。熱を確かめるように、掌を軽く押し当てた。
硬い。
はっきりと分かった。私は指を少し動かして、その硬さを確かめたまま、彼の顔を見た。耳まで赤くなっている。目は逸らせない。呼吸だけが、少し荒い。
「酒のせいじゃないですよね」
男は何も言わなかった。私は満足して手を引き、何事もなかったように宴会場へ戻った。
*
そこからは、私が何もしなくても男の方が意識していた。
目が合う。すぐ逸れる。しばらくするとまた見る。
面白い。
私はそのたびに、少しだけ笑った。何も約束していない。なのに二人だけが、さっきの廊下の続きを知っている。
周りには店長もいる。社員もいる。先輩もいる。男は本社の人間。私は店舗のアルバイト。
こんな場所で余計なことが知られたら、困るのはどう考えても向こうだ。
だから楽しかった。
触れられない。でも見たい。近づきたい。
その葛藤が、男の顔に出始めていた。
私はスマートフォンを取り出した。メモを開く。数字を打つ。自分の番号。
そして男がトイレへ立った少し後に、私も席を立った。
廊下ですれ違う。声はかけない。ただスマートフォンの画面を一瞬だけ見せた。
男が立ち止まった。
私は歩き続けた。
数秒後、ポケットの中でスマートフォンが震えた。
知らない番号から、一度だけ着信。
登録した。
*
解散したのは十一時を過ぎていた。
店長たちは駅の方へ歩いていった。私は先輩と途中まで一緒だった。
「送ろうか?」
「大丈夫です」
「本当に?」
「近いので」
嘘だった。
先輩と別れてから、スマートフォンを見る。
メッセージが一つ。
『どこ?』
私はホテルの名前だけ送った。それから少し考えて、
『来るなら一人で』
と付け足した。
返事はなかった。
でも十五分後、ホテルのロビーに、あの男が入ってきた。もうネクタイを外していた。
私を見るなり言った。
「本当に来るとは思わなかった」
「私も」
「嘘だろ」
私は笑った。
「バレました?」
男は私をしばらく見ていた。
「怖い子だな」
「よく言われます」
「絶対言われてないよね」
その通りだった。
私を知っている人は、たぶん誰一人そんなことを言わない。真面目。大人しい。感じがいい。清楚。だいたいその辺りだ。
私はエレベーターのボタンを押した。
扉が開く。
男はまだ少し迷っていた。
私は先に乗った。
「来ないんですか?」
「……君さ」
「はい」
「明日になって、変なこと言わない?」
私は笑った。
「それ心配するくらいなら、帰った方がいいですよ」
男は数秒黙った。
そして乗った。
扉が閉じた。
*
部屋に入ると、私はまず男をベッドの端に座らせた。自分は少し離れた位置に立ち、ゆっくりとスカートの裾に手をかける。
「見たいですか?」
男が私を見上げる。答えは、目に出ていた。
「はい、とおっしゃってください」
「……見たい」
私はスカートを、太ももまで静かにたくし上げた。パンティが見える位置まで。男の視線が、すぐに落ちる。
「触りたいですか?」
「触りたい」
「じゃあ、触ってください。ただし、私がいいと言うところまでです」
男の手が、私の太ももに触れた。熱い。宴会のときより、はっきりと意図がこもっている。指が内側を撫で、パンティの縁まで来る。
「そこは、まだです」
私は彼の手を軽く押さえた。男の呼吸が乱れるのが分かった。
「もう、我慢できないんじゃないですか」
聞くと、男は小さく息を吐いた。
「……してる」
私は彼の前に膝をつき、ベルトに手をかけた。外して、ジッパーを下ろす。下着の上から硬さを確かめる。もう、十分に熱を持っていた。
「脱がせますよ」
下着をずらし、熱いものを露出させる。男の腹に力が入る。私はそれを手で包み、ゆっくりと上下させた。
「感じてますか?」
「感じてる」
「声は出さないでください。私の方が、恥ずかしいですから」
男が唇を噛む。私は彼のものをゆっくりと舐め、先端を含んだ。唾液が絡み、熱が舌に伝わる。男の太ももが緊張する。それでも、声は出さない。私の指示通り。
数分立ったところで、私は口を離し、自分のパンティをずらした。すでに湿っている。男の前に立ち、脚を少し開いて見せる。
「舐めてください」
男が前に出て、顔を寄せる。熱い息が先に触れる。舌が、ゆっくりと這った。上手くない。でも、私の言葉に従っているという事実が、奥を熱くする。
「もう少し、上……はい、そこです」
指示を出しながら、私は彼の髪に手を置いた。離さない。動かさない。ただ、そこにいるように固定する。男は言われた通りに動く。指も加えてくる。熱が、じわじわと高くなっていく。
「もう、いいです」
私は彼を押し、ベッドに仰向けにさせた。自分から跨り、コンドームを彼の手に渡す。
「付けてください」
男が付ける。私はそれを確認してから、ゆっくりと沈み込んだ。熱いものが、中へ入ってくる。息が止まった。
腰を動かす。自分のペースで。上下に、確かめるように。男の手が私の腰に回る。
「動いていいですよ。ただし、私が止めたら止まってください」
男が腰を動かし始める。深く、ゆっくりと。私はそれを受け止めながら、自分の胸に手を当てた。
「ん……」
声が、少し漏れる。男の動きが、わずかに速くなる。
「止めて」
すぐに止めた。私は彼から外れ、隣に座って自分の指を中へ滑らせた。彼の目の前で、ゆっくりと動かす。湿った音が、静かな部屋に小さく響く。
「見ててください」
男の視線が、私の指に釘付けになる。私はそれを意識しながら、自分の快感を積み上げていく。予定とは違い、意思に反して腰が動く。我慢できずに息が乱れる。
私も興奮していた。
「あ……っ」
声を殺せずに、絶頂した。指が、内側で痙攣する感触を覚える。男はそれを、黙って見ていた。
「触らないでください」
男が自分のものを触ろうとした手を、私は止めた。
「ダメです」
私は再び彼のものを口に含んだ。熱い。脈打っている。舌で裏をなぞり、深く含んでは離す。男の腹が波打つ。声は出さないが、息だけが荒い。
「もう一度」
跨り、沈める。今度は最初から深く。腰を動かす速度を上げる。男の手が私の腰を掴む。力が強い。
「我慢できないんですか?」
聞くと、男は苦しそうに息を吐いた。
「……できない」
「奥さんは、こんなことしないですよね」
言った瞬間、男の動きが乱れた。私はそれを見て、さらに腰を沈めた。奥で、熱がぶつかる。
「んっ……あっ……」
自分の声が、漏れてしまう。隠していたいが、止められない。男の動きも、速くなっている。お互い、もう余裕がない。
「あっ…あっ…一緒に!」
言うと、男が大きく腰を突き上げた。私も同時に、奥で何かを手放した。視界が白く沈む。内壁が、彼のものをきつく締め付ける。男が低く呻く。私は彼の脈動が完全に収束るまで、腰を動かし、絞り続けた。薄い膜越しに熱が伝わって、やがて満足感へと変わった。
しばらく、二人とも動けなかった。二人へ与えられた快楽はそれだけの強さがあった。
やがて男が上体を起こし、私の唇に自分の唇を重ねた。深く、長いキスだった。舌が絡み、熱が混ざる。私はそれを受け入れた。拒絶しなかった。ただ、十分だと判断したところで、静かに顔を離した。
男が私を見る。まだ、何か言いたそうだった。
私は彼の上から降り、床に落ちていた服を拾った。下着を上げ、スカートを直し、Tシャツの裾を整える。鏡の前で髪を軽く撫でる。化粧は、ほとんど崩れていなかった。
「帰るの?」
「はい」
「もう?」
「朝までいる理由あります?」
少し意地悪だったかもしれない。
男は苦笑した。
「本当にすごいな、君」
「何がですか?」
「見た目と中身が違いすぎる」
私はバッグを肩にかけ、ドアに向かう。男が後ろから名前を呼んだ。
振り返る。
「また連絡してもいい?」
少し考えるふりをした。本当は、もう答えは決まっていた。
「この美味しさを保っていられる限りは」
男が呆れた顔をした。
私は笑顔を作った。
そして最後に、軽く頭を下げた。店で客を見送るときとほとんど同じ顔で。
「ご馳走様でした」
扉を閉めた。
廊下を歩きながら、少しだけ笑った。
結局、先輩より先にこちらを向かせた。
それだけで、今日は十分だった。