SLENDER IV.com / 書き下ろし官能小説
誰にも見せない私
清楚な日常の裏で、一人の夜を告白する
清楚な女性として暮らす紗季が、誰にも話してこなかった一人の夜と、もう一つの自分を初めて告白する。
この物語は作品から着想を得た独立したフィクションです。出演者本人の心情や実際の出来事、レビュー対象の固有場面を示すものではありません。
この小説は、作者自身のアイデアと構想をもとに、AIの支援を受けながら文章化・推敲しています。
WRITTEN FOR SLENDER IV.com
私は、たぶん周りから、そういうことをしない人間だと思われている。
二十六歳になった今でも、職場では清楚な人と呼ばれる。
肩につかない長さの黒い髪。淡い色のブラウス。膝の見えないスカート。人の話を遮らず、大きな声で笑わない。誰かが下品な冗談を言えば、意味が分からなかったような顔をする。
半分は生まれつきで、半分は私が選んだ振る舞いだ。
私は、みんなが思っているような私でいることが嫌いではない。
昼休みになると、同僚たちは恋人との夜を話す。
何をされたとか、何をしてほしいと言われたとか。昨日まで秘密だったはずのことが、コンビニのサラダを食べながら、笑い話としてテーブルに並ぶ。
私はいつも聞く側にいる。
「紗季は、こういう話に興味なさそう」
そう言われれば、少し困った顔で笑う。
「聞いているだけで十分かな」
嘘ではない。
私は、自分のことをそこで話したくないだけだ。
みんなの前では言わないけれど、私は週に何度か、夜を自分のためだけに空けている。
残業を断り、帰りに小さな瓶のワインと果物を買う。部屋へ着いたらスマートフォンの通知を切り、急いで入る必要のない風呂に、好きなだけ長く浸かる。
風呂から上がると、誰に見せるわけでもない下着を選ぶ。
人前では着ない色のものも持っている。レースの幅や、肌に触れたときの感触で選ぶものもある。
恋人はいない。
誰かが訪ねてくる予定もない。
それでも私は、鏡の前で一度、自分の姿を見る。
清楚な紗季さんは、そんなものを選ばないと思われているかもしれない。
でも、その夜の私は、誰かの想像の中にいる私ではない。
ベッドに入る前に、鍵を確かめる。
カーテンを閉じ、照明を一つだけにする。枕元には、誰にも見せたことのない箱がある。自分で買った道具と、読みかけの小説と、イヤホンを入れている。
初めて買ったときには、荷物を受け取るだけで顔が熱くなった。
けれど、使うことそのものには、最初からそれほど迷いがなかった。
私は以前から、自分がどうすれば満たされるのかを知っている。
最近になって欲望へ目覚めたわけではない。寂しいからでも、誰かの代わりが欲しいからでもない。
私にとっては、眠ることや、湯船で身体を温めることと同じように、一人で過ごす夜の一部だった。
イヤホンから聞こえる声に目を閉じることがある。
物語の中の誰かに自分を重ねることもある。
優しく求められる夜を選ぶ日もあれば、普段の私なら口にしない言葉や、少し乱暴な気配を選ぶ日もある。
その日の私が何を欲しがっているのかは、誰にも聞かなくていい。
私は自分で選び、自分の手で確かめる。
静かだった呼吸が変わっていく。
声を抑えようとして、途中でやめることもある。ここには私しかいないのに。恥ずかしがる相手も、清楚な顔を期待する相手もいないのに。そしてやはり続きにふける。
終わったあとは、しばらく何もせず横になっている。
満たされた身体の重さを感じながら、冷めかけたワインを飲む。
それが、誰にも話していない私の夜だ。
道具を洗って箱へ戻す。下着を手洗いし、部屋を整える。翌朝になれば、いつものブラウスに袖を通す。
鏡に映る私は、前の日と何も変わっていない。
電車に乗り、会社へ行き、後輩の相談を聞く。
「紗季さんって、一人の夜は何してるんですか」
以前、そう聞かれたことがある。
「本を読んだり、お風呂に入ったり」
私はそう答えた。
それも嘘ではない。
ただ、どんな本を読み、風呂から上がったあとに何をしているかを言わなかっただけだ。
誰にでも、話していない時間くらいある。
それなのに、清楚だと思われている女性には、欲望まで清らかであることが期待される。
私は、その期待をわざわざ壊そうとは思わない。
みんなの前で自分の夜を語りたいとも思わない。
明日もきっと、誰かの恋愛話を聞きながら、よく分からないという顔をする。
下品な冗談には、小さく首を傾げる。
そして帰宅すれば、鍵をかける。
髪をほどき、通知を切り、誰にも見せない色を身につける。
清楚な私を脱ぎ捨てるのではない。
昼間の私も、夜の私も、どちらも同じ私だから。
ただ一つ違うのは、夜の私は、誰かにどう見えるかを考えなくていいということだ。
私は自分の欲しがるものを、ずっと前から知っている。
そして今まで、それを誰にも話さなかった。
これが、私の私生活だ。
これが、私が初めて口にする、本当の告白だ。