SLENDER IV.com / 書き下ろし官能小説
薄い鏡
秘密を知る男と、恋人には見せない夜
鏡越しに自分を見ることを避けてきた彼女が、そこに初めて見つけたものは……。
この物語は作品から着想を得た独立したフィクションです。出演者本人の心情や実際の出来事、レビュー対象の固有場面を示すものではありません。
この小説は、作者自身のアイデアと構想をもとに、AIの支援を受けながら文章化・推敲しています。
WRITTEN FOR SLENDER IV.com
夜のカフェで、真緒はスマートフォンを伏せた。
画面には恋人からのメッセージが残っていた。週末の予定を尋ねる、ごく普通の短い文だった。彼女は返事を急がず、向かいにいる遼のアイスコーヒーを見た。氷はほとんど溶けている。
「また褒められたの?」
遼が聞くと、真緒は薄く笑った。
「褒められたというより、期待されたの。あの子なら愛想よく引き受けてくれるって」
彼女は店の外では、いつも愛想がいい。写真を頼まれれば笑い、場を丸くする言葉を選び、誰かが困っていれば真っ先に手を差し出す。自分が可愛いと知っているからこそ、その価値を雑に使わないようにしているのだと、遼は以前から思っていた。
けれど彼の前では、真緒はその努力を隠さなかった。
「断ればいい」
「それで嫌な女って言われるのも面倒」
「じゃあ、今日も完璧な真緒さんでいればいい」
彼女は目を細めた。
「あなた、そういう言い方をするから嫌い」
「本当のことだろう」
「本当のことを平気で言う人がいちばん嫌い」
口ではそう言いながら、真緒の表情は少し軽くなっていた。遼は彼女を慰めない。彼女の可愛さも、努力も、傷つきやすさも、必要以上に持ち上げない。その不親切さが、真緒には都合がよかった。
二人は、互いの見せたくない部分を知っている。
真緒が笑顔の裏で他人を値踏みすることも。遼が人に頼られるほど、自分から何も決められなくなることも。言葉にしなくても、相手が取り繕った瞬間だけは見抜けてしまう。
だから、ここでは綺麗でいなくてよかった。
「彼、来月の旅行の話をしてる」
真緒は伏せたスマートフォンに指先を置いた。
「行けば」
「行くわよ。彼は悪くないもの」
「なら、何が不満なんだ」
少しの沈黙のあと、彼女は笑った。いつもの、誰かを安心させるための笑顔ではない。
「悪くない人の前だと、悪いことを言えないの」
遼は答えなかった。
会計を済ませると、二人は同じ方向へ歩き出した。どちらからともなく足並みが揃う。特別な誘いはなかった。いつもそうであるように、今日の行き先も、言葉にする前から決まっていた。
部屋に入っても、真緒はすぐには近づかなかった。窓のそばに立ち、街の明かりを眺める。ガラスには、外向きの綺麗な顔をした自分が映っている。
「ねえ」
「ん」
「今日の私、感じ悪かった?」
「かなり」
「そう」
彼女は振り返り、初めて肩の力を抜いた。
遼が差し出した手を、真緒は自分から取った。指先が触れるだけで、取り繕うための表情がほどけていく。恋人には見せない苛立ちも、仕事の場では隠す優越感も、この部屋では説明しなくていい。
「あなたの前だと、嫌な女になれる」
「俺の前だけじゃないだろう」
「そういうことにしておいて」
真緒は笑い、遼の肩に額を預けた。抱き寄せられると、ほんの少しだけ息が詰まる。けれど離れようとはしなかった。
二人は恋人ではない。明日になれば、真緒はいつものように整った顔で恋人に会うだろう。遼もまた、何事もなかったように日常へ戻る。
それでも、今だけは互いの秘密を引き受けている。
「……ねえ」
真緒が掠れた声でそう言うと、遼は彼女の顎を持ち上げ、深く口づけた。舌が絡み合い、息が熱くなる。真緒は遼のシャツのボタンを乱暴に外し、胸板に爪を立てた。
「もっと触って」
遼は彼女の服を剥ぎ取り、ベッドへ押し倒すと、首筋から胸へ、舌で這うように吻を落とした。乳首を咥えて強く吸うと、真緒は背を反らして甘い声を漏らす。
「おかしくなりそう」
彼は彼女の脚を開き、すでに濡れた秘部に指を這わせ、ゆっくりと中へ入れた。くちゅ、と音が立つ。真緒は腰をくねらせ、自ら指を奥へ求める。遼の顔を乱暴に両手で掴み、舌を入れる。
「んっ、遼……もう入れて」
「今日早くないか?」
言いながらも遼は自分の硬くなったものを解放し、先端を入り口に押し当てた。一気に奥まで突き入れると、真緒は声を上げて彼の背中に腕を回す。
「……もっと動いて」
彼は腰を引き、再び深く打ち込む。肉体がぶつかる音が部屋に響く。真緒は脚を絡め、彼を締めつけながら喘いだ。
「もっと……」
「そっちも締めてこい」
遼は彼女の腰を掴み、角度を変えて何度も激しく突き上げた。真緒の内側は熱く絡みつき、互いの汗が肌を滑る。彼女は彼の耳元で荒い息を吐き、名前を呼ぶ。
「遼……あっ、そこ……だめ、はあ、気持ちいい……」
「感じろ。全部出せ」
彼は速度を上げ、床を軋ませるほどに腰を打ちつけた。真緒はシーツを掴み、声を抑えずに喘ぎ続ける。快感が押し寄せ、喘ぎは叫びに近くなる。彼氏の前ではこんな姿は見せたくない。というより怖くて見せられない。
やがて彼女の脚が震えはじめる。
「いく……私、いく……一緒に」
最後の一突きで、二人は同時に絶頂へ達した。真緒の身体が大きく痙攣し、遼も奥で熱を解き放つ。繋がったまま、荒い息だけが重なる。
窓に映る二人の輪郭は、夜の明かりに溶けて曖昧だった。真緒は目を閉じ、誰にも見せない安堵と満足の表情のまま、遼の手を強く握った。