SLENDER IV.com / 書き下ろし官能小説
危ない遊び
作品から着想を得た、書き下ろし官能小説です。
レビュー対象とは別の人物・設定で書かれた、出演者本人とは無関係の書き下ろし成人フィクションです。
この物語は作品から着想を得た独立したフィクションです。出演者本人の心情や実際の出来事、レビュー対象の固有場面を示すものではありません。
この小説は、作者自身のアイデアと構想をもとに、AIの支援を受けながら文章化・推敲しています。
WRITTEN FOR SLENDER IV.com
最後のサビに入った直後、久世セナは右手を腰へ滑らせた。
振付では、銀色のラインが走る衣装の切れ込みに指先を沿わせ、そのまま胸元まで引き上げる。セナは腰を落とし、正面のカメラを見た。
六万人の観客が一斉に声を上げる。
指先を戻すまでの時間を、ほんの少しだけ長くした。
一小節にも満たない。
隣で踊るメンバーは気づかない。巨大スクリーンを見ている観客にも、振付の一部にしか見えない。
それでいい。
その一瞬、自分だけが何をしているのか知っている。
曲が終わり、暗転すると、セナは何事もなかったようにステージ袖へ走った。スタッフからタオルを受け取り、イヤーモニターを外す。
「セナ、最後ちょっと溜めた?」
振付師が訊いた。
「どこ?」
「サビのところ」
「ああ」
セナは水を飲んだ。
「気持ちよかったから」
「いいじゃん。あれ残す?」
「やだ」
「なんで?」
「毎回やったらつまんないでしょ」
振付師が笑った。
セナも笑って、衣装部屋へ入った。
扉が閉まる。
鏡の前で衣装を脱ぎながら、さっきの一瞬を思い出した。
まだ身体に残っている。
〈VANTA〉は四人組の女性ユニットだった。
激しいダンスと本格的な歌唱、それに大胆な衣装と挑発的なステージング。世界ツアーを回れば、どの都市でも数万人が集まる。
セナはその中心にいた。
毎晩、大勢の視線を浴びながら踊る。
腰を振る。
男性ダンサーと身体が触れるぎりぎりまで近づく。
挑発的な歌詞を、正面のカメラへ向かって歌う。
中途半端に演じても客には伝わる。
だからセナは、本気でその気分になる。
問題は、ライブが終わったあとだった。
身体だけがステージから降りてくれない。
恋人を作るのは難しかった。
誰かと食事をすれば写真を撮られる。ホテルへ呼べばスタッフに知られる。相手を一人間違えれば、その夜の話が翌日には誰かの自慢話になる。
若い頃には、それでも何とかならないかと考えた。
今はもう諦めている。
これが自分の生活なのだ。
その代わり、小さな遊びを覚えた。
振付からほんの少しだけ外れる。
暗転の直前でこっそり触れる。
衣装を直すふりをして、必要以上にゆっくり指を滑らせる。
客席の一人だけを選んで、想像する。
それだけで、何もないよりはましだった。
※
翌日の午後。
リハーサルスタジオへ向かう通路で、背の高い男が壁にもたれていた。
真壁遼。
ツアーの記録撮影を担当しているカメラマンだった。
「セナ」
呼び捨てにされ、セナは足を止めた。
普段からそういう男だった。
相手が有名人だからといって態度を変えないというより、変えない自分を気に入っている。
セナは真壁を見た。
「何」
「面白いもん撮れた」
真壁がタブレットを差し出した。
昨夜のステージだった。
青い照明の中で腰を落とすセナ。
「これが?」
「次」
セナが指を滑らせる。
もう一枚。
さらに一枚。
連写だった。
指先の位置が少しずつ変わっている。
最後の一枚で、セナの指が止まっていた。
顔も写っている。
歌っている顔ではない。
セナは画面を拡大した。
「よく撮れてるじゃん」
「余裕だな」
「何で慌てるの?」
「これ、振付じゃないだろ」
セナは画面から目を上げた。
「だったら?」
真壁が笑った。
「やっぱりな」
「何が」
「お前、こういうの好きなんだ」
セナはタブレットを押し返した。
「くだらない」
歩き出そうとすると、真壁が腕を伸ばして通路を塞いだ。
「どこ行くんだよ」
「リハ」
「まだ話終わってない」
「私は終わった」
「これが外に出ても?」
セナの足が止まった。
真壁はタブレットを軽く振った。
「海外のゴシップサイトなら、いい値段つきそうだな」
「脅してんの?」
「どう思う?」
セナは真壁の顔を見た。
「いくら」
「金なんかいらねえよ」
「じゃあ何」
真壁がセナを上から下まで見た。
隠そうともしなかった。
「分かるだろ」
「言ってみれば?」
「そこまで言わせたい?」
「言えないならどいて」
セナが真壁の腕を押し退けようとした。
「一晩」
真壁が言った。
セナの手が止まった。
「俺と付き合え。それで消してやる」
「何様?」
「嫌ならいいぞ」
真壁がタブレットを引いた。
「俺は困らない」
腹が立つ。
そう思った。
同時に、別のものが身体の奥を走った。
自分がステージで何をしていたのか、この男は知っている。
そのうえで、自分を欲しがっている。
しかも金ではない。
セナの身体を手に入れようとしている。
ずっと蓋をしていた場所を、いきなり指で押されたようだった。
「今夜」
自分でも、言ってから少し驚いた。
真壁が眉を上げる。
「十一時。ホテルに来て」
「いいのか?」
「一回だけ。カメラ持って来て」
「ほう…」
「勘違いしないで。何かあったら言い訳が必要」
「なるほどね」
真壁が笑った。
その笑い方が気に入らなかった。
勝ったと思っている。
「部屋番号はあとで送る」
セナは真壁の横を通り過ぎた。
十歩ほど歩いてから、後悔が始まった。
※
ホテルに戻り、シャワーを浴びた。
髪を乾かした。
まだ九時半だった。
ベッドに座り、スマートフォンを手に取った。
《やっぱり無理》
入力した。
しかし送らずに消した。
馬鹿だ。
どう考えても危険すぎる。
一度会って終わる保証なんてない。
写真を消したと言われても確認できない。
真壁が誰かに話さない保証もない。
むしろ一度関係を持てば、新しい秘密を渡すことになる。
今の生活を全部賭けてまでやることじゃない。
《今日は無理》
また消した。
時計を見る。
九時四十八分。
断ればいい。
それで終わる。
事務所にうまく話せば、真壁をツアーから外すことだってできる。
セナはスマートフォンをベッドへ投げた。
数分後、また拾った。
諦めきれなかった。
あの男が自分の秘密を知っている。
自分が何をしていたのか分かっている。
その男が、今夜、自分を手に入れるつもりで来る。
考えるたびに、身体がステージの続きを欲しがる。
でも危険すぎる。
セナはベッドの上で仰向けになった。
天井を見た。
欲しい。
でも、このままでは無理だ。
誰にも言わない保証さえあればいい。
絶対に言えないようにできれば。
セナは起き上がった。
しばらく動かなかった。
そして、スマートフォンを見た。
真壁は、自分が写真を持っているから強気なのだ。
それが逆だったら。
セナは立ち上がった。
部屋を見回した。
十一時三分前にドアが鳴った。
早い。
セナはすぐには開けなかった。
もう一度鳴る。
三度目で開けた。
真壁が立っていた。
「遅えよ」
「帰れば?」
「呼んどいて何言ってんだ」
真壁は返事を待たずに入ってきた。
セナはドアを閉めた。
「写真」
「は?」
「先に消して」
真壁が笑った。
「終わってからだろ」
「じゃあ帰って」
「おい」
「話が違うなら帰れって言ってんの」
真壁の顔から笑いが消えた。
「ここまで来て今さら何言ってんだよ」
「怖くなった」
セナはそう言って、真壁から少し距離を取った。
本当に少しだけ怖かった。
だから演技は難しくなかった。
「やっぱり無理。帰って」
「ふざけんなよ」
「声出さないで」
「自分から呼んだんだろ」
「気が変わった」
真壁が一歩近づく。
セナは一歩退いた。
「写真がどうなってもいいのか?」
セナは黙った。
真壁がさらに近づいた。
「今さらいい子ぶってんじゃねえよ。ステージであんなことやってた女が」
セナは唇を噛んだ。
俯く。
真壁には、怯えているように見えたはずだった。
「一回付き合えば消してやるって言ってんだ。お前にも悪い話じゃねえだろ」
「本当に消す?」
「だから最初からそう言ってんだろ」
「コピーは?」
「しつこいな」
「だって怖いから」
「だったら最初から呼ぶなよ」
真壁が手を伸ばした。
セナは逃げなかった。
真壁の身体で、部屋の隅に置いた録音機が見えなくなる。
リハをチェックするためのもので、すこぶる性能がいいい。使い方も慣れている。充電もチェックした。
「やめて」
真壁の動きが一瞬止まった。
「本気で嫌なら言ってみろよ」
セナは答えなかった。
沈黙したまま、目を逸らした。
「ほらな」
真壁が言った。
「嫌じゃねえんだろ」
セナは何も言わなかった。
真壁がまた近づいた。
セナは一歩だけ退いた。
真壁の手がセナの太ももに落ちた。ステージでセナ自身が触れた場所。
「やめて……触らないで」
言葉とは別に、身体の奥が熱を持った。あの夜、カメラの前で指を止めた瞬間の続きが、いま男の手で再開されている。知られている。見られている。蓋をしていた場所を、今度は他人の指が押している。
「本気で嫌なら言えよ」
セナは答えなかった。沈黙したまま、目を逸らした。
「ほらな。嫌じゃねえんだろ」
真壁が衣装をずらした。セナは「嫌」と小さく言った。腰は後ろへ逃げようとして、壁に押し付けられる。脚が開く。自分ではそうしていないはずだ。
「濡れてんじゃねえか。ステージであんなことして、ホテルまで呼んどいて、いまさら嫌がる顔すんな」
指が秘部をなぞる。セナの喉から、拒むはずの声が漏れた。短い、甘い音。真壁がそれを聞いて笑った。
「声出してんじゃねえよ。嫌がってるなら、なんで腰動いてんだ」
セナは首を振った。「やめて……入れないで」
真壁は構わず押し開いた。挿入の瞬間、セナの身体が跳ねた。乱暴だった。なのに内側では受け入れていて、奥まで一気に埋まると、視界の端が白くなった。
(……来てる)
心の中では、ステージのサビの続きだった。客席の六万人ではなく、この男ひとりに見られている。秘密を知っている男に、身体を開かされている。それがたまらなくよかった。
「痛い……やめて……」
言葉はそう出る。腰は、わずかに前へ出ていた。真壁が気づく。
「痛いて言いながら締めつけてんじゃねえか。お前、こういうの好きなんだろ。表ではアイドル面して、裏じゃこんなに欲しがって」
真壁はセナの腿を掴み、深く突いた。セナは壁に後頭部をつけた。「だめ……やめっ……」
声が裏返る。拒否の形をした喘ぎ。真壁はそれを罵りながら、さらに突き上げる。
「レイプされてるみたいな顔しやがって。なのに中は吸い付いてきてる。変態が」
セナは涙をにじませた。痛みではなく快楽的な羞恥だった。見られている。録音されている。この男は、自分がステージで何をしていたかを知ったうえで、いま自分を壊そうとしている。壊されているふりをしながら、セナは内側で何度も波を立てていた。
「やめて……イッ……いや、かない……」
矛盾した言葉が重なる。真壁はそれを聞いて、より興奮した。
「イキそうならイけよ。嫌がってる女がイクところ、見せろ」
セナの腰が動きを合わせる。真壁が低く笑った。
「ほら、また腰振ってんぞ。口じゃ嫌だ嫌だ言ってな」
セナは唇を噛み、声を殺す。殺すほど漏れる。内側では、あの小さな遊びでは届かなかった場所まで、男のものが擦れていた。罪悪感と快感が同じ場所で混ざる。それがよかった。
真壁はセナの髪を掴み、耳元で言った。
「写真、世間に出してもいいんだぞ。この顔、この声、全部残してある」
「……やめて」
答えながら、セナは絶頂に落ちた。脚が震え、内側が痙攣する。真壁はそれを「嫌がってるのにイキやがった」と罵り、動きを止めなかった。セナは拒否の言葉を繰り返した。身体は、その言葉を合図にするかのように何度も締めつけた。
※
真壁が帰ったのは、日付が変わってからだった。
ドアの前でスマートフォンを見せた。
「ほら。消したよ」
「全部?」
「全部だよ」
「クラウドは?」
「疑い深すぎんだろ」
「当たり前じゃん」
真壁が笑った。
「お前、思ってたより面白いな」
セナは睨んだ。
「もう帰って」
「はいはい」
真壁が廊下へ出た。
「じゃあな」
ドアを閉める。
鍵をかけた。
足音が遠ざかる。
セナはその場に立ったまま、しばらく動かなかった。
やがて部屋の隅へ歩いた。
録音を止めた。
二時間近いデータが残っている。
最初から聴き返した。
自分が帰れと言う。
真壁が拒む。
写真を持ち出す。
自分から呼んだんだろ、と迫る。
セナが一歩退く。
真壁が追う。
「今さらいい子ぶってんじゃねえよ」
巻き戻す。
もう一度聴く。
笑った。
「馬鹿だわ」
必要な部分だけを抜いた。
順番を変える必要さえ、ほとんどなかった。
真壁が自分で作ってくれていた。
※
翌朝。
真壁へファイルを送った。
四十七秒。
返信より先に電話が鳴った。
セナは取らなかった。
また鳴る。
放っておいた。
三度目で出た。
「何」
『お前、何だよこれ』
昨日までとは声が違った。
セナはベッドの上で脚を組んだ。
「そのままだけど」
『ふざけんな。お前、自分から呼んだんだろ』
「それ、残ってる?」
『お前……』
「写真を使って迫ってるところは、すごくきれいに録れてるね」
沈黙。
『消せ』
「嫌」
『何が目的だよ、楽しんだじゃねえかよ』
セナは窓の外を見た。
朝の街が広がっている。
「次から、私が呼んだら来て」
『は?』
「私が会いたいときだけ」
『なんで?』
「じゃあ切るね」
『待て』
セナの指が止まった。
「何?」
真壁はしばらく黙った。
『……何すりゃ消すんだよ』
セナは笑った。
電話を切った。
それからしばらく、セナはステージ上の小さな遊びをしなくなった。
ホテルに帰ってからの自慰行為も自粛した。
興奮を高めるためだった。
※
1週間ほど経ち、期待をしながらの禁欲生活に限界が来た頃、短いメッセージを送った。
《来て》
真壁は来た。
セナはステージ衣装を着ていた。ツアーで使い終え、もう着ることのない一着を持ち帰っていた。銀色のラインが走る切れ込み。照明の下ではなく、ホテルの白い光の下で、同じ生地が肌に張りついている。
「撮って」
セナは自分で用意したカメラを真壁に渡した。真壁が口を開く前に、セナは腰を落とした。振付どおり、切れ込みに指先を沿わせる。胸元まで引き上げる。あの夜より長く止めた。カメラのシャッターが連続で鳴る。
「もっと寄って。指、よく写るように」
セナは、ステージでは絶対に行けない先まで、指を沈めた。すでに濡れていた。禁欲の一週間は、触れた瞬間に音を創った。ぐちゃぐちゃに濡れた部分を、下着を除け、自ら開いて見せた。
「ここ。撮って」
真壁の喉が鳴った。セナは構わず続けた。指を抜き、糸を引く様子まで撮らせた。
「服、脱がせて。乱暴に。でも身体に触らないで」
真壁がカメラを置き、衣装に手をかける。生地が裂ける音がした。肩が出る。胸が出る。セナはそれを鏡でも確認しながら、真壁を見た。
「あなたも脱いで。自分で」
真壁が服を脱いだ。セナは跪き、少しだけ口に含んだ。熱を確かめる程度。2回往復する。すぐに口を離し、親指で亀頭をこする。
「お預け。先に私を舐めて」
真壁をベッドに座らせ、脚を少し開いた。舌が触れた瞬間、セナは小さく吐息を漏らした。一週間触れていなかった場所を、他人の舌が這う。セナは彼の髪を掴み、深く押しつけた。いやらしい音。自分から鳴っている。腰を動かし、真壁の舌に押し付ける。すぐに絶頂した。脚が震える。真壁の顔が濡れる。
セナは快感に震える声で言った。「まだだから」
真壁を仰向けに寝かせ、セナは手でしごいた。ゆっくり、根元まで。先が膨らむたびに止めた。何度か繰り返す。真壁の呼吸が乱れる。セナはそれを見て、満足そうに目を細めた。
「入れさせてあげる」
セナは仰向けになった。真壁が正常位で入ってくる。奥まで埋まった感覚を、セナはしばらく味わった。
「ゆっくり。早くしないで」
真壁は言われた通りにする。ゆっくりと出し入れを行いながら、卑猥な音を立てる。セナが真壁の首に手を回し、真壁がそれに応えるように形の良いバストに手を伸ばす。綺麗なピンク色の乳首を軽くつまみ、唇を塞ぐ。
「調子に乗らないで。私がするの」
腰を少しだけ浮かし、真壁の動きに合わせて動かす。
「あぁん…」
さっきまでよりも一段高い声が響く。真壁の腰に手を回し、奥まで招き入れる。息が乱れる。セナは自分から激しく腰を動かしながら言った。
「後ろからが好きなの」
体勢を変える。バックから深く入る。一番感じる角度。真壁が手でクリトリスに触れてくる。止めなかった。望んでいた動きだ。セナはシーツを掴み、すぐに絶頂した。内側が痙攣するたび、真壁のものが当たる場所がはっきりした。
まだ足りない。長い間溜めてきたものは、こんなものじゃない。
「終わらないから」
セナは真壁をベッドに押し倒し、自ら跨がった。自分で導き、沈めた。前後に動かす。奥で擦れるものを、セナは意識して味わった。真壁の顔が歪む。それをみてセナがコントロールする。自分の指でクリトリスを擦り、乳首に触れる。真壁の様子を見ながらまた前後に擦り付ける。唇を重ね、下を絡ませる。切ない声が漏れる。
充分に味わい、真壁の我慢の限界が見えたところで、セナは腰を止めた。
「つけて」
コンドームを渡す。真壁が付ける。セナは再び手でしごき、同じ体勢で挿入した。奥を擦りつけながら、声を出して、身体を反らした。
真壁はまだ終わっていなかった。
「俺もイかせろ」
セナを押し倒し、正常位で突いた。
「もう無理」
セナが言う。
自分の好き勝手にするつもりだった。もう満足した。だがこの男はやめてくれない。
真壁はセナの腰を強く抑え、激しく突いた。淫音が次第に激しくなる。拒否の形をしていたセナの吐息は、またもや甘い声に変わる。真壁の肉棒が大きく固くなっていくのがわかる。もう満足だと思っていた先があった。自分の意思と違う動きに、強さに、新しい興奮が芽生えていた。
「あ、気持ちいい…おかしくなる…だめ。あっ、あっ…」
最後は、真壁と同時に果てた。
しばらく動けなかった。ステージよりも息が上がっていた。
これが欲しかった。自分の指だけでは、道具では得られない満足。
それから週に一度のペースでそれは続いた。
※
二ヶ月が過ぎた。
ライブを終え、ホテルのベッドに寝転がっていると、真壁からメッセージが来た。
《今日どうする》
セナは画面を見た。
以前なら自分から送っていた。
返事をしないでいると、また来た。
《行けるぞ》
セナはスマートフォンを伏せた。
テレビをつけた。
知らない言語のニュースが流れている。
消した。
シャワーを浴びた。
戻ってきても、まだ返事をする気にならなかった。
セナは鏡の前に立った。
最初の夜を思い出した。
十一時になるまでの時間。
ドアが鳴った瞬間。
真壁が苛立ち始めたとき。
録音を送信したとき。
電話の向こうで、真壁の声が変わった瞬間。
あの頃は、もっと面白かった。
スマートフォンが震えた。
《寝た?》
セナは笑ってしまった。
真壁ではもう興奮しない。
何を言えばどう動くのかも分かる。
全部知っている。
セナは返信しなかった。
翌日。
リハーサルを終えてステージ裏を歩いていると、向こうから一人の男が来た。
今回のツアーに途中から加わったスタッフだった。
何度か顔を合わせている。
仕事以外の話をしたことはない。
必要以上にセナを見ない。
ーー次のおもちゃが欲しい。
その日のステージから、セナの"遊び"が再開した。