04 / FICTION

SLENDER IV.com / 書き下ろし官能小説

危ない遊び

作品から着想を得た、書き下ろし官能小説です。

レビュー対象とは別の人物・設定で書かれた、出演者本人とは無関係の書き下ろし成人フィクションです。

創作であること

この物語は作品から着想を得た独立したフィクションです。出演者本人の心情や実際の出来事、レビュー対象の固有場面を示すものではありません。

この小説は、作者自身のアイデアと構想をもとに、AIの支援を受けながら文章化・推敲しています。

WRITTEN FOR SLENDER IV.com

最後のサビに入った直後、久世セナは右手を腰へ滑らせた。

振付では、銀色のラインが走る衣装の切れ込みに指先を沿わせ、そのまま胸元まで引き上げる。セナは腰を落とし、正面のカメラを見た。

六万人の観客が一斉に声を上げる。

指先を戻すまでの時間を、ほんの少しだけ長くした。

一小節にも満たない。

隣で踊るメンバーは気づかない。巨大スクリーンを見ている観客にも、振付の一部にしか見えない。

それでいい。

その一瞬、自分だけが何をしているのか知っている。

曲が終わり、暗転すると、セナは何事もなかったようにステージ袖へ走った。スタッフからタオルを受け取り、イヤーモニターを外す。

「セナ、最後ちょっと溜めた?」

振付師が訊いた。

「どこ?」

「サビのところ」

「ああ」

セナは水を飲んだ。

「気持ちよかったから」

「いいじゃん。あれ残す?」

「やだ」

「なんで?」

「毎回やったらつまんないでしょ」

振付師が笑った。

セナも笑って、衣装部屋へ入った。

扉が閉まる。

鏡の前で衣装を脱ぎながら、さっきの一瞬を思い出した。

まだ身体に残っている。

〈VANTA〉は四人組の女性ユニットだった。

激しいダンスと本格的な歌唱、それに大胆な衣装と挑発的なステージング。世界ツアーを回れば、どの都市でも数万人が集まる。

セナはその中心にいた。

毎晩、大勢の視線を浴びながら踊る。

腰を振る。

男性ダンサーと身体が触れるぎりぎりまで近づく。

挑発的な歌詞を、正面のカメラへ向かって歌う。

中途半端に演じても客には伝わる。

だからセナは、本気でその気分になる。

問題は、ライブが終わったあとだった。

身体だけがステージから降りてくれない。

恋人を作るのは難しかった。

誰かと食事をすれば写真を撮られる。ホテルへ呼べばスタッフに知られる。相手を一人間違えれば、その夜の話が翌日には誰かの自慢話になる。

若い頃には、それでも何とかならないかと考えた。

今はもう諦めている。

これが自分の生活なのだ。

その代わり、小さな遊びを覚えた。

振付からほんの少しだけ外れる。

暗転の直前でこっそり触れる。

衣装を直すふりをして、必要以上にゆっくり指を滑らせる。

客席の一人だけを選んで、想像する。

それだけで、何もないよりはましだった。

翌日の午後。

リハーサルスタジオへ向かう通路で、背の高い男が壁にもたれていた。

真壁遼。

ツアーの記録撮影を担当しているカメラマンだった。

「セナ」

呼び捨てにされ、セナは足を止めた。

普段からそういう男だった。

相手が有名人だからといって態度を変えないというより、変えない自分を気に入っている。

セナは真壁を見た。

「何」

「面白いもん撮れた」

真壁がタブレットを差し出した。

昨夜のステージだった。

青い照明の中で腰を落とすセナ。

「これが?」

「次」

セナが指を滑らせる。

もう一枚。

さらに一枚。

連写だった。

指先の位置が少しずつ変わっている。

最後の一枚で、セナの指が止まっていた。

顔も写っている。

歌っている顔ではない。

セナは画面を拡大した。

「よく撮れてるじゃん」

「余裕だな」

「何で慌てるの?」

「これ、振付じゃないだろ」

セナは画面から目を上げた。

「だったら?」

真壁が笑った。

「やっぱりな」

「何が」

「お前、こういうの好きなんだ」

セナはタブレットを押し返した。

「くだらない」

歩き出そうとすると、真壁が腕を伸ばして通路を塞いだ。

「どこ行くんだよ」

「リハ」

「まだ話終わってない」

「私は終わった」

「これが外に出ても?」

セナの足が止まった。

真壁はタブレットを軽く振った。

「海外のゴシップサイトなら、いい値段つきそうだな」

「脅してんの?」

「どう思う?」

セナは真壁の顔を見た。

「いくら」

「金なんかいらねえよ」

「じゃあ何」

真壁がセナを上から下まで見た。

隠そうともしなかった。

「分かるだろ」

「言ってみれば?」

「そこまで言わせたい?」

「言えないならどいて」

セナが真壁の腕を押し退けようとした。

「一晩」

真壁が言った。

セナの手が止まった。

「俺と付き合え。それで消してやる」

「何様?」

「嫌ならいいぞ」

真壁がタブレットを引いた。

「俺は困らない」

腹が立つ。

そう思った。

同時に、別のものが身体の奥を走った。

自分がステージで何をしていたのか、この男は知っている。

そのうえで、自分を欲しがっている。

しかも金ではない。

セナの身体を手に入れようとしている。

ずっと蓋をしていた場所を、いきなり指で押されたようだった。

「今夜」

自分でも、言ってから少し驚いた。

真壁が眉を上げる。

「十一時。ホテルに来て」

「いいのか?」

「一回だけ。カメラ持って来て」

「ほう…」

「勘違いしないで。何かあったら言い訳が必要」

「なるほどね」

真壁が笑った。

その笑い方が気に入らなかった。

勝ったと思っている。

「部屋番号はあとで送る」

セナは真壁の横を通り過ぎた。

十歩ほど歩いてから、後悔が始まった。

ホテルに戻り、シャワーを浴びた。

髪を乾かした。

まだ九時半だった。

ベッドに座り、スマートフォンを手に取った。

《やっぱり無理》

入力した。

しかし送らずに消した。

馬鹿だ。

どう考えても危険すぎる。

一度会って終わる保証なんてない。

写真を消したと言われても確認できない。

真壁が誰かに話さない保証もない。

むしろ一度関係を持てば、新しい秘密を渡すことになる。

今の生活を全部賭けてまでやることじゃない。

《今日は無理》

また消した。

時計を見る。

九時四十八分。

断ればいい。

それで終わる。

事務所にうまく話せば、真壁をツアーから外すことだってできる。

セナはスマートフォンをベッドへ投げた。

数分後、また拾った。

諦めきれなかった。

あの男が自分の秘密を知っている。

自分が何をしていたのか分かっている。

その男が、今夜、自分を手に入れるつもりで来る。

考えるたびに、身体がステージの続きを欲しがる。

でも危険すぎる。

セナはベッドの上で仰向けになった。

天井を見た。

欲しい。

でも、このままでは無理だ。

誰にも言わない保証さえあればいい。

絶対に言えないようにできれば。

セナは起き上がった。

しばらく動かなかった。

そして、スマートフォンを見た。

真壁は、自分が写真を持っているから強気なのだ。

それが逆だったら。

セナは立ち上がった。

部屋を見回した。

十一時三分前にドアが鳴った。

早い。

セナはすぐには開けなかった。

もう一度鳴る。

三度目で開けた。

真壁が立っていた。

「遅えよ」

「帰れば?」

「呼んどいて何言ってんだ」

真壁は返事を待たずに入ってきた。

セナはドアを閉めた。

「写真」

「は?」

「先に消して」

真壁が笑った。

「終わってからだろ」

「じゃあ帰って」

「おい」

「話が違うなら帰れって言ってんの」

真壁の顔から笑いが消えた。

「ここまで来て今さら何言ってんだよ」

「怖くなった」

セナはそう言って、真壁から少し距離を取った。

本当に少しだけ怖かった。

だから演技は難しくなかった。

「やっぱり無理。帰って」

「ふざけんなよ」

「声出さないで」

「自分から呼んだんだろ」

「気が変わった」

真壁が一歩近づく。

セナは一歩退いた。

「写真がどうなってもいいのか?」

セナは黙った。

真壁がさらに近づいた。

「今さらいい子ぶってんじゃねえよ。ステージであんなことやってた女が」

セナは唇を噛んだ。

俯く。

真壁には、怯えているように見えたはずだった。

「一回付き合えば消してやるって言ってんだ。お前にも悪い話じゃねえだろ」

「本当に消す?」

「だから最初からそう言ってんだろ」

「コピーは?」

「しつこいな」

「だって怖いから」

「だったら最初から呼ぶなよ」

真壁が手を伸ばした。

セナは逃げなかった。

真壁の身体で、部屋の隅に置いた録音機が見えなくなる。

リハをチェックするためのもので、すこぶる性能がいいい。使い方も慣れている。充電もチェックした。

「やめて」

真壁の動きが一瞬止まった。

「本気で嫌なら言ってみろよ」

セナは答えなかった。

沈黙したまま、目を逸らした。

「ほらな」

真壁が言った。

「嫌じゃねえんだろ」

セナは何も言わなかった。

真壁がまた近づいた。

セナは一歩だけ退いた。

真壁の手がセナの太ももに落ちた。ステージでセナ自身が触れた場所。

「やめて……触らないで」

言葉とは別に、身体の奥が熱を持った。あの夜、カメラの前で指を止めた瞬間の続きが、いま男の手で再開されている。知られている。見られている。蓋をしていた場所を、今度は他人の指が押している。

「本気で嫌なら言えよ」

セナは答えなかった。沈黙したまま、目を逸らした。

「ほらな。嫌じゃねえんだろ」

真壁が衣装をずらした。セナは「嫌」と小さく言った。腰は後ろへ逃げようとして、壁に押し付けられる。脚が開く。自分ではそうしていないはずだ。

「濡れてんじゃねえか。ステージであんなことして、ホテルまで呼んどいて、いまさら嫌がる顔すんな」

指が秘部をなぞる。セナの喉から、拒むはずの声が漏れた。短い、甘い音。真壁がそれを聞いて笑った。

「声出してんじゃねえよ。嫌がってるなら、なんで腰動いてんだ」

セナは首を振った。「やめて……入れないで」

真壁は構わず押し開いた。挿入の瞬間、セナの身体が跳ねた。乱暴だった。なのに内側では受け入れていて、奥まで一気に埋まると、視界の端が白くなった。

(……来てる)

心の中では、ステージのサビの続きだった。客席の六万人ではなく、この男ひとりに見られている。秘密を知っている男に、身体を開かされている。それがたまらなくよかった。

「痛い……やめて……」

言葉はそう出る。腰は、わずかに前へ出ていた。真壁が気づく。

「痛いて言いながら締めつけてんじゃねえか。お前、こういうの好きなんだろ。表ではアイドル面して、裏じゃこんなに欲しがって」

真壁はセナの腿を掴み、深く突いた。セナは壁に後頭部をつけた。「だめ……やめっ……」

声が裏返る。拒否の形をした喘ぎ。真壁はそれを罵りながら、さらに突き上げる。

「レイプされてるみたいな顔しやがって。なのに中は吸い付いてきてる。変態が」

セナは涙をにじませた。痛みではなく快楽的な羞恥だった。見られている。録音されている。この男は、自分がステージで何をしていたかを知ったうえで、いま自分を壊そうとしている。壊されているふりをしながら、セナは内側で何度も波を立てていた。

「やめて……イッ……いや、かない……」

矛盾した言葉が重なる。真壁はそれを聞いて、より興奮した。

「イキそうならイけよ。嫌がってる女がイクところ、見せろ」

セナの腰が動きを合わせる。真壁が低く笑った。

「ほら、また腰振ってんぞ。口じゃ嫌だ嫌だ言ってな」

セナは唇を噛み、声を殺す。殺すほど漏れる。内側では、あの小さな遊びでは届かなかった場所まで、男のものが擦れていた。罪悪感と快感が同じ場所で混ざる。それがよかった。

真壁はセナの髪を掴み、耳元で言った。

「写真、世間に出してもいいんだぞ。この顔、この声、全部残してある」

「……やめて」

答えながら、セナは絶頂に落ちた。脚が震え、内側が痙攣する。真壁はそれを「嫌がってるのにイキやがった」と罵り、動きを止めなかった。セナは拒否の言葉を繰り返した。身体は、その言葉を合図にするかのように何度も締めつけた。

真壁が帰ったのは、日付が変わってからだった。

ドアの前でスマートフォンを見せた。

「ほら。消したよ」

「全部?」

「全部だよ」

「クラウドは?」

「疑い深すぎんだろ」

「当たり前じゃん」

真壁が笑った。

「お前、思ってたより面白いな」

セナは睨んだ。

「もう帰って」

「はいはい」

真壁が廊下へ出た。

「じゃあな」

ドアを閉める。

鍵をかけた。

足音が遠ざかる。

セナはその場に立ったまま、しばらく動かなかった。

やがて部屋の隅へ歩いた。

録音を止めた。

二時間近いデータが残っている。

最初から聴き返した。

自分が帰れと言う。

真壁が拒む。

写真を持ち出す。

自分から呼んだんだろ、と迫る。

セナが一歩退く。

真壁が追う。

「今さらいい子ぶってんじゃねえよ」

巻き戻す。

もう一度聴く。

笑った。

「馬鹿だわ」

必要な部分だけを抜いた。

順番を変える必要さえ、ほとんどなかった。

真壁が自分で作ってくれていた。

翌朝。

真壁へファイルを送った。

四十七秒。

返信より先に電話が鳴った。

セナは取らなかった。

また鳴る。

放っておいた。

三度目で出た。

「何」

『お前、何だよこれ』

昨日までとは声が違った。

セナはベッドの上で脚を組んだ。

「そのままだけど」

『ふざけんな。お前、自分から呼んだんだろ』

「それ、残ってる?」

『お前……』

「写真を使って迫ってるところは、すごくきれいに録れてるね」

沈黙。

『消せ』

「嫌」

『何が目的だよ、楽しんだじゃねえかよ』

セナは窓の外を見た。

朝の街が広がっている。

「次から、私が呼んだら来て」

『は?』

「私が会いたいときだけ」

『なんで?』

「じゃあ切るね」

『待て』

セナの指が止まった。

「何?」

真壁はしばらく黙った。

『……何すりゃ消すんだよ』

セナは笑った。

電話を切った。

それからしばらく、セナはステージ上の小さな遊びをしなくなった。

ホテルに帰ってからの自慰行為も自粛した。

興奮を高めるためだった。

1週間ほど経ち、期待をしながらの禁欲生活に限界が来た頃、短いメッセージを送った。

《来て》

真壁は来た。

セナはステージ衣装を着ていた。ツアーで使い終え、もう着ることのない一着を持ち帰っていた。銀色のラインが走る切れ込み。照明の下ではなく、ホテルの白い光の下で、同じ生地が肌に張りついている。

「撮って」

セナは自分で用意したカメラを真壁に渡した。真壁が口を開く前に、セナは腰を落とした。振付どおり、切れ込みに指先を沿わせる。胸元まで引き上げる。あの夜より長く止めた。カメラのシャッターが連続で鳴る。

「もっと寄って。指、よく写るように」

セナは、ステージでは絶対に行けない先まで、指を沈めた。すでに濡れていた。禁欲の一週間は、触れた瞬間に音を創った。ぐちゃぐちゃに濡れた部分を、下着を除け、自ら開いて見せた。

「ここ。撮って」

真壁の喉が鳴った。セナは構わず続けた。指を抜き、糸を引く様子まで撮らせた。

「服、脱がせて。乱暴に。でも身体に触らないで」

真壁がカメラを置き、衣装に手をかける。生地が裂ける音がした。肩が出る。胸が出る。セナはそれを鏡でも確認しながら、真壁を見た。

「あなたも脱いで。自分で」

真壁が服を脱いだ。セナは跪き、少しだけ口に含んだ。熱を確かめる程度。2回往復する。すぐに口を離し、親指で亀頭をこする。

「お預け。先に私を舐めて」

真壁をベッドに座らせ、脚を少し開いた。舌が触れた瞬間、セナは小さく吐息を漏らした。一週間触れていなかった場所を、他人の舌が這う。セナは彼の髪を掴み、深く押しつけた。いやらしい音。自分から鳴っている。腰を動かし、真壁の舌に押し付ける。すぐに絶頂した。脚が震える。真壁の顔が濡れる。

セナは快感に震える声で言った。「まだだから」

真壁を仰向けに寝かせ、セナは手でしごいた。ゆっくり、根元まで。先が膨らむたびに止めた。何度か繰り返す。真壁の呼吸が乱れる。セナはそれを見て、満足そうに目を細めた。

「入れさせてあげる」

セナは仰向けになった。真壁が正常位で入ってくる。奥まで埋まった感覚を、セナはしばらく味わった。

「ゆっくり。早くしないで」

真壁は言われた通りにする。ゆっくりと出し入れを行いながら、卑猥な音を立てる。セナが真壁の首に手を回し、真壁がそれに応えるように形の良いバストに手を伸ばす。綺麗なピンク色の乳首を軽くつまみ、唇を塞ぐ。

「調子に乗らないで。私がするの」

腰を少しだけ浮かし、真壁の動きに合わせて動かす。

「あぁん…」

さっきまでよりも一段高い声が響く。真壁の腰に手を回し、奥まで招き入れる。息が乱れる。セナは自分から激しく腰を動かしながら言った。

「後ろからが好きなの」

体勢を変える。バックから深く入る。一番感じる角度。真壁が手でクリトリスに触れてくる。止めなかった。望んでいた動きだ。セナはシーツを掴み、すぐに絶頂した。内側が痙攣するたび、真壁のものが当たる場所がはっきりした。

まだ足りない。長い間溜めてきたものは、こんなものじゃない。

「終わらないから」

セナは真壁をベッドに押し倒し、自ら跨がった。自分で導き、沈めた。前後に動かす。奥で擦れるものを、セナは意識して味わった。真壁の顔が歪む。それをみてセナがコントロールする。自分の指でクリトリスを擦り、乳首に触れる。真壁の様子を見ながらまた前後に擦り付ける。唇を重ね、下を絡ませる。切ない声が漏れる。

充分に味わい、真壁の我慢の限界が見えたところで、セナは腰を止めた。

「つけて」

コンドームを渡す。真壁が付ける。セナは再び手でしごき、同じ体勢で挿入した。奥を擦りつけながら、声を出して、身体を反らした。

真壁はまだ終わっていなかった。

「俺もイかせろ」

セナを押し倒し、正常位で突いた。

「もう無理」

セナが言う。

自分の好き勝手にするつもりだった。もう満足した。だがこの男はやめてくれない。

真壁はセナの腰を強く抑え、激しく突いた。淫音が次第に激しくなる。拒否の形をしていたセナの吐息は、またもや甘い声に変わる。真壁の肉棒が大きく固くなっていくのがわかる。もう満足だと思っていた先があった。自分の意思と違う動きに、強さに、新しい興奮が芽生えていた。

「あ、気持ちいい…おかしくなる…だめ。あっ、あっ…」

最後は、真壁と同時に果てた。

しばらく動けなかった。ステージよりも息が上がっていた。

これが欲しかった。自分の指だけでは、道具では得られない満足。

それから週に一度のペースでそれは続いた。

二ヶ月が過ぎた。

ライブを終え、ホテルのベッドに寝転がっていると、真壁からメッセージが来た。

《今日どうする》

セナは画面を見た。

以前なら自分から送っていた。

返事をしないでいると、また来た。

《行けるぞ》

セナはスマートフォンを伏せた。

テレビをつけた。

知らない言語のニュースが流れている。

消した。

シャワーを浴びた。

戻ってきても、まだ返事をする気にならなかった。

セナは鏡の前に立った。

最初の夜を思い出した。

十一時になるまでの時間。

ドアが鳴った瞬間。

真壁が苛立ち始めたとき。

録音を送信したとき。

電話の向こうで、真壁の声が変わった瞬間。

あの頃は、もっと面白かった。

スマートフォンが震えた。

《寝た?》

セナは笑ってしまった。

真壁ではもう興奮しない。

何を言えばどう動くのかも分かる。

全部知っている。

セナは返信しなかった。

翌日。

リハーサルを終えてステージ裏を歩いていると、向こうから一人の男が来た。

今回のツアーに途中から加わったスタッフだった。

何度か顔を合わせている。

仕事以外の話をしたことはない。

必要以上にセナを見ない。

ーー次のおもちゃが欲しい。

その日のステージから、セナの"遊び"が再開した。