SLENDER IV.com / 書き下ろし官能小説
知らない街の窓
作品から着想を得た、書き下ろし官能小説です。
レビュー対象とは別の人物・設定で書かれた、出演者本人とは無関係の書き下ろし成人フィクションです。
この物語は作品から着想を得た独立したフィクションです。出演者本人の心情や実際の出来事、レビュー対象の固有場面を示すものではありません。
この小説は、作者自身のアイデアと構想をもとに、AIの支援を受けながら文章化・推敲しています。
WRITTEN FOR SLENDER IV.com
出張先の街は、私を少しだけ無責任にした。
知らない駅、知らない路線。二泊したら、もう来ることもないかもしれないホテル。帰りの新幹線に乗れば、この街で起きたことなど全部、窓の外へ流れていくような気がした。
もちろん、そんなわけはない。三十二歳にもなれば、自分のしたことから逃げられないくらい分かっている。
それでも、知らない街では自分の輪郭が少し曖昧になる。会社でどんな顔をしているかも、四年付き合っている彼氏がいることも、その彼氏とはもう何か月もまともに触れ合っていないことも、ここでは誰も知らない。
そのことが、私をいつもより少しだけ大胆にした。
きっかけは、初日の朝だった。
地方の支店から出張してきた私は、都会の通勤ラッシュを甘く見ていた。電車の扉が開いた瞬間、人の波に押されるまま乗り込み、気づけば身動きが取れなくなっていた。
肩と肩が触れ、背中には誰かの鞄が当たる。洗剤や整髪料、それにわずかな汗の匂い。電車が揺れるたび、自分の意思とは関係なく知らない身体と接触した。
普段なら、不快でしかない。
なのに私は、ふと思った。
痴漢って、こういう場所で起きるんだろうか。
誰の手か分からない。勘違いかもしれないと思って声も出せない。そのまま大勢の中で、誰にも知られず、自分だけが秘密を暴かれていく。
現実にされたら怖い。それを望んでいるわけではない。
それなのに、自分の頭の中で作った想像には別の熱が混じった。
前に立っていた男の腕に肩が触れた。相手は何もしていない。ただ混んでいるから触れているだけだ。それでも、一度意識してしまうと、その接触だけが妙に大きく感じられた。
心臓が速くなり、脚の内側に力が入る。
何を考えているんだろう。
仕事へ向かっている途中なのに。
スマホを取り出したものの、文字は何ひとつ頭に入らなかった。
駅に着き、人の流れと一緒にホームへ押し出されて、ようやく息ができた。
誰にも何もされていない。ただ電車が混んでいただけ。
それなのに身体の奥には熱が残り、そのことを恥ずかしいと思うほど、かえって消えなくなった。
その夜、ホテルへ戻ってからも朝のことを思い出した。
会社の経費で泊まれる、ごく普通のビジネスホテルだった。ベッドと小さな机、ユニットバス。その窓の向こうには、狭い道路を挟んでオフィスビルが建っている。
シャワーを浴び、部屋着に着替えてベッドへ横になった。
テレビをつけても、頭に浮かぶのは満員電車だった。
逃げ場のない場所。知らない誰かの身体。自分ではどうにもできないまま、隠しているものだけを知られてしまう感覚。
彼氏とは、もう長いこと触れ合っていなかった。
会えば食事をして、一緒にテレビを見て、同じベッドで眠る。それでも、私を女として見ているのか分からない。欲しいと言って拒まれるのが怖くて、私も何も欲しがっていない顔をしていた。
その反動だったのかもしれない。
知らない街だから。誰も私を知らないから。
今夜くらい、自分が隠しているものを認めてもいい気がした。
私は朝から残っていた熱を、自分で静めようとした。
最初は、眠れる程度に落ち着けばいいと思っていた。
けれど目を閉じると、誰かが近くにいるような気がした。誰かに見られている。自分だけが、それに気づいていない。
誰もいない部屋なのに声を抑え、その「聞かれるかもしれない」という想像に、自分がさらに昂っていく。
やがて身体の力が抜け、しばらくベッドの上で動けなくなった。
呼吸が落ち着き始めた頃、何気なく顔を上げた。
そこで初めて、窓が目に入った。
白いレースカーテンだけが閉まり、遮光カーテンは左右に開いたままだった。
一気に身体が冷えた。
夜は、外より部屋の中の方が明るい。こちらから外が見えなくても、外からはこちらが見える。
慌てて窓へ近づいた。
向かいのオフィスには、まだいくつか明かりがついていた。
その一つ。窓際に男が立っていた。
こちらを向いている。
距離があり、レースも挟んでいる。表情までは分からない。
けれど、見ている方向だけは分かった。
私の部屋だった。
男が少し動き、こちらへ近づいたように見えた。
そして、一瞬、目が合った。
本当に目が合ったのかどうかは分からない。
それでも私は、見られたと思った。
さっきまで何をしていたのか。どんな顔をしていたのか。どこまで見えていたのか。
反射的に照明を消し、遮光カーテンを閉めた。
暗闇の中で窓に背をつけ、しばらく動けなかった。
やってしまった。
恥ずかしくて、顔が熱かった。
なのに、もう一つの感情にも気づいてしまった。
あの男は、普段の私を何も知らない。
会社員の私も、彼氏のいる私も知らない。ただ、誰にも見せていない顔だけを知ったかもしれない。
そのことを考えると、一度消えたはずの熱が身体の奥に戻ってきた。
翌朝、私は駅のホームでその男を見つけた。
紺色のスーツに白いシャツ。昨夜、向かいの窓に立っていた男だった。
昨日より電車は空いていた。離れようと思えば離れられたし、別の車両にも乗れた。
それでも私は、彼が待っている扉の近くから動かなかった。
本当にあの男なのか。
私の顔を覚えているのか。
何を確かめたいのか自分でも分からなかった。ただ、彼の視界から外れたくなかった。
電車に乗り、彼の斜め後ろに立った。スマホを見るふりをしていると、揺れた拍子に肩が彼の腕へぶつかった。
「あ、ごめんなさい」
「いえ」
彼が私を見る。
その視線が一瞬、顔に止まった。
ただの偶然かもしれない。
それでも私は、逃げる代わりに口を開いた。
「あの……ひょっとして、どこかでお会いしたことありますか?」
男は数秒、私の顔を見た。
「はい」
身体に力が入る。
「昨日」
その一言だけで、周囲の音が遠くなった。
やっぱり見ていた。
「……そうですよね」
何を言えばいいのか分からず、「昨日は、どうも」と妙な挨拶をすると、彼もわずかに口元を緩めた。
「こちらこそ」
周囲には何人も人がいる。誰にも意味の分からない会話を、私たちだけが理解している。
その秘密が、たまらなく恥ずかしかった。
彼が二つ先の駅で降りると聞いた瞬間、焦りが生まれた。
このまま別れれば、もう会わない。それが普通だし、その方がいい。
なのに私は言った。
「昨日のことで、ちょっと聞きたいことがあるんです。連絡先、教えてもらえますか?」
自分でも積極的すぎると思った。
彼は何も聞かず、内ポケットから名刺を取り出した。
高瀬遼。
向かいのビルに入っている会社の営業企画部。
昨夜の「窓の向こうの男」が、急に現実の人物になった。
降りる直前、高瀬は言った。
「続き、聞かせてください」
どちらの続きを意味しているのか分からないまま、私は手の中の名刺を見つめていた。
昼過ぎ、彼氏からメッセージが届いた。
――明日、何時の新幹線?
それだけだった。
帰れば、いつもの生活がある。
いつもの部屋。いつもの彼。
もちろん、触れてくれなくなったことは浮気をしていい理由にはならない。
出張先だから。明日には帰るから。
そんなものは全部、都合のいい言い訳だ。
分かっていた。
けれど、分かっていることと止まれることは別だった。
二日目の夜、ホテルへ戻った私は、部屋に入るなり窓を見た。
遮光カーテンは閉じている。
少し迷ってから、私はそれを開いた。
向かいのオフィスでは、昨夜と同じ一角だけに明かりが残っていた。
窓際に人影がある。
高瀬だった。
こちらを見ているかどうかは分からない。
私は窓辺から離れなかった。
昨夜とは違う。
今夜は、カーテンが開いていることを知っている。
それでも私は、部屋の照明をもう一つつけた。
見えているだろうか。
今朝、自分から名刺を欲しがった女が、また同じ窓の前に立っている。
そう思っただけで、昨夜よりも早く熱が集まった。
見ていてほしい。
でも、本当に見ていると分かるのは怖い。
その曖昧さに煽られるように、私は昨夜と同じことを始めた。
けれど、意味はまるで違った。
今度は偶然ではない。
一つ一つの動きが、窓の向こうへ送る合図のように思えた。
途中で何度か窓を見た。
高瀬の姿はまだそこにある。
本当にこちらを見ているかは分からない。それでも見られていると想像するだけで、身体は素直に反応した。
やがて力が抜けたあとも、満たされた気がしなかった。
むしろ、何が足りないのか分かってしまった。
見られたかっただけではない。
見ていた男が、何を思ったのか知りたい。
そして、その男が目の前に来たとき、自分がどうなるのか確かめたい。
私は鞄から名刺を取り出した。
電話番号を入力し、発信した。
五回鳴らしても出なかった。
電話を切った途端、一気に現実へ戻された。
何をしているんだろう。
彼氏のメッセージには返信していない。それなのに、昨夜自分を見ていた男には電話をしている。
三十分ほどして、ようやく気持ちが冷めた。
カーテンを閉め、もう寝ようと思ったところでスマホが鳴った。
知らない番号。
高瀬だと分かった。
四回目で出た。
「もしもし」
「高瀬です。電話いただきましたよね」
「はい」
「何かありましたか?」
私は一瞬迷った。
「昨日の……続きを聞きたくて」
短い沈黙のあと、高瀬が言った。
「どこまで見えていたか、ですか?」
心臓が跳ねた。
やはり見ていた。
「……そうです」
「電話で聞きたいですか?」
声が低かった。
「どういう意味ですか?」
「今から会社を出ます。ホテル、あそこですよね」
窓を見ると、向かいのオフィスの明かりが消えた。
「会って話しますか?」
高瀬は急かさなかった。
「嫌なら、ここで切ってください」
逃げ道を出されたことで、かえって気持ちが決まった。
「来てください」
部屋番号を伝え、電話を切った。
鏡を見ると、顔が赤かった。
髪を整えかけて、やめた。
何を期待しているのかは、自分でも分かっていた。
久しぶりに男に触れられたかった。
窓のことを少し話して、そのうち自然に距離が縮まる。そんな普通の流れを想像していた。
高瀬が来る直前、私は遮光カーテンを閉めた。
ノックが鳴った。
ドアを開けると、高瀬が立っていた。スーツの上着を腕にかけ、ネクタイを少し緩めている。
同じ部屋に入った途端、急に緊張した。
高瀬は椅子へ上着を置き、窓を見る。
「閉めるんですね」
「当たり前でしょ。あなたの会社、すぐそこじゃないですか」
「二度目は、わざとだったのに?」
息が止まった。
「何のことですか」
「今夜のことです」
「見てたんですか?」
「見ていました」
あっさり答えられ、顔が熱くなった。
「最初から?」
「君がカーテンを開けたところから」
「……全部?」
「少なくとも、君が窓の向こうを気にしていたことは分かりました」
目を合わせられなくなった。
「最低」
「そうかもしれない」
「普通、目をそらすでしょう」
高瀬は少し間を置いた。
「君は、そらしてほしかった?」
答えられなかった。
本当にそうなら、今夜は最初から遮光カーテンを閉めていた。
高瀬は窓を指した。
「開けますか?」
「嫌です」
「分かりました」
あっさり引かれた。
高瀬が窓から離れようとする。
なぜか胸の奥が落ち着かなくなった。
「……待って」
彼が振り返る。
「レースは、そのままですよね」
「もちろん」
「外から、どのくらい見えるんですか?」
「輪郭くらいでしょうね。顔や細かいところまでは分からないと思います」
「会社には、本当に誰もいない?」
「俺のいたフロアは無人です。ただ、周りの建物までは保証できない」
その答えを聞いて、身体の奥がまた熱くなった。
高瀬はカーテンに触れない。
私が決めるのを待っている。
腹が立つような気もした。
私は自分で遮光カーテンを開いた。
レース越しに街の明かりが現れる。向かいのオフィスは暗く、その窓ガラスには、明るいホテルの部屋と私の姿が映った。
「窓の前に立って」
高瀬が言った。
「それ、命令ですか?」
「嫌なら、しなくていい」
その言い方がずるい。
言われた途端、窓の前に立つ自分を想像してしまう。
私は中央へ立った。
「もう少し灯りをつけて」
「見えやすくなるでしょ」
「そうですね」
「分かって言ってる?」
「分かっています」
「嫌な人」
「つけなくてもいい」
私は自分でスタンドのスイッチを押した。
部屋が明るくなり、窓ガラスの中の自分がはっきりした。
高瀬の姿も、その後ろに映っている。
「髪をほどいて」
髪を留めていたゴムを外した。
「昨日、俺がいた窓は分かりますか?」
「……分かります」
「そこを見て、窓に手をついて」
「え?」
思わず後ろを向いた。
「こちらを見ないで」
再び、暗い窓へ視線を向け、言われた通りにする。
ガラスは手をつきづらいので、窓枠に手をついた。
昨夜、高瀬を見つけた瞬間の羞恥が蘇り、思わず太ももの内側に力が入る。
「今朝、わざと俺の近くに立ちましたか?」
言いながら高瀬が近づいてくる。
身体がこわばった。
「違います」
私の腰にそっと触れる。
「離れる場所はありましたよ」
言いながら、仕事着のままだったスカートに手をいれ、すでにストッキングを脱いでいた太ももに直接触れる。
「たまたまです」
腿の内側が熱を持った。高瀬の指は素肌の上を、確認するようにゆっくり辿る。スカートの中で、生地が擦れる音が小さくした。
「それなら、そういうことにしておきます」
「信じてないくせに」
声が少しうわずった。指が太ももの内側へ入るたびに、言葉の途中で息が変わる。
「わざと近くにいましたか」
「……わざとです」
認めた瞬間、指が秘部の外側をなぞった。濡れているのが自分でも分かった。朝の満員電車で想像しただけのことが、いま現実の手になっている。窓ガラスに映る自分の顔が、羞恥で歪む。
「何が、わざとですか」
「近くにいたこと。……名刺も」
「今夜、カーテンを開けたのも?」
答えられないうちに、指が割れ目へ沈んだ。浅く。それだけで身体が跳ねる。私は窓枠を握り直した。
「見てほしかった」
「何を」
「……昨夜、見られたあとの私を」
高瀬の指が中へ入る。一本。すぐに二本。内側を探るように動く。質問は止まない。その異常さが、指よりも先に頭を熱くした。
「何に興奮していますか」
「見られること」
「いま、指が入っているのに、それだけですか」
「……分からない」
嘘だった。分かっていた。見られることと、見られている最中に聞かれていることが重なっている。
高瀬は腰を後ろから押さえ、スカートを腰まで上げた。冷たい空気が尻に当たる。窓の向こうは暗い。輪郭だけがガラスに残る。
「見せているのは偶然ですか」
「違います」
「では、自分からですか」
「……はい」
その「はい」と同時に、高瀬が後ろから当たってきた。硬さが、濡れた場所に触れる。まだ入っていない。なのに声が乱れる。
「彼氏は、いま何をしていると思いますか」
「やめ、て……そんなこと聞かないで」
「聞きます。答えてください」
下着が下げられ、先を入れてくる。浅い。逃げるように前へ倒れると、窓枠に額が近づく。ガラスに自分の開いた口が映る。
「会えば、ご飯を食べて、テレビを見て、同じベッドで寝るだけです」
「触れていない」
「……はい」
「だから今夜、窓を開けた」
「そう、じゃない……あ」
途中まで否定して、奥まで埋まって言葉が切れた。バックからの刺激に耐えられなかった。知らない男に後ろから挿入されている。高瀬は腰を止めたまま、耳の近くで聞いた。
「いま、何が一番熱いですか」
「中……入ってるところ」
「見られている想像と、どちらが強い」
「両方、です……いや…動かないで、質問だけ」
「動くと、答えられませんか」
「答えられる。……あん…動かさないでって…」
高瀬は浅く引いて、また入れた。質問のリズムと、突きのリズムが同じになる。会話が途切れない。途切れない男の異常さが、内側を締めさせた。
「今朝、肩が当たったとき、興奮しましたか」
「しました」
「電車の中で、痴漢の想像をしましたか」
「……あっ…ん…しました」
「今夜は、想像ではなく、実際に見られています。周りのビルまで保証できない、とさっき言いました」
「分かって、ます……そこ、擦らないで」
擦りながら聞く。聞くために動いているみたいだった。私は窓枠を握り、答えを探し、答えている途中で声を漏らした。言葉と喘ぎが同じ口から出る。
「誰かに見えたら、どうしますか」
「分からない」
「やめたいですか」
「……たくない…んっ」
「では、もっと見せますか」
「見、せて…たい……あ、待って!」
高瀬は深く入れたまま、手を前へ回し、クリに触れた。質問は止まらない。
「いま、指と中、どちらが先にいきそうですか」
「中……いや、両方。どっちも…」
「彼氏の前では、この顔を見せますか」
「見せない」
「なぜ、俺の前では見せる?」
「知らない人、だから……名前以外、何も知らない人だから」
「名前は知っています。高瀬です。いま、高瀬にどこまで…入れられていますか…」
「全部……全部…んっ…んっ…んっ」
「言いながら締めていますよ。質問、嫌ですか?」
「嫌、じゃない……質問…っあん…やっ…めないで」
自分で言ってしまった。やめないで、と。高瀬の動きがわずかに速くなる。それでも口調は変わらない。事務的な丁寧さのまま、下半身だけが乱暴になる。その落差が、頭をおかしくした。
「いきたくなったら、何と言いますか」
「いき、そう……」
「それだけですか」
「おかしく、なりそう……窓、見ないで、見られるの…あっ…」
「見ます。君が答えている途中の顔を見ます」
「いやぁ……あっ…んっ…やめない…気持ちいい…」
突きが速くなる。質問が短くなる。間がなくなる。
「いま、誰に見られたいですか」
「あなたに」
「窓の向こうにも?」
「……分からない。分からない。分からない…イク…かも…んっ…あぁっ…」
「いいよ、イキな」
クリを弾かれ、奥を何度も擦られた。答えようとした言葉が、叫びになった。膝が笑い、窓枠から手が滑る。高瀬は落ちないように腰を抱え、埋めたまま動かした。質問の最後が、耳の中で残った。
「いま、何を受け入れてる?」
「見られて、入れられて、イキたかったこと……全部…ダメっ……」
その答えの途中で、身体が反った。声を抑えきれない。ガラスに乱れた自分が映る。高瀬もそれを見ながら、深く突いたまま果てた。熱が内側に広がる。なのに彼は、まだ完全には黙らなかった。
「後悔していますか」
息もできないのに、聞かれた。
「……いまは、していない」
「明日は」
「明日は、分からない」
「では、今夜は、正直なままでいてください」
私は額を窓枠に預けたまま、小さく頷いた。カーテンは開いたままだった。向かいのオフィスは暗い。輪郭だけが、明るい部屋の中に残っている。
その夜、欲しいがったのは、私だった。